第21話:永依夢の右耳①診断結果
始業式の後、蘭先輩とお茶して帰宅後。
夕食の後、お母さんから言われた。
「土曜日、朝から病院行くからね」
「へ?」
「耳鼻科。予約取ったから。午前中に採血と聴力検査にCT検査、午後から診察だって。一日空けておきなさい」
ぐはっ。
こればっかりはショウガナイ。
蘭先輩にメッセージを送る。
『ドヨウ ハ ビョウイン』、と。
電報かっ!
なんで電報なんて知ってるかって?
この間、テレビでやってたのをたまたま見たのよ。
若者が知ってるコトと、お年寄りの人が知ってるコトの比較? みたいな番組。
お年寄り寄りのコトだと、お父さんお母さんも知らないこコトも結構あった。
『電報かよっ!』
蘭先輩から返メが来た。老人かよ! と返したくなったけど、返すと怒られそうな気がしたので、スルーるん。
うん、まだ数回しか話したことないけど、蘭先輩って、明らかに年寄りくさい。
お
まあ、それはさておき。
平日の学校は、特にコレと言ったイベントがある訳でもなく。
石田君とも以前と変わらず。
朝の電車で一緒になったり、帰りにお互い友達にフラれた時に一緒になったりする程度。
ちょっと変わったのは、石田君も居ない時、蘭先輩とお茶するようになったことか。
わたしの図鑑を見ながら、これは見た、これは見てないとか、なんだかんだ盛り上がる。
そんなこんなで週末土曜日。いざ、病院。ドキドキ。
お母さんに車で付き添ってもらって受付からの採血。
ひーん。痛い~。
しくしく。
聴力検査は、ヘッドフォンを付けて、流れて来るピーとかブーとかって音が聞こえたらボタンを押すって感じの検査。高い音から低い音まで段階的にテストされた。
そして、順番を待って、CT検査。
金具の付いた衣服はNGってコトで、Tシャツにワイヤーの入ってないスポブラを着てきた。
狭い担架みたいなところに寝かされて、頭を固定されて、なんかトンネルみたいなところに入れられて……
「少しの間、動かないでくださいね~」
ぐわんぐわんぐわん。
なんかメカメカしい音……しかも、寝ている担架がじわじわと移動してるっぽい。動いちゃだめ、ってことでじっとして耐える。
耐える事、数分。
「はい、おしまいです」
ぐおーん、とベットが元の位置まで移動して、終わったっぽい。
頭を押さえていたベルトも外してもらって、起き上がって上着も着用。
「待ち時間一時間、処置十分……」
「病院ってそんなものよ……」
デスヨネ……
「お昼、どうするの? 午後の診察って、三時だったよね? お腹空いた〜」
採血があったので朝食抜きだったから、お腹ぺこぺこ。
「余裕で家に帰って食べられるわね……戻るわよ」
むうん。外食できるかと思ったのに。残念。
って事で、一旦、帰宅。
家でお昼ご飯を食べてから、再度病院へ舞い戻り。
診察室前で待つ事一時間ちょい……三時って話だったんで、三十分前から待機してたけど、診察室に呼ばれたのは、三時四十五分。
診断の結果。
「ウィルス検査の結果を見ないと結論は出せませんが、診たところ中耳炎ではないと思われますので……先天性難聴ではないかと考えられます」
「はぁ……」
難しい説明はよくわかんないけど、どうやら、耳にある『音を伝えるための骨』が右側だけ少し小さいらしい。
CTの映像で右と左を比較して見せてもらったけど、確かに左右で形が違ってるのがわかった。
って言うか、CTって『立体的レントゲン写真』なのね。
レントゲン写真を少しづつずらして連続で撮影。重ね合わせて立体的に表現できるようにしたモノ、みたい……だからベットが少しづつ動いてたんだ。
「幸い、難聴とは言え聴力は残っていて少し聞こえにくい程度なので、無理に手術するより、補聴器で補完した方がよいでしょうね」
いずれにせよ、ウィルス検査の結果が出るのが二週間後って事で、翌々土曜日に再度病院。
結果を聞いたところ、ウイルスは検知されずやはり中耳炎ではなかったとのこと。
ちなみに、手術で足りない骨を耳の別のところから移植、整形して復活させる事も不可能じゃないけど?って、そんなの怖いし、じゃあ、補聴器でって事になった。
学校の授業でも席の位置によっては先生の声が聞こえにくいことがあるので、補聴器があればよく聞こえるようになるかも?
とりあえず、病院の帰りにメガネ屋さん(お父さんの眼鏡でお世話になっている)で補聴器のカタログを一通りもらって来た。
そして、まずはお父さんにカタログを読み解いてもらうことに。お父さん、メカ好きだから、こういうガジェットのカタログを読み込むのが得意と言うか好きらしい。
「へぇ……どれもだいたいブルートゥースでスマホの音声飛ばせるのかぁ」
……
「アダプタを介してテレビとか別の音源を飛ばすことも出来るか……」
……
「充電式と電池式……どっちがいいか?」
……
「耳穴式と耳掛け式……耳穴式は、自分の耳の穴の型を取って、その型の通りに作るから……値段は高くなるけど、フィット感は抜群、だって」
……
「国内メーカーの方が保守は安心できそうだけど、技術的にはやっぱドイツか? なにげにデンマークのメーカーが多いのは何故? スウェーデンならわかるんだが……」
……
「ふむ。どれも調整はお店でやってもらう形だけど、こっちのタイプだとスマホで多少の調整が出来るのか……」
……
「……片側で六十九万か……これはナシだな……」
!?
「こっちの十万ぐらいのかなぁ……」
……とりあえず、ここはお父さんにまかせて、よさげなのを選んでもらおう。
結構な金額なので『貸出お試し』ができるシステムもあるらしい。
後日、お父さんがアタリを付けたモノをメガネ屋さんで実際に貸し出してもらってお試しして選ぶことになった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
近況へのリンク
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます