第20話 夏はあけぼの、ぷるぷる動く、スライムのごと……スライム???
店が開店してから早くも1週間が経ち、KIROは初めての休日を得ていた。
「あ"ー……なんて綺麗な朝日なんだ。一生出て来なくても良かったのに」
あー、まさかここまで疲れるとは自分でも予想外だった。
俺は窓から見える木々の間から見える光を見て、大きく溜息を吐いた。
店を経営するには色々する事があるらしいというのを、店を開店した日の夜に来た勇樹さんから聞いた俺は、資格やら? 届出を出さなければならないらしく? それに脂汗を流していたのだが……。
『見せてみて下さい……良かったらこれやっておきましょうか?』
比奈が颯爽と俺の仕事を奪い去って行ってしまった。
今は比奈に任せているのだが、比奈は何事も無いようにそれをこなしていた。
……悲しくなんかはないよ? だって俺は工場勤務で慣れてないだけだから。総合商社で働いていたから比奈は出来るんだよ。
「さてと。トイレトイレ〜っと」
一人で納得すると、俺は店の裏に向かった。
扉を開けると、便器の前で用を足そうとチャックを下ろそうと下を見た。
「ひっ!?!?」
瞬間、便器の中から伸びる無数の青色の触手が俺の太もも辺りにからみつく。
あ、死んだ。
と動けずに悟っていると、出て来たのはーー
「あ、え、エースさん!?」
トイレの便器から出て来たのはぷるぷると震え続けているウチのエースさんだった。
あ、焦った……怠け過ぎて幻覚が見えたのかと思った。
…ぷるっ!
俺が安堵し大きく息を吐くと、エースさんが一際大きく震える。そして何故か俺の頭に何らかの意思が伝わってくる。
……アレから一度も会いに来てくれなかった?
あ…やべ。ご、ごめんて。俺にも色々あったのよ。
え? 誰も来ないから凄く心配になったって?
そう言えば、開店してから誰1人としてトイレを使っていなかったか。
まぁ、まだ来たのがトメさんと勇樹さんぐらいなので仕方がないと言えば仕方がないのだが。
え……忘れてたんじゃないかって?
いやいや、エースさん。あまりに忙しいからってエースさんの事、もとい、スライムの事なんて忘れる訳が………
ん……?
待って。スライムってさ………もしかしてさ?
異世界の扉と何か関係あるんじゃね?
そうだよ。前から何か引っ掛かってたけど、そうだ。
スライムはファンタジー定番の魔物、こんなのが地球に存在する訳がない。異世界の扉から魔物として出て来たなら納得出来る。
冷静に自分の考えを整理し、改めてエースさんを見る。
その瞬間。
『異世界の魔物との交流を感知。記録します』
『ステータスボードを表示します』
『地球での初めてのテイム者として記録します。title[従わせる者]を贈与します』
name:椎名 哲平
skill:神力 テイム
title:[神の地に住まいし者][従わせる者]
夏に近づくにつれ、高くなっていく気温。
うっすらと額に浮かぶ汗を拭い、俺は上を見上げた。
そこには手を伸ばせば届く、簡素な木の天井があった。
ーーアァ、良い天気である。
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