第7話
「俺たちの部活に入る?」
俺は彼女の唐突な言葉に思わず彼女を2度みして大きな声を出した。
「はい、そんなびっくりしなくても」
「俺たちの部活知ってんの?」
「ポルノ映画研究会でしたっけ」
彼女は神妙な顔つきからおどけた。
「笑える」
俺は乾いた笑顔で言った。
「全く笑ってないじゃないですか、映画語り部ですよね」
彼女は俺の生気のない笑いに笑ってから本当の部活名を言った。
「いや、ポルノ映画研究会だよ」
「やっぱそうですよね」
こいつノリの良い奴だな。
「君、名前は?」
「自己紹介がまだでしたね。しっけい、私の名前は1年C組の
内巻きのカールに前髪ぱっつんの栗色のショートボブ、口の両端をキュッと引き上げた口、潤いのあるまん丸な瞳、小さい鼻が可愛らしさを醸し出している。
「身体の相性が?」
俺は結構際どいボケをかます。
「セクハラですよ先輩。それに童貞なのみえみえですよ、そのセリフ」
「すみません」
俺は下ネタで滑ったことで顔が赤面しながら謝罪した。
「先輩、顔が赤くなってる、おもろ」
荒川は人差し指で俺を指して口を大きく開けて笑った。
「俺、帰るわ」
俺はむすっとして階段を降りようとした。
「すみません、冗談ですよ。怒らないでくださいよ」
荒川は慌てて俺の制服の袖を掴んで引き止めた。
「俺が童貞呼ばわりされて本当に怒ると思ったか?」
俺は袖から彼女の手を優しく取り払いふざけた笑みを浮かべ言った。
「いや、先輩EDなのかと思って心配して」
「おい、いい加減にしろ」
俺は荒川の頭に空手チョップを喰らわせた。
「イタッ……それで、先輩の名前はなんですか?」
荒川は自分の頭を摩って真面目な顔で言った。
「あ、俺は相沢健二」
「それで、自己紹介終わりかい」
荒川は俺の自己紹介があまりに簡素すぎてずっこける。
「あれ単純すぎた?」
「単純すぎでしょ」
「好きなタイプは一途な優しい可愛い女の子」
「いるわけないでしょ、そんな子。アニメの見過ぎだよ」
「確かに。で、俺たちの部活にマジで入る気なの?」
「入ってもいいなら入ります」
階段から助けただけで廃部に直面している俺たちの部活に入ってくれるなんてそんなうまい話があるか。
「でも、なんで俺たちの部活に入ってくれるんだ?」
荒川は温和な顔つきから暗い顔つきになって喋り始めた。
「私、こないだまで陸上部入ってたんですよ。これでも私陸上の新星現れたかっていわれるぐらい中学の全国100m走で1位だったんですよ。でも、高1の夏前に怪我したです。それで、夏のインターハイ出れなくなちゃって。夏が終わる頃にはリハビリのおかげで走れるようになったんですけど前みたいな速い記録を出せなくなりました。その時、気づいたんです。私は、足が速いから陸上やってたにすぎないってことに……」
「陸上に執着心はないのか?」
「これがびっくりするほどないんですよ。今まで、私は何してたんだろうって自問自答していた時、校門で毎日ビラ配りしてる先輩に感銘を受けたんです。自分の好きなことなら身を投じることだってできるひたむきさに。そんな、先輩と部活をしてみたいです」
俺は褒められる耐性がないためどんな対応すればいいか分からずにいた。
「先輩、照れてる」
荒川は俺をみてクスッと笑った。
「照れてねーよ」
「それ、照れてる人が言う言葉じゃん」
「でも、入ってくれたら廃部にならないから嬉しいよって言おとしたけど荒川が入ったら部室も明るくなるだろうな」
「素直に嬉しいって言えばいいのに。でも、私が入ると部室も明るくなるって言われたのはとても嬉しいです。やっぱり、私は映画に詳しくないけど映画語り部に入ります。新しいことに挑戦したいので」
荒川は口を尖らせて俺に素直さを促してから褒められてニヤけた。
「お前も褒められる耐性ねぇじゃないか」
「バレましたか」
「とにかく、これからよろしく」
「私もよろしくお願いします、相沢先輩」
俺と荒川はニコッと笑って握手を交わした。
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