俺と義妹、これから?
「義兄さん、喜んでくれたのかな……?」
――夜、自分の部屋のベッドに横になって。
涼香はそんなことを言いながら、今日の出来事を思い返す。始まりはちょっとした好奇心で、少しばかりの背徳感を覚えはしたけど、結果的に義兄は喜んでくれた。
実際は彼も冷や汗ものだったのだが、素直な義妹は言葉通りに受け取っている。
だから、コスプレ作戦は大成功、と考えていた。
「たまには、あんなことしても……良いのかな?」
涼香はウトウトしながら、そう思う。
義兄のことは心から慕っていた。だからこそ、もっと仲良くなりたいと思っている。今日はもしかしたら、その足掛かりができたのかもしれなかった。
怪我の功名、というには少し乱暴だが。
このようなイベントが、たまにはあっても良いのかもしれない。
「よ、ようし……!」
だったら、善は急げだろう。
涼香は眠気で回らない頭でそう考え、ある決心をしたのだった。
◆
――あの一件から、数日が経過した。
涼香はそれ以降、いつもと変わらぬ様子で毎日を過ごしている。やはりあのような出来事はイレギュラーであって、そう日常的に発生するものではなかった。
だから、俺も完全に気を抜いていたのだ。
「…………涼香さん?」
「なぁに? 義兄さん」
俺が目を覚ますと、そこには義妹の姿があった。
そこまでは日常のこと。部屋の鍵なんてあってないようなものだから、彼女が侵入してくることなんて当たり前だった。それでも、問題はタイミングというやつで……。
「どうして、俺のベッドで一緒に寝てるんですかね?」
「えへへ……」
――時刻は午前五時。
春の麗らかな朝日はすでに昇っているが、一般学生はまだ夢の中の時間帯。そんな中で、いつもより狭いと感じて目を覚ましてみれば、目の前には頬を赤らめて笑う美少女がいた。その美少女こと義妹の涼香は、俺の胸に顔を埋めてこう言うのだ。
「義兄さんの検索履歴に『添い寝』って、あったから!」
「………………」
それはあの日、コスプレ内容以外にも見つけた検索履歴だろうか。
過去の俺はいったい、なんてものを検索しているんだ。
今すぐ、殴ってやりたい。
「えへへ。義兄さん、やっぱり温かいなぁ」
「そ、そうか……」
しかし、過去を恨んでも仕方ない。
いまは目の前の彼女に、可及的速やかに対処しなければならない。
そう、思ったのだが。
「あの……涼――」
「すぅ、すぅ……」
「…………………」
義妹はとても気持ちよさそうに、無防備な寝顔を見せていた。
俺は彼女から漂う心地良い香りに身を任せようとして、思い留まる。ここで変に一線を越えてしまえば、以前のような関係は戻ってこない。そんな確信があった。
だから、いまは耐える。
耐えるしか、ないのだった。
「どうして、こうなった……」
俺は今後のことを憂いながら、思わずそう呟く。
義妹の寝息に、高鳴る鼓動を必死に抑えつけながら……。
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