第60話:水浴びオオタカさん、撮れた?



 カワサキさんが妙な失敗作のダブル・カメラを仕舞った後。


 本来なら、そろそろ秋の渡り鳥さんのシーズンに入る頃とは言え。


 まだ少し早いか。


 見て周ったけど、ほぼ、見つけられず。


 ちらっと、キビタキのメス? もしくは、若を見かけた程度。


 春と違って秋の小鳥さん達はあまり鳴かないってことで、見つけるのも大変なんだそうで。



 陽も登って暑くなって来たのもあり。オオタカしまの池のほとり。いつもの場所でおしゃべりしながらオオタカさん待機。


 夏場はほとんど見かけなかったオオタカさんだけど。


 ぼつ、ぼつ、と戻って来てくれたっぽく。


 最近また見られるようになって来ているのです。


 んが、しかし。


 今日はまだオオタカさん、現れず。


 女三人、プラスおじさん一人。おしゃべりコース。


方菜かたなはバイクの免許取りますの?」

「ん? 何? 蘭はンは取るん?」

「ええ、おじさまと一緒にツーリング撮影に行けるようになりますし」

「ウチもなぁ……無理矢理教習所、放り込まれそぅな気ぃする……」


 そういえば、方菜ちゃんのご両親はバイク好きで、ツーリング先で出会ったんだっけか。


「原付って筆記だけで行けるんじゃなかったっけ?」


 素朴な疑問。


永依夢エイム、バイクと原付は違いますわよ」


「原動機付自転車、自動二輪。この差は大きいねぇ」


 カワサキさんも女三人に負けじと口を突っ込んで来る。


 まあ、カワサキさんにしてみれば、孫も同然の年齢なんでお構いなしか。



 とか、なんとか、くっちゃべっていると。


 バサバサバサっ!


 辺りのハトさんや小鳥さん達が、一斉に飛び立つ。


「!?」


 全員、鳥さん達が飛び立った方向と、逆の方を見る。


 左前方に飛び去る鳥さんの逆、つまり、右手後方。


「来たっ!」


 待望の、タカさん飛来。


 普段なら、オオタカ島の木にとまるか、島を超えて飛び去るか。


 今日は。


「ええええ!?」


 皆、仰天。


 飛来したオオタカさんが、池に浮かぶ小さな浮島に着地……と、言うか、着水!?


「えらい所に降りたなっ!」


 カメラを持たない方菜ちゃん以外、わたし達三人含めて、周りに居たカメラマンさん達も、一斉にオオタカさんを捕捉エイム


 わたしもカメラのファインダー越しに、オオタカさんを見ながらシャッター。


 浮島の周りには、カルガモさん、カワウさん、それにカイツブリさん達が居たんだけど、皆さん大騒ぎ。


 ガーガー。キューキュー。


 特に、カイツブリさんが、明らかにオオタカさんに向かって何やら苦情を言ってる風。


 オオタカさんは、そんなコトはお構いなしに。


 バサバサバサ


 と。


「何あれ!? 何あれ!?」


 オオタカさん、浮島の端っこで、半身を水の中に浸して、ばたばたと翼をはためかせている。


「水浴びしよんなしてるね


 双眼鏡の方菜ちゃんが解説してくれた。


「オオタカも水浴びするんだねぇ」


「たいがいの鳥は水浴びやら砂浴び、しよるで。見れる機会があるかないかだけで」


「私もオオタカの水浴びは初めて見ましたわ」

 とは、蘭先輩。


「ウチも久しぶりに見たなぁ……あっ」


 水浴びをしていたオオタカさん、ぱっと飛び上がって、浮島の真ん中へ。


 そこで少し、辺りを見渡したかと思うと。


 ばさっ!


 飛び立ち、最初に来た方へと、飛び去って行った。


「ほへー……」



 一瞬の出来事。



 騒いでいた周りの水鳥さん達は落ち着きを取り戻す。


 わたし達は、まだ興奮冷めやらず。


 今撮った写真のプレビューの確認。


「ぎゃあああ、慌て過ぎてピント合ってなあああい」


「ぉぉ、良い感じに撮れてるうううう」


 悲喜こもごも。


 

 ん。


 わたしは、まあ、そこそこ? かな?






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近況へのリンク

水浴びオオタカさん

https://kakuyomu.jp/users/nrrn/news/16817330664011932301

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