第1章
俺と義妹、どうすんの?
――ハッキリ、今の状況は健全とはいえないだろう。
俺はリビングで朝食を摂りながら、隣の席に座る義妹を見てそう思った。
先日のようなビクついた雰囲気はなくなったが、むしろ距離感概要に近くなったように感じる。それは義理とはいえ、兄妹としてどうなんだ。という話である。
「どうした涼香ちゃん。今日は一段と機嫌がいいね」
「はい、お父さん! 私、最近たのしいんです!!」
「それはそれは良かった。僕も嬉しいよ」
親父と仲良く言葉を交わし、笑う義妹。
義母も嬉しそうに微笑んでいるが、彼らは真実を知らないのだ。今朝だって義妹と俺が、同じベッドで眠っていたなんて聞いたら、どんな顔をされるか分かったものではない。
だけど、涼香の笑顔が嬉しいのは俺も同じだった。
だからこそ、以前のような健全で仲睦まじい義兄妹に戻らなければ。
「あ、義兄さん! そろそろ学校行かなきゃ!」
「そ、そうだな!」
そう考えていると、どうやら出発の時間になったらしい。
俺は急いでみそ汁を飲み干して、手を合わせた。
「それじゃ、行ってきます!」
「行ってきまーす」
そして、俺たちは学校へ向けて家を出たのだった。
◆
その日の通学路にて。
俺は二人きりのこの時間に、義妹と話し合おうと考えた。
しかし、いざとなると上手いこと言葉が出てこない。どのように伝えれば、彼女に嫌な思いをさせずに元に戻れるだろうか。そうやって手を拱いていると、時間だけが淡々と過ぎていった。
このままでは、問題は明日へ先延ばしにされるだけ。
駄目だ。ここで、一思いに断つのだ。
「なぁ、涼――」
「おー! 今日も朝からご一緒とは、さすがですねぇ!」
「…………間宮、か」
「妹さんも、おはよー!」
「お、おはようございます……!」
そう考えて、義妹に向き直った時だった。
クラスメイトの間宮が、どこからか姿を現わしたのは。彼女はいつものように絡んでくると、視線を涼香の方へと投げて手を振っていた。
義妹はそれを困ったように見て、小さく手を振り返している。
「なんで間宮がこの時間にいるんだよ。野球部の朝練はどうした?」
「今日は久々のオフだから、朝練も自主参加なんだよ」
「……あー、そうなのか」
振り解きながら訊ねると、間宮は意に介した様子なく答えた。
どうやら、今日は間が悪い、というやつらしい。そう思うことにして、話題を別の方向に変えようとしたら――。
「そういや、お兄さんは妹さんに何言おうとしてたのかな?」
「………………」
まるで逃げ道を封じるようにして、間宮がそう言うのだった。
俺は嫌な汗が頬を伝うのを感じながら、咳払いをひとつして答える。
「な、なんでもない……!」
そして、二人よりも先に道を行く。
涼香との話し合いは、後日に延期だ、と考えながら……。
◆
そんな義兄を見ながら、涼香は少し首を傾げる。
いったい、彼は自分に何を言おうとしたのだろうか、と。
「なーんか、怪しいねぇ?」
「怪しい、ですか?」
そう考えていると、口を開いたのは志保だった。
彼女は兄妹を交互に見て、ニヤリと笑う。
そして、
「ねぇ、涼香ちゃん。少し耳を貸してくれない?」
「え……?」
志保は涼香に、なにかを吹き込むのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます