二章 人殺しの花が咲く 6/6
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鬱蒼とした森の続く山道を走り抜けると、隠された施設が見えてくる。
山の壁に埋め込まれるようにして建てられたその場所の名は、フォートレイ。
陸軍最高研究施設であり、国内最大規模の研究都市を擁する、叡智の城塞である。
テオがフォートレイを訪れるのはこれが三度目だ。一度目はイレブンとともに捜査のため。二度目は全損したイレブンにメンテナンスを受けさせるため。どちらも今年の春のことだった。
手続きを終えて助手席に戻ってきたイレブンにテオは言った。
「こんなに頻繁に帰省するとは思わなかったな」
「そうですね。以前は年に一度も戻りませんでした」
軍人の敬礼に見送られて、テオたちは金属扉を抜けた。指示に従って進んでいると、以前経験した検査の酷さが全身に蘇り、早くも吐き気がする。
「……もしかして、またあれをやるのか」
「緊急ですので検査は免除されました。このままエントランスに向かいます」
「そりゃいいや。……いや、それだけ大変なことが起きてるってことなんだが」
テオは規定の場所で車を停め、軽く息を吐いた。ひとまず、洗濯機に放り込まれた衣類の気分を味わわずに済むのであれば何よりだ。
イレブンの言う通り検査は飛ばされているのか、停車した目の前にエレベーターがあった。この不思議な空間に慣れる日は一生来ないだろう。
テオはハーディーを背負い、イレブンの先導に従ってエレベーターに乗り込んだ。階数表示のないエレベーターは、エントランスに着くまで止まらない。
やっとエントランスに着いた頃には、気圧の変化で頭がどうかしそうだった。このエレベーターにも慣れる日は来なさそうだ。
顔をしかめたテオと無表情のイレブンがカウンターに歩み寄ると、受付職員は愛想のいい笑顔で入館証を差し出した。
「おかえりなさいませ。認証とゲスト登録は済んでおります。こちらのゲスト用入館証をお持ちになってお進みください」
テオは「ありがとう」と入館証を受け取り、先へ進んだ。筒状の部屋も素通りし、次の扉をくぐる。途端、物凄い解放感にテオは思わず溜息をついた。
どこまでも上下に続く円形の吹き抜け。その中を、青いクラゲのゴンドラが人を運んで泳いでいく。水族館の円柱水槽を思わせる空間は、なんとも幻想的だった。
ゴンドラの利用者は誰もが忙しそうで、人を背負ったテオの姿なんて誰も気に留めない。イレブンに先導されるままテオもゴンドラに乗り込むと、クラゲの傘がふわりと開いてゴンドラが上昇した。
クラゲの透き通った傘越しに上を見るが、天井は見えない。建物の見た目よりもずっと広大な空間が広がっているのだ。
ゴンドラから降りて無機質な白い通路を進むと、「白兵型アマルガム研究室」と彫刻されたドアプレートが目に入った。やっと目的地に着いたのだ。
認証を済ませて扉を抜けると、以前訪れた時と同じように温室に迎えられた。研究員たちが駆けつける。
「捜査官! アマルガムの回収、ありがとうございました」
「いえ。これから分析するそうですが、同席しても構いませんか」
「もちろんです! さ、こちらへ。準備はできていますから」
研究員に促され、テオはストレッチャーにハーディーを寝かせた。そのまま分析室へと案内される。
緑に溢れた温室の隣は、実験設備とモニター、機材に囲まれた部屋になっていた。研究室のメインルームのようで、多くの研究員が忙しくしている。
車輪が床を擦る音がして振り向くと、部屋の奥からトキノス博士がやってきたところだった。彼は車椅子を押す助手に礼を言ってからテオたちを見上げる。
「ご苦労だったね。こんなに上手く人間に擬態したアマルガムは珍しいものだから、無事に確保できて何よりだよ」
