私の所属する事務所は、佐原先生の息子さんが経営している小さな音楽事務所を窓口として公演などを取り行い、他のことはレコード会社に任せた。ＣＤが売れれば著作権の他に先生にも利益がもたらされる。私も少しは恩返しが出来る。そして何よりも嬉しいのが以前と違って月給制ではなく歩合制でCDと出演料の売上げの数％が入ることだ。更に公演料や出演料も勿論リスクもある、売れなければ一円も入ってこない。

　しかし売れれば莫大な金が入って来る。そこは芸能界の怖い所と美味しいところだ。これでまた母に楽をさせてあげられる。苦労した母にも親孝行が出来る。たった一人で父と兄が眠る夕張で私を励ましてくれた母。私の心の支えた、その母を幸せにしたい。

　私は難しいと言われる歌謡曲で返り咲いた。今は歌の下手な可愛いだけのアイドル歌手じゃない。佐原先生の励ましと、どん底に落とされた悔しさをバネに這い上がった。

つづく