第20話 微笑むだけ、ヒット
一度注目を浴びると芸能界は動くのが早い。レコード会社は早速専属契約を結びたい と申し出て来た。ここでひとつ問題が生じた。芸名である矢羽美咲で再デビュー出来るか、すると佐原音楽事務所が元所属の大手事務所に掛け合ってくれた。
すると今更売れなくなった芸名なんていらないから好きにどうぞと言ってくれたそうだ。
それを機に毎日のようにラジオと有線放送から(微笑むだけ)の曲が流れる。だがまだテレビで唄った事はない。これもレコード会社の作戦、しかも歌手名を出さない。そうなると世間は騒ぐ「誰が唄っているんだ」と噂が広がる。その翌年 再デビュー曲「微笑むだけ」はヒットチャートに載るようになった。更に(微笑むだけ)の歌手がテレビに生出演すると大々的に宣伝した。興味は惹かれたファンは、その晩テレビに釘付けとなって視聴率が三十三パーセントを超えたという。当時としては視聴率三十パーセントを超えるのは珍しくはなかったが話題となった。矢羽美咲はテレビ画面に現れた。実に三年半ぶりのことだ。
「あっあれは元アイドル歌手の矢羽美咲じゃないか。へぇ歌謡曲唄うんだ。こんなに歌が上手かったのか、苦労したんだろうな」
ヒットしたのは勿論一番嬉しいのだが、矢羽美咲は歌謡曲歌手になって一皮剥けて歌が上手くなったと言われ事が何よりも嬉しかった。
♪「微笑むだけ」
愛しくて 愛しくて 苦しいほど
貴方の存在が大きすぎて
私の存在は貴方にとって なんなのですか
貴方はそれを教えてくれない
いつも貴方は 優しく微笑むだけ
微笑んで 微笑んで そう囁くほど
貴方の心を知りたくなる
その眩しいほどの 瞳の奥には何があるの
貴方はそれを 教えてくれない
いつも貴方は 優しく微笑むだけ
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます