第3話

「群馬県から来た鮎川夏葉あゆかわなつはです。今日からこのクラスに馴染めるよう頑張るのでよろしくお願いします」


 周囲の男子生徒は鼻を伸ばす奴らが多かった(その中の1人が俺)。女子も大半は可愛いと綺麗とかそういう類の声が上がっていた。


授業終了後、転校生の席を周りの生徒達が囲んでいた。


「あーあ、可哀想にこれが転校生の宿命か」


オレは転校生に群がる男子と女子たちをみて転校生を哀れみな表情でみる。


 中には、遠くからでもわかるぐらいに転校生を見てよく思ってない女子生徒もちらほらいた。


「にしても、あの転校生は今まで会ってきた中でとびきり美人だよな」


洋太郎が喜色な表情を浮かべ言った。


「まぁ、顔とスタイルはたしかに抜群だな」


「健二、なに浮かない 表情してんだよ。顔とスタイルが抜群ならもうそれで十分だろ。それ以上、何を求めてんだよ、性格とか言うなよ《ルビを入力…》」


洋太郎は食い気味にオレに熱く語る。


「いや、性格も大事だろ」


「しゃらくせぇ」


洋太郎は呆れた顔をしてトイレに行ってくると言って教室を出て行った。


「洋太郎、どうかしたのか?」


隆一がオレの席に向かって椅子に座ったまま引きずって移動してきた。


「うんこ漏らしたらしいよ」


オレは真顔で隆一に言った。


「糞野郎じゃん」


「そう、クソだけに」


「またあんたら、くだらない会話して」


「彩音、転校生と喋った?」


隆一がオレの席に近づいてきた橋本彩音に言った。


「喋ったわよ。あん達は?」


腕を組んでオレを見下ろしているこの女は、オレと隆一と洋太郎の幼馴染・橋本彩音はしもとあやね



橋本彩音はしもとあやね―健康的な小麦色の肌につぶらな瞳で薄い珊瑚色の唇、髪型はボブミディアムに内巻きワンカールの明るいトーンのアッシュベージュ。中身は陽気な性格で、母親みたいに口うるさいお節介な女子。あと、ゴシップ好き。


容姿はオレら3人以外の男子や女子からみたらまぁ美人の部類に入るらしい。小学生から一緒のオレ達からしたら彩音は兄妹みたな感覚である。あかねも幼馴染だったけどあの時は何故か分からないけど"恋愛感情"が生まれてしまった。


「あんなに人が群がってたら話したくても話せねぇよ」


オレは転校生の席を指差して言った。


「群がってなくても、どうせ話す勇気がないでしょ」


「ザッツライト!」


オレは拍手した後、彩音を指差して言った。


「なんか腹立つ」


彼女は眉をしかめて言った。


「どんな奴だった?」


「顔が小さいのに顔のパーツが大きくて綺麗に整っているのよ。その後、自分の顔を見て悲しくなったわ。


彩音はしょんぼりとした表情で悲しそうに語る。


「敗北してんじゃん」


「敗北と言えば、あかねと神木くんが付き合ってるんだって」


彩音はオレの顔をじっと見て傷口を再び抉ぐるよな言葉を言った。


「彩音、お前って昔から嫌な女ってとこは変わらないままだな」


「これは、これは、お褒めのお言葉有難うございます」


彩音は嫌味な言い方といかにも作った笑顔で言った。


       * * *


午前の授業が終わり、洋太郎と隆一と机をくっ付け凸の形で昼飯を食べていた。


転校生が席に座ったままチラチラ辺りを見渡していた。


「健二、オレと賭けをしないか?」


唐突に洋太郎は俺に顔を近づけてきた。


「なんだよ、突然。…賭けの内容によるけど、ちなみにどういう賭け?」


「今、あの転校生に話しかけて部活の勧誘してきたら"焼きそばパンとミルクティー"を無料で奢ってやるよ」


「断る」


オレは賭けの内容を聞いた瞬間、即座に賭けを断った。


「たしかに、焼きそばパンとミルクティーは大きいがオレはそんなリスクを冒したくない」


オレは洋太郎の肩に手を置き言った。


「わかった、2週間焼きそばパンとミルクティーを奢ってやる」


「……絶対だな約束だぞ、後で無しってのは無しだからな」


オレは唇を噛み、険しい表情をする。


「もちろん!」


「…よし、賭けに乗ってやろうじゃないの」


洋太郎はオレが振られてから1年いまだにあかねを引きずってることに対していい加減忘れてなんか新しい事でもしてみろよときっと言いたいんだろ。オレは、部活の存続と焼きそばパンとミルクティーのために一か八かで転校生に話しかける覚悟を決めて椅子から立ち上がった。

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