第59話 屋台無事終了
「「「ありがとうございましたー」」……っと」
最後のお客さんを捌き終わり、俺は大きく息を吐いて近くに置いてあった椅子に座り込む。
「さ、じゃあ片付けますか」
「あぁ」
2人はまだ元気そうだ……。一応レベルが上がってるから体力には何の問題も無い筈なんだが……精神的な疲れがある気がする。これが接客業経験の有無ってやつなのかもしれない。
しかも、俺メマの事もずっと探し回ってたからな。それも相まって1番疲れてるんだ。そうに違いない。
「おとーちゃーん……」
「ふぅー……」
俺が物思いにふけていると、汗だくのメマとしょうた君が屋台へと入って来る。
どうやら、しょうた君も店の手伝い、もといメマの手伝いをしてくれてたみたいだ。
「お疲れ様。 ほら」
それに俺は、ずんだソフトクリームを2つ差し出す。
給料、と言うには物足りないかもしれないが、まだ小さいメマ達にはこれで勘弁して欲しい。
「! つめた〜い! おいし〜!!」
「っ! っ!!」
2人は何の文句もなかったのか、それともお腹が減ってたのか夢中になって食べている。
短い時間ではあったが、途切れずにお客さんが訪れていたんだ。本当によくやってくれたよ……ん?
そこで俺はある事に気がつく。
「アレ? エースさんは……」
呟きながら探していると、足元から何か感触を感じ、視線を下にずらす。そこには足の親指の爪ぐらいになった青い物体があった。
「も、もしかして、エースさん……?」
……ぷるっ
足先から小さな振動が伝わって来る。
ま、まさかこんな姿になるまで千切られたのか?
「え、エースさん? 大丈夫なのか?」
……ぷるるっ!
俺が優しく手に抱えて問い掛けると、小さいながらも「大丈夫!」という意思が伝わって来る。
………この屋台で1番頑張ったのは俺なんかじゃなかった。自分の体を物理的に犠牲にまでして、頑張った者が居た。
やっぱアンタ、ウチのエースだよ。
「おとーちゃん! 」
エースさんを優しく指で撫でていると、メマが俺の腕を引く。
「どうした? もう1つ食べたいか?」
「ううん! ほかのおみせにいこ!!」
他の屋台か。やっぱそうだよな。まだメマは祭りを満喫出来てないだろうからな。
でもーー。
「まだ屋台の片付けが終わってないからな〜、それが終わってからでも良いか?」
「あ、うん……」
そう言うと、メマは分かりやすく肩を落とす。
んー。早く行きたいのは分かるんだけどな。流石に比奈と凪さんに片付け任せて、祭りを楽しむのはな。
「良いですよ? 行ってきても?」
「私も、気にしません」
「ん? あー……そうか?」
なら行っても良いか。そう思って、メマの手を取ろうとすると、メマは大きく首を横に振った。
「……みんなでいきたいから、はやくおわらせよ!」
メマは涙目になりながら言い、それにしょうた君が頭を撫でる。
なんか……子供って、いつの間にか成長してんだな。成長を間近で見るとなんか凄く……来るものがある。
俺は涙目になりながら、メマ達に続いて片付けを行うのだった。
「おわった! いこっ!」
「分かった分かった」
エースさんは小さくなってしまったので、ぎゅーさんが作った空間の中に入れ、その中にゴミも入っているので食事をして貰う事して、俺達は皆んなで屋台へと駆り出していた。
早めに終わらせた事が幸いしたのか、まだ屋台は閉まっていない。
じゃ、何から行きますかーっと。
「お疲れ! お疲れ!」
「アンタ達の所のお陰でこっちも繁盛したよ! ありがとね!」
「後半になってから、てんで客足が止まっちまってよ! 助かったぜ!」
ふぁ?
何故かあっという間に屋台の売り物が手元に集まり、俺達は足を止める。
「えっと、ありがとうございます。こ、これはどう言う……?」
「兄ちゃん達の店のお陰でこっちも繁盛してよ、なんとか巻き返す事が出来たから、これはその礼よ!」
「いっぱ〜い!」
な、なるほど。だけど限度がありませんかね?
俺達は人数分の飲み物、多種多様な屋台の食べ物を手に、最後に上がる大きい花火を見る為にゆっくり出来そうな所へ移動する事にした。
「それなら、おれのところがいいとおもう」
「ん? 俺の所?」
何処に行こうか相談していると、しょうた君がなんと名乗り出る。
「うん。おれのところ、とくべつなせきだから」
特別な席……あぁ! 観覧席の事を言ってるのか!
だけどーー
「行けるのか? 俺観覧席使った事ないから分からんけど……人数制限とかあるんじゃね?」
「そうですよね……普通何人分かの券を買って入る所ですから恐らくは……」
「えー、あそこにはいれないのー……」
メマの願いは極力叶えてやりたいが無理なもんは無理だなー、これは。
「あんしんしろ、だいじょうぶだ」
しょうた君は、メマの手を引いて観覧席の方へ向かって行く。
まぁ、もしかして5人分の席なのかもしれないしな。
そう思いながら俺達は、少し心配して後をついていくのだった。
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