第10話 妖精との決着①

妖精を捕まえた後、ロクラスト爺や、シニアと合流した。妖精は縄に縛ると、抵抗せずに私の手のひらに座り込んだ。


 妖精には、支配者の石ルーラー・ロッシュを解除させたので、魔物が私たちに危害を加えることは出来なくなった。


 「ところで妖精さん、お名前はなんというのですか?」


 「……リゼだけど、何か悪い!」


 リゼは手のひらでプンプン怒りながらもそう答えた。どうやら、私に敗北したことが相当悔しかったみたいです。


 「リゼというのですね!では、これからは『リゼ』と呼ばせていただきます!」


 「ふん、勝手にすればいいじゃない」


 リゼは頬を膨らませてそっぽを向いた。ロクラスト爺やとシニアはその様子を微笑ましく見つめている。先の戦闘で体力を消耗しているのに息が乱れていない。二人の強さゆえだろう。


 「では、契約を結びましょうか。ですが、どうやって結ぶのですか?」


 「私が敗北した時点で契約は果たされてるわよ!手の甲を見なさい。それより、この縄解いてくれる!?」


 リゼが御立腹様子なので、私は縄を解いた。解放されたリゼはしばらく宙を舞ってから、私の目の前でピタリと止まった。


 私は自身の両手の甲を確認した。右手には花模様で左右対称のアザのようなものが浮かんでおり、左手にも同様に十字架の模様が浮かんでいた。


 「右手の証は私との契約を示したもので、左手の証は『支配者ザ・ルーラー』、支配者の石ルーラー・ロッシュを譲渡したものよ。その証は森の支配権と自分の物を支配する能力があるわ。必要に応じて役立てなさい!」


 「でも、支配者ルーラーの能力はリゼのものでしょう。貰ってもいいのですか?」


 「別にいいわ!でもね、『支配者ザ・ルーラー』の力は私と魔力のパスが繋がっているから成せるものなの。もし、私がいなくなることがあれば、その力は放棄してね。人間の身で扱える代物じゃないから」


 右手の証によって、リゼとの魔力パスが繋がったので、私の魔力量は急上昇しました。それに、支配者ザ・ルーラーは森だけでなく私の私有物を完全支配できるようです。この能力はいずれ私の計画を手助けしてくれるでしょう。


 「分かりました。では、帰りましょうか。リゼも私の家にお邪魔してください」


 「分かったわ。パートナーだしね!これからよろしく」


 「こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 お互いに改めて挨拶を交わすと、リゼは私の肩に座った。


 「……ですが、どうしましょう。馬車はもう再起不能ですし、どうやって帰ればいいのでしょうか」


 シニアが困った様子で言いった。


 馬車はひきつけの役目をまっとうし、馬は森のどこかに逃げ、ボロボロになってしまった。これでは動かすことは出来ない。だが、それでも帰る方法はある。


 「大丈夫ですよ。何せリゼは変身の魔法が大の得意ですから。馬車に変身してもらえばいいのです!」

 

 「はァァァァァ!?」

 

 「私に変身できたのなら、馬車にだって変身できますよね?」


 「で、できるけど。私の体力が……」

 

 「問題ないようですね。では、リゼに乗って帰りましょう!」

 

 「うそ、無理!そんなのあんまりじゃない!」


 そう言って叫ぶリゼに、私は左手を見せつけました。


 「支配者ザ・ルーラーはリゼにも適用されますよ」


 「あ……。あぁぁぁ!!やっぱり能力返してぇぇ!」


 「遠慮してときます。では、行きましょうか」


 「………はい」


 こうして、私たちは家路をたどりました。

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婚約破棄される闇堕ち乙女はハッピーエンドを掴みたい 不愉快な朝の日 @kuriuru

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