六日
ノノちゃんを探す旅 〈ルルの道標〉
ノノちゃんを探す旅が始まった。
月の街は広い。僕が探し出すのは不可能に近いかもしれない。それでも、僕たちが本当に結ばれる運命ならば、きっと出会うことが出来るはずだと僕は信じた。
そんな決意を小さな胸に抱え、通りすがりの人や、職員のウサギに尋ねながら、ノノちゃんの痕跡を辿って行く。
「ああ、三つ編みお下げの女の子?たしか地球を見に行くと言ってたよ」
まだ若いお兄さんはそう言って静かの海展望台がある方向を指し示した。
しかし行ってみると、ノノちゃんはおろか、あのパンチパーマのおばさんさえいない。展望台には、覗かれる人のいない巨大な望遠鏡が寂しそうに佇むのみだった。
あの人、消えてしまったんだ。また一つ、僕の心が重たくなる。
しかし何事にも優先事項がある。僕はおばさんへの哀悼を振り切って、ノノちゃんを探す。
暗いのに、青白く発行する月の上をひたすら歩いていると、湧き水が溢れるように記憶の映像が流れ出した。そうして、月の街にいた仮初の僕が、どんどんと本当の僕に染まっていくのを感じた。
冷たい感情に呑まれないのは、たぶん、地球にいたときに見た、ノノちゃんの瞳のお陰だろう。
赤い赤い、血のように赤い夕焼けのなかで、光を失った、されどどこか優しい、あのノノちゃんの瞳。
あの映像が、切り取った写真のように、僕の脳裏に張り付いて剥がれない。戒めのようだ。そうして僕が道を違えないための、道標でもあった。
ノノちゃんを探す旅の中で、マルクス・マルクが行方不明になっていることを知った。
月の職員が規律を破ったことはとても大事になっていて、マルクス・マルクは身柄を抑えられた挙句、裁判にかけられるのだという。
月の街の至る所に、この顔を見かけたら通報を、という文字と共に、マルクス・マルクの顔写真が貼られた看板がある。
幸か不幸か、おかげで、僕たちも一躍有名人になっているようだった。
月の街にいる住人はみんな、僕がノノちゃんを探すことに協力的な姿勢を見せてくれた。
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