第90話:高速環状コーナーリング



 高速のパーキングエリアでひと息。


 一応、空調の聞いた休憩所があるので、ひんやりんこ。


「はふぅ……もぅ、ココから出たくねぇですわぁ……」

「同意ぃ……」


 へたる蘭先輩とカワサキさんの姪叔父コンビ。


 わたたしも。


「右に同じ……」

「えっと、左に同じ?」


 方菜かたなちゃんも。


「あはは。あんたらまだ小一時間走っただけやで」


 涼子さん、ギルティです。


「涼子は車でクーラー効いてるだろうが」


 カワサキさん、突っ込みナイス、です。



 早朝とはいえ、真夏の朝は、早い。


 すでに昇りきったお天道様は、ギラギラ。


「ほな、ボチボチ行こか」


 涼子さん先導で、また高速道路の本線へ移動。


「うぅ、合流がぁああ」


『環状線の手前やさかい、だいぶ車増えとンなぁ。蘭はンと分断されてもたぽいで』

『わたくしの後ろにも車が入ったみたいですわね……永依夢エイム、お気をつけあそばせ』

『あぁ、よぉく、後方注意して合流してね。無理に追従しないように』


 先行する蘭先輩に追従しようとするけど、おっしゃる通り、別の車に阻まれて蘭先輩を見失う。


 仕方がないので、その車の後ろに入って、なんとか本線合流は果たすも、バラバラに。


 バックミラー見るとカワサキさんはしれっとわたしの後ろに追従してる。


 さすが。心強い。


『まぁ、音声でやりとりできるし、よっぽど分岐を間違わなければ大丈夫』

『せやで。無理な追い越しとか、したあかんで』


 最後尾のカワサキさんと、先頭の涼子さん兄妹きょうだい


 アラ還とは言え。


 お元気でなにより、です。


 それから環状線に入って、そもそもの制限速度が七十キロやら六十キロやらに落ちる。


 標識を確認するまでもなく、車が詰まっていて、それなり、あるいはそれ以下の速度での走行を余儀なく。


 車間距離も取りたいけど、後方からの煽りが怖い怖い。


 わたしの後方にはカワサキさんが居て、その後ろをブロックしてくれているけど、下手な車間距離を開けると、その間にねじ込んでくる車も居るから怖い。


 だから、カワサキさんは割り込まれないギリギリの距離を保ってくれている。


 幸い。


 わたしたちの間に居た車もバイクに近寄るのが嫌だったらしく、すぐに車線変更して追い越して行ってくれた。


『コーナー無理すんなや? ウチの速度スピードに合わしや』


 基本的に。


 バイクではブレーキはほとんど使わない。


 使うとやばい場面も多々あるから。


 アクセルとクラッチ、エンジンブレーキを使い分けて速度を調整コントロールする必要がある。


 コーナーに入る手前の直線でクラッチを切って、アクセルを戻して、加速を緩める。


 少し速すぎると思ったら、少しだけクラッチを戻して、エンジンブレーキをかける。


 この時に、アクセルのスロットルも調整して、ほんの少しだけのブレーキにする。


 それでも減速しきれないときは、軽く、ほんとに軽くだけ、後輪ブレーキを『踏む』。


(一般的なロードバイクのブレーキは、前輪ブレーキは右手、後輪ブレーキは右足で操作します)


 減速しきって、曲がる速度でコーナーに入ったら、身体を倒しつつ、クラッチをつないで、アクセルを開ける。


 この時、速度を上げるのではなく、コーナーに侵入した時の速度をキープするために減速しないようにするための、加速。


 これを、同時進行で、一気に実行。


 いやぁ、最初はパニックだったわよね。


 教習所の狭い道路ではそんなに速度も出てないから、ゆっくりと操作できるけど。


 実際の公道、特に高速道路でコレは。


 緊張、しきり。


「環状、怖いぃいいいいっ! 高速道路なのに、なんでこんなキついコーナーあるのよぉおおおお」


『これがえぇンやンけー』

『アホボケカタナ、お祖母様に追突すんじゃありませんわよ?』


『急ブレーキ踏んだろか?』

『ぎゃー、涼子はン、マジ勘弁やでー』


永依夢エイムちゃん、速度落としすぎ、内側に寄りすぎてるよ。ゆっくり加速して』


 へ?


 ちらっとバックミラー見ると、カワサキさんが迫って来てる。


「ぎゃぁああああ」


 あせってアクセルを開けそうになるけど。


『焦らないで、ゆっくりアクセル開いて、ゆっくりね、ゆっくり』


「はい」


 カワサキさんの指示の通り、ゆっくり、ゆっくり、アクセルを開いていくと。


 後輪が、路面を蹴る感覚が伝わってくる。


 もう、コーナーの出口に近かったから、そのままアクセルを開けていって。


 コーナーを出るために、倒していた身体を、これまたゆっくりと反対側へ戻して車体を直立させて。


 アクセル、オン!


 すぐに蘭先輩に追い着いた。


「はふぅ……」


永依夢エイムちゃん、今度、環状周回、練習しよか?』

『あ、ウチも付き合うよ?』


「あはは、涼子さん、カワサキさん……機会があればお願いします」


 てなひとコマもあったり。


 環状線を抜けて、郊外へ向かう広い高速道路の路線へと分岐。


 こっちはまだ車も環状ほど多くなく。


 広々、ゆったり。


 五台ならんで、快走!


 目的地の降り口の手前のサービスエリアに入って、少し休憩。


 ちなみに。


 パーキングエリアは、こじんまりとした駐車スペースのみで、売店とかの施設が少なく、小さなパーキングだと自動販売機と休憩所がある程度。


 サービスエリアは、少し大きな駐車スペースと、売店とかの施設が充実していて。


 以前に立ち寄ったでっかいサービスエリアだと、レストランとかもあったり。


 浜名湖のウナギ……おいしかったなぁ……。


 そっか。


 考えたら、ひとりでも食べに行けるようになったんだ、わたし。


 そう思ったら、なんか、感慨。


 ここでは、アイスクリームを食べて、アイスコーヒーを飲んで。


 さて、もうひとっ走り!




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る