第2話
フラれてから1年が経ち現在オレは高校2年生。あれから、あかねとは廊下ですれ違ったら会釈するだけの関係になった。
校舎の隣が体育館、校舎の前が図書館、校舎と図書館の間に中庭―昼休みは生徒達が飲み物や食べ物を買ってベンチに座って飲食し、放課後は雑談する場所。
オレこと
これでも、映画語り部というクラブに属している。しかし、この部活は廃部の危機に迫っている。3学年合わせて5人(全員男)しか部員がいない。今年に入って今のところ1年は1人(男)だけ入ってくれた。未だに、毎日勧誘をしているが興味を持ってくれる人はいない。しかも、あと2週間以内に部員が7人にならないと廃部。その上、女子部員の1名加入が条件。
* * *
オレは学校の校門を抜け校舎につき、昇降口でローファーを脱いで下駄箱から上履きを取り履き替えて2年生の教室がある2階に上がる。2年B組―オレの気鬱な学生生活を送っている場所に着いた。
オレは教室のドアを開けようとした時、教室の中から先に開けた体格のよいオレの数少ない友達の1人・
「あ、健二、お前集合場所に来なかったから先行っちまったぞ。なんかあったのか?」
「……洋太郎、ちょっとな」
オレは浮かない顔で洋太郎に返事する。
「……もしかして、また失恋したのか?」
洋太郎は目を丸くして女子が驚いた時にするあらまぁという両手を両頬に置いて口をすぼめるポーズをする。
「ハハハハハ、デッ〇プールの真似か、笑えるよ」
オレは虚ろな目で空笑いし、教室に入り1番後ろの左側の窓側の席に座り椅子にもたれ窓の外をみた。
「洋太郎、健二が元気ねぇじゃんなんかあったの?」
オレの数少ない友達のもう1人・
「知らんが、奴はダークサイドに堕ちかけてる」
洋太郎は腕を組みオレの横顔みながら隆一に言った。
「たしかに、フォースが薄汚れてみえた」
隆一がオレの横顔をみて頷き言った。
「何言ってんだ、大丈夫か、お前」
洋太郎は隆一を馬鹿にした表情でみて言った。
「そりゃぁないぜ、洋太郎」
隆一は悲しい目で洋太郎をみる。
「また、あいつらバカやってる」
俺は窓の外から視線を外し死んだ目で2人のやりとりを見た。
前のドアを勢いよく開けて担任兼国語の教師の山中新太郎先生が入ってくる。談笑している生徒達が自分の席に素早く座る。
「では、3限目の国語を始めます。」
「起立、礼、着席!」
今日の日直の奴が掛け声をかけた。
「「よろしくお願いします!」」
教室の全生徒が立ち上がり頭を下げ言った。
オレはゆっくりと自分の席に座り肘をつき左の手のひらに顎をのせ窓の外に視線を戻し空を見上げる。
何故、俺が今日どんよりしてるかは久しぶりに登校中にあかねと偶然会ってしまって、ある事実を知ったからである。それは、あかねと神木が手を繋いで登校していたからだ。まさか、2人が付き合ってるとは……
いつもの見慣れた授業の風景をみると余計に気分が苦しくなった。
クラスの女子が手を挙げ山中がその女子を人差し指で指した。
「はい、黒川さん、なんか質問?」
「今朝、転校生くるって言ってたじゃないですか。いつくるんですか?」
「えーとね……3時間目までには来る予定だったんだけどね。4時間には間に合うと思うよ」
「不良じゃん。」
「やばくない、初日から4時間目にくるとか。」
いろんな生徒がまだ来もしない転校生を悪く言い始めた。
「来てから直接言えよ」
オレはそっと聞こえない声量でぼそっと呟いた。
転校生っていつも気の毒に思う。既に在学してる生徒は転校生をよそ者扱いし、転校生の容姿が良かったりすると嫉妬や妬みが生まれイジメに発展してよそ者を自分達の縄張りから追い出そうとする。
この事例は男であろうが女であろが同じである。尚更、容姿が悪いとからかわれいじめに発展したりする確率が高い。容姿が悪いのを活かして明るく自虐ネタするやつは受け入れてもらえるかもしれない。
じゃあ容姿が普通で性格も普通な奴はどうなるか?それは、既にあるコミュニティに馴染もうと努力し謙虚に過ごせば周りも気持ち良く迎えてくれるだろう、きっと。
オレは今までに転校生を小学校から高校1年までに3人みてきたがみんなクラスに馴染めずからかわれていじめられて不登校になった。まぁ、転校生が一概にいまいったようにはならないと思うけど、確率は高いんじゃないか。
「ちゃんと復習しとけよ、来週は漢字テストやるからなぁ」
周囲の生徒達が気怠い顔して不満をもらす。
「おい、健二聞いてんのかよ」
オレの右隣りの席の洋太郎がボールペンでオレの右肩を突く。
「……なんだよ、洋太郎」
「 お前、干からびたカラスみたいな目してるぞ。大丈夫か。やっぱ、お前新しい恋愛した方がいいって」
「干からびたカラスみたいな目って独特な表現だな」
「ありがとう」
「いや、別に褒めてねぇよ。にしても、新しい恋愛かぁ……そりゃ、夢中になれる相手がいればなぁ」
オレの視線は黒板に向いて、ノートを取り意識は洋太郎に集中している。
「とりあえず、このクラスにこの人良いなって思う奴もいなのか?」
「……うーん、いねーな。あ、
オレは何か良いアイデアが思いついたような表情を浮かべる。
「容姿もそこそこ良い知的な佐野宮さんねぇ……オタクは憧れるよな知的な文学少女にねぇ。でも、やめとけ……」
洋太郎はオレの意見に頷きながら急にピタッと頭が止まり顔の向きがオレの方向に向く。
「え?……」
オレはてっきりいいじゃねぇかと言われると思っていたが洋太郎が否定したことにオレは反射的にシャーペンを持っていた手が止まり顔の方向が洋太郎の方を向いた。
「だから、お前と佐野宮さんは合わないからやめとけ。表面的にはお前らは合うと思うよ。でもなぁ、精神的繋がりではお前ら全く通じ合わないんだよ」
洋太郎はオレの左胸を人差し指で指して言った。
「何を根拠に言ってんだよ……」
「お前と仲良くなって今年で5年の付き合いだぜ。わかりたくなくてもわかっちゃうんだよ」
洋太郎は腹立つ顔で言った。
教室の前のドアから見知らぬウチの制服を着た女子が入ってきた。
髪型は自然なストレートロングで前髪を右に流して、つるりとしたみずみずしい朱色の唇、透明感のある肌とくっきり2重の綺麗な女子というより端麗な大人の女性という言葉が適している。
「……おい、健二……」
洋太郎がオレの肩を前後に揺らす、
「あぁ、その後の言葉は言わなくても分かってる。ありゃあ……1発K.Oだよ」
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