「アマルガムの自覚さえなかった様子でした。前例はありますか?」
「ハウンドも、そのレベルで思い込むことはないね……常に兵器の自覚があるものだ。何かが根本的に変えられている可能性がある」
トキノス博士の表情は厳しい。彼は「来たまえ」とテオたちに視線で示して車椅子の向きを変えた。イレブンが何も言わず彼の車椅子を押し、テオはその後ろをついていく。
博士が案内したのは、大きなガラス窓の前だった。シンプルな寝台にハーディーが横たわっている。金属製のワゴンには彼の持っていた鞄と水鉄砲、植物の種に加えて、儀式で使用された物も並んでいた。
寝台を囲む四つの照明が伸びてきて、四方向から光が放たれる。肉体に触れたところから赤い網目状の光に変わり、読み取った情報をモニターに映しているようだ。肉体とコアの状態が一気に表示される。
モニターを見つめる研究員たちの表情は優れない。
「……博士、何か問題が?」
テオが堪えきれずに尋ねると、博士は頷いて答えた。
「うん……このアマルガムは、肉体は完全に人間の物だ。通常、アマルガムの擬態というのは表面だけの変化でね。化粧を落とす、服を脱ぐといった動作と同様に、すぐに素の状態に戻れるんだ。しかしこのアマルガムが行ったのは、完全にこの男性の代役となること。骨格などはもちろん、落ちた肝臓機能まで再現しているようだね」
「それはかなり……ハイレベルな擬態ということですか?」
「うん。通常のアマルガムの性能を遥かに上回る」
博士が何か指示すると、窓ガラス越しに機材が動き始めた。光で照らしたままハーディーの胸部を切り開き、コアが取り出される。
赤く透き通った鉱石が照明で輝く。だが部分的に、赤黒い傷が入っているように見えた。
「……損傷している?」
「いや、不純物が入っているね。成分分析と術式の確認を急いで」
博士の言葉に研究員たちが返事をするとともに、分析室全体が慌ただしい雰囲気に包まれる。アマルガムのコアがモニターに大きく映し出された。
「……不純物は『賢者の石』と判明。術式に追加が見られます」
「引き続き『賢者の石』の分析を。追加された術式については?」
「信号送受信の妨害、擬態能力の大幅強化、指揮権と記憶領域の改竄です」
術式の一部が表示され、研究員が早口で報告した。博士は「まずいね」と眉根を寄せて別の研究員に尋ねる。
「記憶領域の状態は?」
「擬態対象とアマルガム本体の記憶が接続し、混濁しています。分離作業を急ぎます」
「よろしく頼むよ。……しばらく時間がかかりそうだ。向こうで待とう」
博士に言われ、テオたちは温室に戻った。テーブルを挟んでテオと博士は向かい合う。
「ハーディーは……あのアマルガムはどういう状態なんですか?」
「コアに混ざった『賢者の石』によって強制的に性能を引き上げられた状態だ。だが、他のアマルガムと連携が取れず、ハウンドの統制信号も分からず、指揮官も現在の人間から変更できないといったところかな」
「……そんなことが可能なんですか? 普通の人間ならまずできないことですよね」
テオが言うと、博士は車椅子にもたれて頷いた。
「知識があることは大前提だが、『賢者の石』があれば概ね、この状態のアマルガムを作れるだろう。接近さえできれば、いくらでも」
「緊急事態じゃないですか」
博士の表情は変わらなかったが、テオは奥歯を噛み締めた。急いで陸軍に報告した方がいいのではないかと思わされる状況だが、博士は落ち着いていた。
「現時点では、陸軍に『警戒してくれ』と呼び掛けることしかできない。アマルガムの戦闘能力が向上するわけではなく、擬態の精度が高まるだけであれば、探知機に引っかかるしハウンドが速やかにコアを回収できる。主人を特定すれば対処可能な範囲だ」
「……信用しているんですね、ハウンドを」
「もちろん。私たちの最高傑作たちだ。特に、イレブンは優秀だからね」
