第59話:ダブルトリガー! 裸眼立体視?
「おじさま……一体それは何ですの?」
9月ももう終わろうかと言う頃。
日中はまだ汗ばむけど、深夜早朝はもうかなり涼しくなってる。
そんな早朝の
カワサキさんが、普段のカメラとは別の
「これか? これなぁ……」
カワサキさんも、どう説明したものか、と、思案している模様。
「カメラ二台並べて……
意外なところからフォローが入る。
「そうそう、それそれ、裸眼立体視、っぽいやつ?」
「裸眼立体視って?」
素朴な疑問。
「変なメガネ掛けて観る3Dテレビとか3D映画とかあるやろ?」
方菜ちゃんが説明してくれる、っぽい。
「あるね」
「あれのメガネ無しで見れる画像のこっちゃ」
あー。メガネなし、イコール、裸眼、ってことか。
立体、イコール、3D、ってことね。
成程、納得、なるるん。
でも。
「その写真を撮るってこと?」
「せや。二台のカメラをちょこっとだけ角度変えて同じ写真を撮るやろ?」
ふむふむ。だから、カワサキさん、二台のカメラを同じ三脚に乗せてると。
「ンで、出来た写真を二枚並べて目ぇを寄せて一枚に見えるようにするねン」
そうすると?
「なンと! 画像が浮かび上がって見えンねんわ」
「へー」
「へー」
わたしもだけど、蘭先輩も、初耳感。
「よし、できたー」
って、方菜ちゃんの解説を聞いてたら、カワサキさんの組み立てが終わったらしい。
三脚の上に、ごっつい一眼レフカメラが二台、並んでいる。
その二台のカメラから何やらケーブルが伸びて、そのケーブルの先をカワサキさんが握っている。
「一本のリモートケーブルを、二台のカメラに接続して、二台同時にシャッターが切れるようにしてみたのよ」
カワサキさんはその二台のカメラを池に浮かぶカルガモさんに向けると。
「こんな風にね」
カシャパシャ
カメラの種類が違うからだろうか。違うシャッター音が重なって聞こえた。
「うんうん。撮れる撮れる。どれどれ、どんな風に写ったかなぁ」
と、カワサキさんはその二台の内の一台を操作して、プレビューを見ようとするんだけど。
「あれ? おかしいな? プレビューボタンが効かない?」
もう一台のカメラも操作してみるけど。
「こっちもダメ? ううむ。やっぱり、ケーブルで直結してるとダメなのかな? よし、片方電源落としてみるか」
と、一台のカメラの電源を切ると……
パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ
「えーーーーっ!」
驚くカワサキさん。とゆーか、わたし達も驚いたわよ。
パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ
「何? 何? 何?」
電源をつけたままの方のカメラが、猛烈に連射しているみたい。
「こっちかっ」
電源を落とした方のカメラの電源を再度、投入。
しーん
もう一度、電源を切る。
パシャパシャパシャ
再度電源オン。
しーん
「うぉぉぉぉ。やっぱり、無理があったかぁぁああ!」
どうやら、撮影自体は上手くできたみたいだけど、プレビュー表示とか他の機能が上手く使えなくなっちゃうみたい。
しかも、片方の電源をオフにすると、もう片方が自動的に連射されてしまう、と。
「カワサキはン、無茶したアカンわ」
「……せやなー」
トホホなカワサキさん。がっくり肩を落とす。
「とりあえず、ケーブル外せばプレビューも見れるけど……不便!」
ですよね。
「おじさまは、たまにこんな感じで訳の分からない事を試して遊んでますからねぇ」
蘭先輩は慣れてる模様。
「ってゆーか、カワサキはン、カメラ何台持ってはるん?」
方菜ちゃんのさらなる突っ込み。
「あー……、この三台と、あと、予備で一台、かな」
「ほぇー」
ほんと、ほえー、だね。わたしだったら……
「新しいの買う時、古いのを下取りとかオークションとか出したりしないんですか?」
「うん。結構使いこんでボロボロになってて二束三文だし、愛着もあって手放すのが惜しいし……こういう感じで、色々お試しに流用できたりするしね!」
カワサキさん、今回は失敗したけど、なんだか楽しそう……。
贅沢な、大人の趣味、なんだなぁ……
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ダブルトリガー! 裸眼立体視?
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