1ターン目 吉川(市民)

武藤という男の言う事は、私の思考そのものだった。

だから、手を上げて名乗り出た。

けど、そこから先も、私は薄々気付いていた。


「ありえない」

武藤が、大きな身体を捩らせている。


ありえない?

そんなことない。

これは、必然。


武藤の作戦は、理想論。

王や祈祷師からすれば、本物の市民が3人、名乗り出て【団結】しない保証なんてない。

奴隷からすれば、ここで手を上げなければ目星をつけられてしまう。そこから先の保証がないし、『ほどこし』を受けられればテロリストに成れる。

祈祷師からすれば、ここで手を挙げて、王から『ほどこし』を受けられれば儲け物。

2ターン目で自分の勝ち抜けが確定する。

そんな『ほどこし』を求める者が手を挙げる中、王が手を上げなければ、神が手を上げなければ、自分の【役】が知られてしまう。

今は安全でも、その先の保証がない。



結果、全員が自分を【市民】だと、我こそが【市民】だと、、、



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