博士はそう言って頷いた。テオはずっと気になっていたことを尋ねる。
「イレブン、というぐらいですし、あと十人のハウンドがいるんですよね。その中でも、イレブンが優れているというのはどういう……いや、確かに彼女は頼もしいんですが」
「そうだね……他のハウンドは、戦闘や尋問など、ある一点に優れているために、致命的な欠点を持つ。だがイレブンは、とにかく汎用性を重視した個体なんだ」
博士はゆっくりと語り始めた。
「擬態能力を例にしようか。今分析中のアマルガムは凄まじい精度で一人の人間を再現したが、イレブンも命令すればそれぐらいできるんだよ」
「えっ、そうなんですか?」
「君が望めば、どんなものにでも精密に擬態できる。イレブンが構造を理解している物に限られるけれどね」
思わずイレブンに目をやると、彼女は瞼を上下させて応じた。そこに責めるような色はなく、ただ穏やかな眼差しを向けられる。博士は小さく笑って続けた。
「容姿、物言い、振る舞い、その全てをシームレスに変化させ、主人が望むように、任務を完璧に遂行できるように行動する。イレブンはそういう風に造られた。あらゆる人間の友になれるように、誰よりも主人に忠実な猟犬として」
「……そう、だったんですか。それはなんというか、とんだ宝の持ち腐れを……」
「ああいや、君を責める意図はない。確かに君のように、イレブンをここまでフラットな状態で使役する主人はいなかったけれどね」
テオが少し申し訳なく思っていると、博士は穏やかに目を細めた。
「君に合った形に変わらずとも捜査官として働けていると知れて、私は嬉しい。イレブンほど柔軟に対応できるハウンドはいないからね」
「……そうですね。犯人を追い詰める時も、被害者に話を聞く時も、彼女は頼りになります」
テオの言葉に、博士は少年のような笑顔で頷いた。
「誇らしいよ。戦場でもそうでない場でも活躍できる個体は、まだイレブンだけだからね」
「過ぎた評価です、博士」
「そんなことはない。戦争が終わった後、廃棄処分から逃れられるのはお前だけだろう」
思わずといった様子で口を挟んだイレブンに、博士が微笑む。兵器とその開発者としては、とても和やかな光景だった。
(……そうだよな。兵器なんだから、平和になったら不要になる……)
それは戦争が終わった時に限らない。流出したアマルガムを犯罪捜査の面から追う必要がなくなったら、イレブンは捜査局から去るのだろう。彼女はどんな場所でも戦えるのだ、次の任務が待っている。テオはそれを見送ることしかできない。
そんな当たり前のことを今まで考えたことがなかった自分に気付き、テオは愕然とした。
何と言おうか、言葉に悩んでいたテオの思考を研究員の慌てた声が遮る。
テオたちが急いで分析室に戻ると、モニターにはアマルガムの目が捉えた光景が表示されていた。
砂と岩ばかりの荒野。難民キャンプが遠くに見える。
アマルガムの記憶の中に、その女は唐突に現れた。
『はーい、アマルガムちゃん! アタシのお願い、聞いてくれるかなー?』
明るい、女の声だった。黒い仮面で顔を隠し、砂煙にショートボブの黒髪が揺れている。首元は黒いフェザーショールで覆われ、鮮やかなクロムイエローのロングコートが風に翻った。彼女は笑い、手袋に包まれた両手でコートを押さえる。
その左手の甲では、赤黒い宝石が強い日差しに輝いていた。
賢者の石だ。
分析室が騒然とする中、テオはまばたきも惜しんでモニターを見つめた。
別の大陸から移ってきたという輸入業者。国際警察もマークしている大物。
クロエ・ギフェル。死の商人と呼ばれた女が、荒野に似合わないヒールブーツで立っていた。
■
トビアスは駐車場に車を停め、携帯端末に地図を表示させた。店の近くまで来たようだ。
「……一人で中将さんに会うのかと思うと、ちょっと緊張するな」
