第1話 婚約のご報告


 さて、ネクロマを殺した事によってシルフィの家がネクロマを拐ったと罪をなすりつける事もでき、中流貴族だったシルフィの家は見事に失脚した。これで一人目のヒロイン、シルフィは脱落しました。


 さて、この後は王子と初対面……ですか。

 何度繰り返してもこの王様との初対面だけは変わらぬ結果となってしまいます。


 おそらく王子は私に全くと言っていいほど興味がないのです。

 

 ですが、だからこそ王子を惹かせたくなるものです。


 現時点では王子は誰に対しても興味を持っていないはずです。ですから、ここで惹かせる事が出来ればベストなのですが……


 経験上、初対面では好感度の変化は発生しないので、いつも通りの対応をするつもりです。


 そうこう自室のベットに転がって考えているうちに、両親が帰ってくる時刻になる。


 私は机の上に置いてある鈴を二、三度カンカンと鳴らすと、シニアが部屋に入ってくる。


 「お呼びでしょうか、お嬢様」


 「ええ、そろそろ父君達が帰ってきます。だから死体処理は済んだかの確認をしようと思った訳です」


 「問題ありません」


 「そうですか。ご苦労様です」


 私はそれだけ伝えると、鈴を机の上に戻した。

 それが合図となり、シニアは部屋から退室した。


 しばらくすると、屋敷の扉が勢いよく開いた。父君達が帰ってきたのでしょう。


 私は部屋から出て、大きな廊下を渡り、階段を降りて玄関へと向かった。

 

 わたしが向かった扉の前では、メイドと執事達が綺麗にニ列に並んで整列をしていた。


 その先には、父君と母君、そして王子がいた。


 だが、そこには思いがけない人物の姿もあった。それは王子の弟のグリダリア・ユーモレスクでした。


 これまでの41回の死に戻りで、弟のグリダリアが来ることは一度もありませんでした。


 そうなると、グリダリアがここにいる理由がわかりません。


 私は戸惑いを悟らせないように、平常心を装い、王子のいる玄関へと向かいました。


 「ナナレリア、この方はこのユーモレスク王国の第3王子、ララベルト・ユーモレスク様よ。ご挨拶して下さいね」


 母君がそう言うと、ララベルトは右手を左胸に当て、私に挨拶をした。


 「お初にお目にかかります。ララベルト・ユーモレスクと申します。このたび、ナナレリア様との婚約が決まり、ご挨拶に参りました」


 41回繰り返しているので、婚約した事は知ってますが、演技でも驚いた様子を装わなければなりません。


 「ほ、本当ですか!母君」

 

 「ええ、本当よ」


 母君に確認をとった後、私は同じように挨拶をして、部屋へと上がる事になりました。ですが、上ろうとした時……


 「紹介がまだでしたね。私はグリダリア展開ユーモレスク、ララベルトの弟です。よろしくお願いします」


 グリダリアが急に挨拶を始めた。それも私に親を殺されたかのような目で睨みながらです。


 間違いありません。グリダリアは、私についての何かを知っているのです。

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