第22話:オオタカさんに両親をご紹介?



 ドヨウ ハ ビョウイン、で一日潰れて翌日曜とその翌週の土日も雨模様で出動できず。


 さらに次の土曜日に病院で診断結果を聞いて、補聴器のカタログをもらって、翌日の日曜日。


 この日は両親も一緒に。


 お父さんが朝苦手、ってことで、いつもより少し遅めに。

 朝食を済ませて、自転車三台で。

 駐車場もあって、車で来る事もできるけど、園内に入ってからの移動が大変だから自転車で来た方が何かと便利。

 貸出自転車もあって、ママチャリが借りれたりするらしいけど、借りた事ないので詳しくは知らない。


 前日夜に蘭先輩にメッセージを送っておいた。


『アス チチハハ オソメ』


『電報好きだな……つか、意味わかんねーよ』


『明日両親連れてく。ちょと遅めに行くよ~』


『了』


 両親と三人で坂道をごーごー下る。行きは軽快なんだよなぁ、あいかわらず。

「これ、帰りキツそう……」

 そんなお父さんは一人マウンテンバイク。お母さんとわたしは変速付きとは言え、ママチャリ。

「帰りはそっちの自転車貸してよ」

「ヤダ」

「ケチ」

 夫婦喧嘩はオオタカも食わない?


 そんなこんなで。


『到着~。今どこ~?』


 公園に到着して、蘭先輩にメッセージを送る。


 ……


 返事が、ナイ。


 公園の入り口は沢山あるんだけど、ウチの家から一番近い入り口の中に入って、広場のようになった場所で一時待機。

 待つ事、しばし。


しま


 一言、それだけ返事が来た。

 もしかしたら……

「こっち~」

 二人を先導してオオタカしままで自転車を走らせる。


 いつものごとく、鳥撮りさんたちでいっぱい。

 そしていつものごとく、端っこの方にカワサキさんと蘭先輩を発見。

 よく見ると二人を含めて鳥撮りさんたちはカメラに張り付いて同じ方向を見ているっぽい。


「お父さん、お母さん、タカさんが居るみたいだから、そっ~と」


 自転車を停め、両親を先導してゆっくりとカワサキさん達の脇に移動。


「おはよう蘭。もしかしてタカさん来てる?」

「エイム。貴女めちゃくちゃ良いタイミングで現れましたわね。ついさっきオオタカ入りましたわ」

「りょーかい」

 わたしは素早く三脚とカメラをセットしながら、蘭先輩とカワサキさんが狙っている方角を確認。


「あれだね」

 すぐに枯れ樹の枝にとまっているオオタカさんらしき白い物体を発見。


「お父さん、お母さん、あの白っぽいのがオオタカさんだよ」

 蘭先輩とカワサキさんより先にオオタカさんを紹介する事になった不思議。


「んー、どれだ?」

「あなた、双眼鏡貸して。多分、アレだわ」

 お父さんは見つけられずにきょろきょろしているけど、お母さんはすぐに気付いたらしい。お父さんの持っていた双眼鏡を受け取っ……奪い取っている。


 ちなみに、双眼鏡はお父さんが持ってたモノ。聞けばサバイバルゲームで使ってたモノだそうだ。お母さんはもっと良いモノを持ってたらしいけど、装備は全部叔父さん……弟さんに譲渡したんだとか。


 あ、そうだ。


 わたしは手早く照準器の微調整を済ませると、カメラを外した三脚をお母さんに渡す。

「お母さん、これで双眼鏡固定してお父さんにも見せてあげて」

「ありがと」

 わたしは近くの木に寄りかかって手持ちでオオタカさんを狙う。


「へぇ、本当に居るんだ、こんなところに……」

 後ろからお母さんの声。


「ちょ、俺にも見せてくれよ」

「はいはい」

「ぉぉ、なんか、スゴ……生で見るとやっぱカッコイイなぁ」

 お父さんも無事に見られたらしい。


「仰角約二十五度、距離、ざっと百メートルぐらいかしら……この距離だと射程外ね……」

 ちょ! お母さん!?