バックミラーで簡単に身なりを整え、トビアスは深呼吸してから車を降りた。
────ほんの一時間前。
元大佐から話を聞き出して捜査に戻ったトビアスだったが、早々に行き詰っていた。
大学生のビル・ハーディーが開発したヤドリギオリは、陸軍と捜査局で導入が検討されていた。現在は実験段階で、陸軍か捜査局のどちらかから流出したものと考えられる。
元大佐の協力でヤドリギオリの導入に関わっている人間のリストを作ることはできたが、これといった手掛かりはない。難民キャンプに持ち込まれた蝋燭が怪しいと見てそれを寄付した企業を調べたが、こちらも空振りだった。グラナテマとは繋がらない。
頭を抱えるトビアスのポケットで携帯端末が音を立てた。着信だ。相手も見ずに応じる。
「はい、トビアス……」
『諜報部のコルモロンだ。今いいかね』
てっきりテオかエマだと思い込んでいたトビアスは、相手が中将だと気付いて飛び上がった。何事かと集まる同僚たちの視線を振り切って会議室に閉じこもる。
「し、失礼しました。どうされましたか?」
『こちらの調査が終わったから報告をと思ったんだが、スターリング捜査官が電話に出なくて』
「彼はちょうど電波の届かない場所で捜査中でして。僕でよければ代わりに伺いますが」
『……そうか。いや、構わない。カナリー捜査官はどこに?』
「エマですか? 彼女は少し用事があって外しています」
トビアスは思わずエマのデスクに目をやった。病院で被害者の治療を見届けた彼女は、魔導士協会にクサリヒルガオについて報告するために一度家に戻ったはずだ。
中将は低い声で「そうか」と呟いて続けた。
『好都合だ。通話は少し避けたいんだが、今から言う店に一人で来てくれるかね』
「それは、構いませんけども、どうしたんですか一体」
『少々必要があって捜査官を洗い直していたんだが、いくつか気になる者がいてね。そちらの捜査にも関わると見て、情報を共有したい』
「……是非お話を伺いたいです。すぐに向かいます」
『よろしく頼む』
通話を終え、トビアスは急いでテオとエマに「中将より報告あり。会ってくる」と短く報告してオフィスを後にした。
────そして現在に至る。
ビルの一階に入っているその店は、こぢんまりとしたバーのようだった。メニュー看板が出ていなければバーだと気付くことすらなかっただろう。
辺りは街灯も少なく細い路地ばかりで、最初から店を知っている人間でなければ辿り着けそうにない。諜報部にとっては隠れ家的な店なのだろうか。
扉を押すと、華やかなドアベルが鳴る。店内は照明が絞られて薄暗かった。大きな木製のカウンターは年季が入った立派なもので、棚には何種類もの酒瓶が並ぶ。
仕事なしで飲みに来たかったものだな、とトビアスが感想を抱いたのも束の間、違和感を覚えて立ち止まった。
カウンターの内側にいたバーテンダーも、奥のテーブル席でこちらに背を向けて立っている人影も、緊迫した様子で動かないのだ。
何か起こっているのか。トビアスは息を潜め、拳銃に手をかけたまま一歩踏み込む。
だが次の瞬間、首に激痛が走った。勝手に背中が仰け反り、全身が痙攣する。
暗くなる視界。目の前に床が迫ってくる。
心臓が激しく胸を叩いていた。水中にいるみたいに周囲の音がくぐもっていて、震える腕では体を起こすこともできない。なんとか立ち上がろうともがいたが、すぐに上から押さえつけられた。逆光で相手は見えない。顔を床に押し付けられたまま、こめかみに鋭い痛みが走る。
ぐるりと眼球が裏返った気がした。それがトビアスに認識できた最後の感覚だった。
■
エマは自分が暮らすマンションに到着すると、急いでオートロックの自動ドアを抜けてエントランスに入った。エレベーターに乗り込み、やっと一息つく。
遺体の検視結果から、クサリヒルガオは宿主の魔力を空になるまで吸い尽くすと判明した。魔導士にとっては毒よりも脅威になる植物だ。考えることは多い。
