第89話:高速道路をそうこうする内に



 もうすでに懐かしい、母校の高校の前を通って。


 いったん、高速の高架下を走行して、交差点をUターンするとそこがすぐに高速乗り口。


 そこからETCでスルっと。


 いや、エラーでひっかからないか、ちょっとドキドキしつつ。


 結果、難なく、スルっと行って、ホっとひと息、く間もなく。


 本線への、合流。


 先頭を行く涼子りょうこさんのワゴン車は、スムーズに合流。


 その後ろの方菜かたなちゃんも蘭先輩も、スムーズに。


 そして、わたしの番。


 右後方、本線の状況を振り返って確認しつつ、右ウインカー。


 幸いなことに、遠くに一台、走行車線を走る車が居るけど。


 距離的にも速度的にも問題なし。


 そのまま前方と、右後方の双方を何度か目視確認して、体を右に傾ければ。


「はふぅう。合流怖いぃいいい」


 思わず本音がぽろり。


『まぁ、合流は気ぃ使うわなぁ』

『今日は空いててよかったですわね』

『混んでる時にこの台数だと、分断されちゃうからねー。後で合流するのが大変』


 今は、隊列を組んで。


 車の涼子さんはともかく、バイク四台は。


 前後はもとより、走行車線の幅を使って互い違いに左右にずらして並ぶ。


 こうすることで、前方で緊急事態が発生した場合でも、後方からの追突を避けやすくなる。


 方菜ちゃんが涼子さんのワゴン車の後方左側を走行。

 その右後方に、蘭先輩。

 そこからさらに左後方に、わたし。

 そして、わたしの右後方に、カワサキさん。


 高速道路で百キロ区間なので、各車間距離は百メートル程度。


 本線に乗ってしまえば。


 アクセルをほぼ一定に保った形で、他の操作はほとんどなくなる。


 ソロで走っているとぼぉっとしちゃって気が抜けてしまうんだとかだけど。


『なぁ、涼子はン、涼子はン、もうちょい速ぅ走れまへン?』

『あほぬかせ、制限ギリで走っとるやろ。これ以上はアウトや、アウト』

『ちょっとくらいえーやン』


 鳥撮りのルールには厳しい方菜ちゃん。


 なぜか走りのルールには?


 しかし、蘭先輩が、地獄の底から響き渡るような声で。


『か・た・なぁ』


 続けて、カワサキさんが。


『あはは。あかんでー、カタナ』


『カタナはバイクやっ、うちは方菜かたなやー』


 発音が、地味に違う。


 カタナ、は、武器の『刀』の発音で、音の高さは『→↑→』みたいな、発音。


 方菜ちゃんの名前は、『↑↓↓』みたいな感じで、頭の『か』が上がって『たな』は下がる発音。


 わたしの永依夢エイム、『↑↓↓』と同じ感じかな?



 さて。


 高速と言えど、直線ばかりではなく、ゆるやかながら、カーブも、あり。


 ぼーっとしていると、曲がり切れずに事故る可能性も。


 一瞬たりとも気は抜けない。


 前方のみならず、側方や後方の異常事態も気にかける必要が、ある。


 暴走車両が後ろから突っ込んで来たり、横を並走している車がこちらを確認せずに、突然車線変更して来たりする可能性も、あり。


 バイクVSクルマ。


 どちらが強いか?


 考える、までも無く。


 いや、ほんと、気が抜けない。


 それもあって、最後尾は走り慣れているカワサキさんが勤めてくれている訳でもあり。


 わいがやと、おしゃべりはしつつも、周囲警戒は怠らず。


『小一時間ほどしたら環状入るけど手前のパーキングで休憩するよってな』


 涼子さんからの、指示。


『全行程二時間ちょいやろ? 一気に行かへンの?』


『環状は渋滞するよってバイクあんたら結構疲れるからな』


さいでっかそうですか……』


 そうこう、する内に。


 走行、する内に。


 そのパーキングエリアへと到着。


 小一時間、とは、言え。


 アクセルをほぼ同じ位置でキープして、速度をキープさせるのに。


「手首が地味に痛い……」


『あはは、せやろ? 慣れンと、なぁ』


 ちなみに。


 下道を長時間走ると、右手じゃなくて、左手が痛くなる。


 高速だと、変速することがほとんどないので、左手のクラッチレバーの操作はほぼ必要ないけど。


 下道は、信号があったり交差点があったり、渋滞があったりと、クラッチレバー、変速機の操作が激しく。


 何度もクラッチレバーを握りしめると、左手が痛くなる。


 まぁ、これもだいぶ慣れて、左手も鍛えられて来たけど。


 高速はめったに乗らないから、長時間アクセルを固定しっぱなしは、まだ慣れず……。


 このパーキング休憩は、とっても有難い。


 あ。


 あと、ちなみに。


 お尻も痛くなるし、暑さで蒸れるのよねぇ(泣)


 空冷機能付きのライダースーツとは、言え。


 太陽の熱と、エンジンの熱で。


 暑いぃいいい。





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