第6話:ターゲット、ロック・オン!?



 おじさんと一緒にオオタカさんを待ちつつ、池のほとりで朝ごはん。


 お母さんが作ってくれた簡単なお弁当……おにぎり、卵焼き、ウインナー、おしんこ……もぐもぐ。


 食べながら、ふと、おじさんのカメラを見て気付いた。なんか『変なの』が付いてる。おじさんがカメラを動かすと、時々キラっと赤い光が見えた。


 よく見ていると、おじさんは時々、飛んでいる鳥を撮っているんだけど、ファインダーは使わずにカメラの横に付いている『変なの』を見ている。わたしにはファインダーを使うといい、って教えてくれたけど、おじさんはファインダーを使っていない。


 おにぎりを食べ終えて、おじさんに聞いてみる。

「それ、何ですか?」

「ん? ああ、これ? これは『照準器』だよ」

「ショウジュンキ?」


「うん。えっと、ファインダーだと倍率が高すぎて被写体……鳥を追いかけるのが難しいでしょ?」

 こくこく。


「だから、『照準器』を使って、肉眼で追いかけられるようにしているんだよ」

 ほえ? そんな事ができるの?


「最初に、レンズの軸に合わせてセッティングしておけば……ここに赤い点があるでしょ?」

「はい」

 その『照準器』とやらを見せてもらうと、確かに、小さな窓ガラス? の上に赤い点が表示されている。


「この『照準器』で、あそこのハトに赤い点をあわせて……それからファインダーの中、見てみて」

 言われた通りにしてみると……


「わ!」

 『照準器』の赤い点を合わせたハトがちゃんとファインダーの中に見えている。

「慣れると、ファインダー使わずに『照準器』だけで撮影できるのよ。人によっては左目で『照準器』を見ながら、右目でファインダーを見るなんて器用な人もいるし」

「……すごいですね」

 『照準器』、いいな。


 ズームを動かすやり方だと、ズームを動かす時間がかかるし、面倒。

 他の人のカメラも見てみると、同じような『照準器』を付けている人が多いみたい。なるほど、これも鳥撮りさん御用達なのね。


「ちょっと試しにそっちのカメラに付けて使ってみる?」

「え? いいんですか?」

「いいよ、しばらく何も来そうにないし」

「じゃ、じゃあ、お願いしていいですか?」

「はいよ」

 おじさんは『照準器』をカメラから外して、わたしのカメラに取り付けてくれた。


「まず、ファインダーの真ん中に目印になるものを表示させて三脚を固定して、それから照準器のネジを緩めて、赤い点が同じ目印に合ったところでネジを固定してみて」

 言われた通り、手ごろな樹のてっぺんをファインダーの真ん中に。『照準器』の赤い点を同じ場所に合わせて固定。


「できたら、三脚緩めて、照準器で……あそこのハトを狙ってみて」

 はいはーい。

 ターゲット、ロック・オン! みたいな。

 そんでもってズームしたままのファインダーを覗いてみると……

「ぉぉ~~」

 ちょっと感動。


「しばらく使ってていいよ。飛んでる鳥とかも赤い点で追いかければ、うまくいけば撮れるかも」

「はい、ちょっとやってみます」


 『照準器』だけで止まっている別の鳥を撮影して、すぐにプレビューで確認。最初は全然だめだったけど、何度か試しているとコツがわかってきて、少しズレてるけど、画面の中に写っている。


 飛んでる鳥にもチャレンジ。

 ハトさんが時々飛んでいるので、それを狙って写してみると、留まっているものに比べるとズレは大きくて、時々画面からはみ出したりしてるけど、一応、画面に納まっている。うまくいけば、真ん中近くで写ってくれる。ピントが合ってるかは別だけど……


「なるほど、皆さん使われてる訳ですね、これは……ありがとうございました……でも、これもお高いんでしょうね……」

 『照準器』を外して、おじさんに返す。


「ウチが買ったこれはちょっと安めで1万弱だったかな? いいのだと3万ぐらいするらしいけど」

「な、なるほど……」

 やっぱりそれなりにするのね……


「ちなみに、カメラ屋さんでも売ってるけど、実はこれ、拳銃用なんだよね」

「え?」

「ほら、狙いを定める、って意味では、拳銃もカメラも同じでね。だからこいつもモデルガンショップで買ったやつなんよ」

 ちょ、ま。いきなり物騒な……と、思ったけど、そう言えば、ウチのお父さんも趣味がモデルガンだったような!?


 お小遣いの貯金も多少はあるし、ちょうどお年玉の期待もできるけど、他にも欲しいものはいっぱいあるしなあ。どうしたものか。


 この日はこの後、ハイタカさんが現れて一瞬だけ留まってくれたので数枚撮影。でもすぐに飛び去ってしまって、飛んでいるところはまったく撮れなかった。


 ハイタカさんとオオタカさん、そっくりで違いがよくわからない。おじさんみたいに慣れてくると見分けられるようになるのかな?


 じっくり見比べてみたら、オオタカさんはカッコカワイイけど、ハイタカさんはイカツイ感じがするようなしないような。なんとなく。


 この日は、オオタカさんに再び会う事はかなわず、少し公園内を回ってカワセミさんを少し撮る事ができたけど、これもやっぱり飛んでいるところは全く撮れず。


 お昼近くになったので、今日はもう引き上げて帰る事にした。


 雲台もしかりだけど、『照準器』もどうにかしたいところ。


 よし、帰ったらお父さんに相談してみようっ!





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