永依夢エイム、右の脇が開いてるわよ。もっと脇を締めないと」

 えっと、お母さま……

 まあ、その指摘はありがたく。少し上がっていた右腕をぐっと身体に引き寄せると、ぐらつきが抑えられて安定する。


「で? 永依夢。この後どうなるの?」

 いや、わたしに聞かれても。


「ずっと見てるだけか?」

 いきなりヒマそうなお父さん。


「まあ、そんな感じだけど……」

「長い時は、二時間から三時間、このままですわ」

 蘭先輩がカメラから離れてそう答えてくれた。


「二時間……」

「三時間……」

「はじめまして、永依夢さんのお父様、お母さま。私、鈴木家の蘭と申します。永依夢さんとはつい最近知り合いましが、懇意にさせていただいております」

 めちゃくちゃ丁寧に、恐縮でございます。

 って言うか、どうしても『スズキ蘭』と続けては言いたくなさそうだ。

「ど、どうも、ご丁寧に。初めまして、永依夢の父です、よろしくお願いします」

 ぺこり。

「初めまして。永依夢の母です。永依夢がお世話になっております」

 ぺこり。

 お父さんお母さんが驚きつつも反応。蘭先輩に合わせて? つられて? 丁寧な挨拶を返す。


「今、オオタカが足を上げたから、しばらく動きそうにないね」

 そこにカワサキさんもカメラから離れて来てくれた。

「ども。はじめまして。カワサキです」

 そっち名乗るんだ……


「初めまして、永依夢の父です。永依夢がお世話になってます」

「同じく永依夢の母親です」

 ぺこり、ぺこり。

 知り合いと両親が会話してるのって、なんか超恥ずかしい感。

 ぐぬぬん。


「ねえねえ、蘭。足を上げたから動かないって、どゆこと?」

 さっきのカワサキさんの話を蘭先輩に確認。


「タカに限らずですが、鳥は休憩する時、片足を上げるんですわ」

「なんで?」

「そこまでは気にしたことありませんけど、きっと何か理由はあるんでしょうね……気になるなら、後で調べて教えて下さいな」

「ん。わかた」


 オオタカさんと両親たちを交互にちらちら。

 オオタカさんが突然飛び出したりしないか、気になる。

 両親が変なコト話さないかも気になるけど、左手側を樹に当ててるから、右側の耳が聴こえずらい。やっぱり、補聴器欲しいかもかも。


 とりあえず、耳は両親へ、目はファインダー越しにオオタカさんへ。


 オオタカさんを見ていると、羽繕い? みたいな感じで翼を少し広げて、人間で言うと『腋』にあたるような部分をクチバシでつついたりしてる。


「FPSやられてるとか? ウチらもやってるんですよ」

「ええ、私達もやってますよ」


 ぐるん、首だけ完全に真後ろを向けて、背中? をつついたりもしてるみたい。

 オオタカさんの首って百八十度、後ろにまわるんだ……


「ちなみに、どのタイトルですか?」

「フリーの……なんですけどね」

「ああ、そっちですかぁ。ウチは……の……なんですよ」


 多分、ゲームのタイトルなんだろうけど、英語っぽい名前で細かいところは聞き取れない。


 あ。

 オオタカさんが足で頭を掻いた! カワイイ!


「ギルドのメンバーが引退しちゃって、ギルメン募集中なんですよねぇ」

「んー。今のところで結構課金しちゃってるんで、移行はちょっと難しいですねぇ……」


 微妙に盛り上がってるのか盛り下がってるのか。


 オオタカさん。いかにも『休憩中』って感じで、身繕いしてるのかなぁ。

 身体のあちこちをクチバシでつついたり、足で頭とか掻いたりを繰り返してる。

 よーく見ると、片足で立ってるのが分かる。

 時々、完全停止して、本当に休んでる感じ。


 ふむふむ。

 観察していると、オオタカさんの……鳥さんの生態? と言うか、暮らしぶり? とかも解ってくるってことかな。


 百聞は一見に如かず。


 よく言われるけど、図鑑で読んで想像するのと、実際に見るのでは違いがあるんだろうなぁ。もちろん、図鑑に書いていないような事も沢山あるだろうね。


「それじゃあ、私はちょっと自転車で公園の中を周ってみますね」

「私は残って永依夢とオオタカ見てますわ」

「ウチが言うのも変ですけど、どうぞ、ごゆっくりと」


 あ。挨拶とか終わったっぽい。

 お父さんは自転車で公園の中を走り回るつもりらしい。

 お母さんはここに残って一緒にオオタカさん観察か。

 カワサキさんも蘭も機材の前に戻った。


 さて。

 オオタカさん、いつ動いてくれるかな?


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

近況へのリンク

https://kakuyomu.jp/users/nrrn/news/16817330656403164811








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る