第84話:外来種三連発



 ゴールデンウィーク。


 とは言え、ちょっと飛び飛び。


 前半と後半で、一日づつ、泣き落としで許可を得て。


 前半の出動。


 まぁ、天候の関係でちょうどいい感じにもなった感。


 春の渡り鳥さんを探して、早速。


 と、思いきや。


「え? あれ、なんでしょう?」


 早朝の公園フィールドの園路沿い。


「メジロ?」


 緑色の小さな鳥さんが。


「メジロ? ちゃうやろ、なンや模様着いとンで?」


 ぱっと見、メジロかと思ったけど。


 カメラで覗いてみると、方菜かたなちゃんのおっしゃる通り、何やら緑一色ではないし、翼に赤い模様が入っている。


 メジロは、ホント、緑と白だけだもんね。


 そしてカワサキさん曰く


「ソウシチョウだね……こんなとこに居るのは珍しいな……迷い込んだかな」


「珍しい鳥さんなんですか?」


 少なくとも、わたしは初めて見た。


「まぁ、ここらじゃ滅多に見ないね……外来種なんだけど」


「外来種。もともと日本に居た鳥ではなく、近代に外国から持ち込まれた、余所の国の鳥、ですわ」


 カワサキさんを継いで、蘭先輩の解説。


 へぇえ。


「そういう子も居るんですね」


「あぁ、他にも居るよ……って、言ってたら、あっちに」


 ?


「コジュケイが鳴いてる」


 言われてみると、確かに。


 大きな声で鳴いている鳥さん。


 ソウシチョウさんをぱしゃぱしゃと撮っていたら、散歩のヒトが来てソウシチョウさんが飛び去ってしまったので。


 声のする方へ移動してみたら。


 探すまでもなく。


 園路に、とことこ、と、現れる、鳥さん。


 これも初めて見る、鳥さん。


「これが、コジュッケイ?」


「コジュケイ、ね」


 園路を横切って、脇のヤブへ入って行くけど、時々立ち止まって大声で鳴く。


 コン、コン、コーン。


「これも外来種なんです?」


「そうだよ」


 ファインダーを覗いたまま、会話。


「大昔は輸入規制とか無かったからね。観賞用とか飼育用にって感じで持ち込まれたらしい」


 そのコジュケイさん。


 姿は……ハトくらいの大きさで、赤茶色? っぽい顔に、灰色の頭と胸、そして脇腹に黒い斑点……うぅ、説明難しいわね、これ。


 てこてこ歩いてヤブの中へ。


 そして静かになる。




「肝心の春の渡り鳥さんが……」


 見当たらず。


「うーん、今日はなんか大外れだね……」


「それでなくとも……」


「ここ数年、かなり減ってる感じです、わね……」


 長らく鳥撮りされてるカワサキさん、蘭先輩がおっしゃるならば。


 わたしは初めてまだ一年と少し。


 その違いを感じる事もできないけど。


「こっちの状況はようわからンけど、何処ともでも一緒なンかなぁ」


 方菜ちゃんも、そこそこの年数。


 撮影ではなく、観察を続けているらしく。


 ただ、こっちに引っ越して来てまだ一年未満。


 ここらへんの状況はよくわからないだろうけど。


 もともと住んでいた地域でも、傾向は、ってコトなのね。



 それからしばらく。


 春の渡り鳥さん、キビタキさん、オオルリさん、ムシクイさん、それに、サンコウチョウさんを探して、公園フィールドを、ウロウロ。


 一応、キビタキさんとか、撮れたりはしたけど。


「おぅ……、また外来種かぁ」


「あの声ですか?」


 えらく大きな声で鳴く鳥さん。


 ホオジロさんかと思ったけど、それよりさらに大きな声で。


 複雑な鳴き方。


「こっちですわね」


 蘭先輩が追いかけて見つける。


「あの茶色っぽいのがそう?」


「ですわ」


 ちょこちょこ、と動き回っているヒヨドリさんと同じくらいの大きさの鳥さん。


 わたしたちが近付くと、鳴き止んで、わりと近くで。


「茶色いメジロ!?」


 そう、眼の周りに白いリング。


 大きさは全然違うけど。


 メジロさんか、サンコウチョウさんか。


 目のまわりに特徴のある鳥さんも結構いらっしゃるわね。


 って、これも外来種、なのね。



「なんか今日は……」


「外来種三種、オンパレード?」


「まぁ、こんな日もあるね」


 せっかくのゴールデンウィーク。


 オオルリさん、サンコウチョウさんに、合えず。


 残念!



 でも、初物三連。



 これは、これで。




 ね?




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<近況ノートへのリンク>

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