謎のゲートとスライム Episode.4

「…ホントに着いちゃった」


体感10分程歩き、アリーは本当に華衣を例のゲートの前まで連れて来てしまった。


「アリー、よく分かったねぇ」


「キュッキュッ!」


ぽかんとする華衣の周りを、アリーは嬉しそうにくるくると飛び跳ねる。


「まあいいや。アリーありがとう!」


華衣はしゃがんでアリーを撫でた。


(…あっ。てか、アリーをこっちの世界に連れて行ったらどうなるんだろう。アリーのことが他の奴にバレたら面倒だな)


「ねぇアリー。アリーはここに残ってくれない?」


「キュ?」


どうやら一緒に着いてくる気だった様子のアリーは、何故だ?と言わんばかりに首を傾げるような動作をした。

それを見て一気に胸が痛くなったが、必死に耐えながら華衣はアリーに言う。


「私達の世界にはさ、アリーみたいなスライムって生き物はいないんだよね。もしアリーがあっちの世界に行って、アリーの存在がバレたら、私とアリーはもう一緒にいられなくなっちゃうかもしれない。アリーもそれは嫌でしょ」


「キュ…」


アリーは落ち込む様な動作を見せた。


「だから、一緒にいる為にも、アリーにはここに残ってほしいな。…大丈夫だよ!またこっち来るからさ、ね?」


「キュ…」


アリーは落ち込みながらも、しぶしぶ了承する素振りを見せた。


「あ゛ーごめんねぇ、絶対また来るからねぇ」


アリーの様子に耐えられなくなった華衣は、アリーを抱き上げ、頬を擦り付けた。


「キュッキュッ!」


アリーも驚いてはいたが、嬉しそうにしていた。


「じゃーね」


「キュッ!」


華衣はアリーを下ろすと、ゲートの中に入っていった。


(そういや、こっちにいる間、あっちの時間ってどうなってるんだろ。時間の流れが違う的なのとかあるのかな)


華衣が自室に戻ると、外はまだ明るかった。


「…私いつゲートに入ったんだっけ」


ゲートに入る時、勢いで決めた為、時間など微塵も考えていなかった華衣は、結局、時間の流れについては全く分からなかった。

時計を見ると、もうそろそろ5時を回る頃だった。夕食の時間までまだあったのと、ゲート探索で体力の限界を既に超えていた華衣は、今までずっと持っていた棍棒をゲートの前に置き、靴を脱ぎ捨て、ポケットに入れたドロップ品を机に置き、セーターを脱ぎ捨てると、そのままベッドに倒れ込む様にして眠った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る