(一般流通してるとは考えにくいけど、警戒は必要だし……報告は最優先として、病院とも連携しなきゃいけないわよね。普通のヒルガオとの見分け方と危険性を知ってもらって……捜査を中断してまですることじゃないけど、上から言われたんじゃ仕方ないし……)
気付けば「あーもう」と声を出していた。少し重たい頭を押さえ、エレベーターから降りる。本当は仮眠したいところだが、あいにく時間がない。
ふと、携帯端末が着信を知らせた。叔母からだ。エマは目を丸くして応答する。
「はい、エマよ。どうしたの?」
『夜にごめんなさいね。いま、大丈夫だった?』
「平気よ。それにしても、この時間まで起きてるなんて、叔母さんにしては珍しいわね」
話しながら鞄から鍵を取り出した。電話口で叔母が困った様子で言う。
『今預かってる子の夜泣きが酷くって、この時間はいつも起こされるのよ』
「大変じゃない。今は何を育ててるの?」
叔母が「それが」と答えようとした途端、彼女の背後で物凄い泣き声がした。まるで雷鳴だ。幼いながらも迫力のある声を聞いて、エマは目を丸くする。
「えっまさか、ドラゴンの子供?!」
『大正解! 一週間だけ預かってるのよ。よちよちよち、いい子ね~大丈夫よ~』
音の鳴る玩具であやしてやっているのか、しばらくすると泣き声が落ち着いたようだった。エマは息を吐くついでに笑ってしまう。
「叔母さんったら、本当にすごいわ。ドラゴンのベビーシッターってこと?」
『そうなの。種族は違っても赤ちゃんはやっぱり可愛いわ~。今度写真送るわね』
エマは微笑ましく思いながら自宅の扉を開け、何かが視界をちらついて立ち止まった。何も書かれていないメモ紙が落ちている。エマの持ち物ではない。
「……何かしらこれ」
『そうそう、それでね、エマ。ちょっと相談があってね』
「あ。ああ、うん、大丈夫よ」
メモ紙を拾い、エマは家に入ってすぐに玄関の鍵を閉めた。チェーンもかけ、警備システムをオフにする。携帯端末を耳に当てたままリビングへ向かった。
『最近、変な人たちがうちの周りをうろついてるみたいなのよ。夜泣きで起こされる度に窓から見えるもんだから、どうしても気になっちゃってね』
「それは怖いわね……。何か被害とかは?」
『まだ何も。でも不気味でね』
エマは顔をしかめ、棚から報告用書類を引っ張り出した。叔母の家は畑が広がる中にぽつんと建っている一軒家だ。周りをうろつく理由が見えない。
『なんかこう、魔除けみたいに不審者を遠ざける対策ってないかしら』
「悪意を遠ざける魔術はあるけど気休めだからね……ん?」
エマは何か物音を聞いた気がして携帯端末を耳から離した。廊下からだ。男の話し声もする。
『……もしもし? エマ?』
「ごめん、人が来たみたい。後でかけ直すわ」
エマは通話を終え、すぐさま通報した。警察に繋いでもらう。柔和なオペレーターの声を聞きながら、エマは呼吸を整え、魔法小銃を構えた。
「玄関の前で、知らない男が二人でうろついているんです。家に帰ってすぐやって来たので、付きまとわれていたんだと思うんですけど」
オペレーターの質問に答えながら、エマは雷撃の魔晶火器弾を装填し、廊下とリビングを仕切る扉の横にしゃがんだ。おそらく玄関扉にメモを挟んだ奴らだ。在宅だとバレている。疲れた状態で通話していたとはいえ、無防備に家に入るんじゃなかったと悔やんだ。
『すぐにパトカーを向かわせます。ご住所は』
「住所は──」
聞かれるまま住所を答えていると、キンと耳鳴りがした。他の家から聞こえていたはずの音が途切れる。
(『消音』の魔術────)
息を飲んだ瞬間、玄関扉が爆破された。
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