第85話:今年のゴールデンウィークは



 さて、GWゴールデンウィーク


 とは、言え。


 件のお達しもあり、前半後半で一回づつ、午前中のみの出動。



 前半。


 外来種三連発の後。


 キビタキさんの声を頼りに、姿を探すも、奥の方から出て来てくれず。


 出て来てくれるのをひたすら待機。


 していたら!?


 なんと、目の前の樹に、何やら飛来。


「アオゲラだっ」


 さすが、カワサキさん。


「うっわぁー、めちゃくちゃエエとことまっとンやン!」


 方菜かたなちゃんの言う通り。


 明るく、抜けた枯れ樹の枝。


 無言でシャッターを切っている、蘭先輩。


 わたしも、捕捉エイムして、切るっ、切るっ、切るっ!


「おほぉ、ウチも久しぶりに見たなぁ、アオゲラ」


 ほぅほぅ、カワサキさんでもあまり見ない鳥さんなのねん。


 棚からボタ餅的に。


 ラッキー?


 そして、そのアオゲラさんが去ると、今度は。


「キビタキ、出てきたみたい」


 手前の樹の低いところ、ちょろちょろ、と、影。


「とまりましたわ」


「どこー?」


 蘭先輩が捕捉エイムしている場所を、蘭先輩の肩越しに確認して。


「あれかー」


「どれやーっ!?」


「あれやー」


 方菜かたなちゃんにも教えてあげる。


 さっきまで全然、姿を見せてくれなかったキビタキさん(♂)が。


 今度は。


「抜けとぅ、ええとことまっとンなぁ」


 低い横枝の上。


 ちょうど、目線の先。


 さっきまで上の方のアオゲラさんを撮るために伸ばしていた三脚の足を、ささっと縮めて低くして。


 照準器でアタリを付けて、ファインダーに導入してしっかりとピントを合わせて。


「おぉっ、鳴いてる鳴いてるぅ」


 ファインダーで拡大して見てると。


 鳴き声と、クチバシの動きが、ちゃんと連動してて。


 この子が鳴いてるんだって、よくわかる。


「よし、これ、動画で撮っとこ」


 あ。


 このカメラも動画が撮れるんだった。


 わたしもっ。


 カメラの左肩にあるダイヤルを回して『動画』ポジションに、して。


 ファインダーの横にある赤い『REC』ボタンを押せば。


 自動的に動画撮影モードになって、動画撮影が開始される。


 が、しかし。


「うわ、ピントが右往左往してるっ!」


 正しくは、前往後往? そんな言葉は、無いケド。


「そこは、マニュアルフォーカスで」


 あ。そっか。


 フォーカスモードをマニュアルにして。


 マニュアルにして。


 マニュアルに……。


「できないです、マニュアル!?」


「あ、そのカメラ、動画は自動的にAFオートフォーカスになっちゃうんだっけ……」


 カワサキさぁん……うぇええい。


 普段、動画モードとかほとんど使わないからねぇ……。


 まぁ。


「動画? ムービー? どれやぁ!?」


「そっちのカメラは、動画機能付いてませんわ」


「さよけー」


 わいがや。


 そんな、GW前半戦。



 からの、数日の修学を経て、後半戦。


 今日は、前回と違って。


「何も居ませんね……」


 あ、そうだ。


「前回たっぷり撮ってメモリいっぱいだから、フォーマットしておこう」


 と、何気なく、メモリカードを初期化して、空に。


 してから、ふ、と。


「あれ? 写真、バックアップ、取ったっけ……?」


 思い返す。


 家で写真の整理をして。


 ミスショットや、ブレボケ写真を削除した後。


 新しく買ってもらったパソコンに、データを。


 データを。


 データを?


「移してなかった……」


 あぎゃわぁあああああああああああああ。


 やっちった……。


「何、騒いでますの? 永依夢エイム?」


「前回のアオゲラさんとキビタキさん、間違ってフォーマットしちゃった……」


「は?」


 何やら、ツールを使うと、消したデータを復活させる事も出来るらしいんだけど。


「うぅ、まぁ、いいや……また、撮れるよねっ!?」


 期待も込めて。


 今回はまだオオルリさんも、サンコンさんも見てない、撮れてないし。


 期待。


 するも。


 本当なら、GWのお休み期間中、毎日でも来たかったけど。


 そこは悲しき受験生。


 なんでも、カワサキさんはしっかり見た撮ったと。


 写真を見せてもらうも、逆に悲しくなるわね。


 むぅん。



 そんな、GWもさっさと終わり、季節がまた。



 移ろい行く。





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