第3話 妖精とのご対面②


 腕を組んで堂々としている妖精は、その小さな翼を広げると、私の肩まで飛んできた。


 「貴方、名前は何?」


 「私はナナクレナ。ナナクレナ・ルスティカーナと申します」


 「ナナクレナって言うのね。ところでナナクレナ、どこで私を呼び出す方法を知ったの?」


 「えっ!?な、なんのことでしょか……」


 私は万が一の為に知らないふりをしました。王子と同じように、あくまで偶然を装うためです。

 

 「……そう。警戒してるのね。でも安心して!私はどんなことがあろうとも貴方に協力するわ!」


 妖精は私の周りを何周か飛び回ると私の目の前で止まって腕を組んでそう言いました。


 王子からの話では、妖精は契約を結んだ相手を裏切ることは絶対にしないそうです。ですが、それは契約を結んでからのこと。契約を結ぶ前に私の死に戻りの能力ちからと私の野望を話したら契約を結んでくれない可能性があるからです。


 「では、私は私の全てを貴方に告げます。そのかわり、必ず私と契約し、協力してください」


 今の私はどんな顔をしていたでしょうか、想像できません。しかし、私は物凄く欲に飢えた、残酷な顔をしていたでしょう。


 「…………」


 妖精はしばらく黙り込んだ。これまでのハイテンションからは打って変わって冷静な表情に変わった。


 「どちらでも構いませんよ。私は貴方が協力しないとしても、私の野望を叶えますから」


 それは心からの言葉だった。私の目的の為には、私の人生、私のすべてを捧げることを誓える。


 「面白いじゃない!さすが500年ぶりに私を見つけた人間だけあるわ!」


 妖精は喜んで宙を飛び回りまった。私をこれまで出会った人間のものさしで測ったのでしょう。そして私を契約するに値するか見定めた。


 「契約してあげるわ!たとえ貴方の行く先が地獄だろうと下界だろうと貴方に付き添うわ」


 下界というワードは初めて聞きましたが、おそらく地獄と同じような場所なのでしょう。契約したらいずれ聞くことにしましょう。


 「ありがとうございます。ですが、契約ってどのようにすればよいのでしょうか?」


 「流石の貴方もそれは知らないようね!ちょっと嬉しいわ!」


 妖精は子供のようにはしゃぐと嬉しそうに宙を飛び回りました。


 王子が契約を結んでいることから、契約に代償や条件がないと思います。


 「契約は一種の主従関係を示すもの。ならばやる事は一つ!私より強いことを証明するのよ!」


 「そ、それは……一体どうすればいいのでしょうか?」


 「だーかーらぁー、貴方が私を倒せばいいの!」


 「えぇ!?」


 想定していた内容を遥かに上回る難易度でした。青年時代の王子は高い魔力量を有していますし、武術にもたけているので妖精に勝てるかもしれませんが、今の私は子供です。勝つのは不可能でしょう。


 「さあ、勝負ゲームをはじめ始めましょう!」


 こうして、妖精との戦闘が始まってしまいました。

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