【1】花田

手元の『ルール』を読み終えると同時に、自分の眉間に皺が寄るのが分かる。

ビリヤード台の様な長方形の卓には、自分と同じく、他のプレイヤーが豪勢な椅子に腰掛けている。

天井から間の抜けた電子音が響く、そこにある電光掲示板の存在を、皆に知らせる様に。


『追記、冒涜が失敗すると 天罰が下ります』


次に掲示板には座席に付いている者の【名前】が表示されていた。ご丁寧に、どの席に付いている者か、まで座標付きである。

自己紹介の手間が省ける。


手元には黒い封筒がある。他の7人も同様だ。

男4人に、女4人。

一際、図体のデカイ男が「なんなんだよコレは!?」と叫ぶ。掲示板通りで有れば【武藤】という名だろう。喚き続けているが【それどころではない】という空気が、この空間には満ちている。


知った事ではない。

黒い封筒を乱雑に破り、中身を確認する。

「ハガキ」が十枚だ。


俺が誰にどういった『コマンド』を『発動』させるのか、ここに記入して


一際目立つ位置にある祭壇に目をやる。

そこには、巨大なコンクリートの立方体が祀られている。ポストの様に【投函】出来そうな穴が2つ空いていた。


あそこに入れるのだろう。


まさかまさか、こんな事になるなんて、

別段、世の中に未練がなく、明日にでも自害しようとしていた俺が。


皮肉にも、手にした十枚のハガキ全てに【神】の文字があった。

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