第12話 待って。お願いだから。
明日の天気を見て晴れである事を確認した俺達は牛を持ち帰り、取り合えずは飼育小屋を作らずにそのまま外に寝させ、KIROで寝泊まりする事にした。
「んー……」
流石にソファの上では寝た気がしないな。
翌朝、俺は大きく伸びをして起き上がると、隣の席に寝ているメマに視線を移す。
「むにゃむにゃむにゃ…んー……もうたべれない」
時刻はまだ5時半。メマはまだ寝ているようだ……よし。暇だし牛の様子でも見に行くか。
そう思った俺はKIROの扉を静かに開け、牛の元へと向かった。
ンモ〜〜〜〜〜ッ
「おー、おー、もう起きてたのか」
牛は挨拶と言わんばかりに大きく鳴く。場所的に畑の隣に居座っていたので起きていた事に気づかなかったがーー
そこで俺は牛の体を舐める様に見る。
「なんか大きくね?」
牛は昨日と比べると明らかに体を大きくしていた。大きさ的には1回りぐらい大きくなっているだろうか。
俺は新鮮な空気を取り込みながら、頭を回転させた。
いや、可笑しくね? 昨日までは俺が腰をヨシヨシって撫でられるぐらいには可愛げがある図体してたのに、今じゃ俺がヨシヨシされるぐらいの大きさ(?)なんですけど? あ、もしかして飼育小屋の中じゃなくなったからストレスフリーで育っちゃったのかも………あー…………うん、そうに違いない。
「おー、美味しいかー。よく食べるんだぞー」
分からないことを考える程無駄な時間はない。
俺は思考を放棄し、草を貪っている牛の腹を撫でた後、KIROで出たゴミを手に散歩に出掛ける事にした。
昨日、メマは俺と一緒に乳搾りをしたいと言っていたので、それまでの時間潰しを有用に使ったゴミを捨て&散歩である。
「はー、早起きして散歩とか久々だなー」
少し歩けば涼しい空気が身体を通り過ぎ、上を見上げれば木々の間から綺麗な青空が見える。少しでも此処から車を走らせると、この様な景色は見る事は出来ないだろう。
偶にはこういうのも悪くないな。
そんな事を思いながらゴミ捨て場へと着くと、俺はその扉を開いた。ゴミ捨て場は小さな小屋の様になっていて、害獣に荒らされない様になっているのだが、なんせ臭い。
先程とは違い、生ゴミを凝縮したツーンとした臭いが鼻を刺激する。
「此処の匂い、いつまでも苦手だ」
俺は鼻をつまみながらゴミ袋を奥へと投げ込む。
その時。
「ん?」
何か、動いてる?
視界の隅でゴミ袋が動き、音を立てている。
うわ。最悪だ。何か動物紛れ込んでる。
この小屋にもし害獣が入ってしまった場合、気付いた者がどうにかしてそこから出すのがルール。
俺は小屋の中に立てかけられている不審者を追い出す二又の棒を持った。
「はぁ、嫌だ嫌だ。この田舎特有の謎ルール。何で見つけた奴がこんな臭い小屋の中頑張らないといけないんだよ」
不満タラタラで俺は近づく。
まぁ、ハッキリ言えば慣れたもんだ。家から何回ゴミを捨てに来たと思ってる。
俺は棒を構えながら、ゴミ袋を寄せた。
しかし、そこには何も居なかった。あるのは玩具の青色のスライムだけ。
「おうおうおう? それで隠れてるつもりかよ? そんなんじゃ見つけてくださいって言ってる様なもんじゃないか」
俺にとって動物の隠れる場所、移動する場所なんて大体の予想はついている。こんなのお茶の子さいさい。自然と調子に乗ってしまうぜ、ふっ。
しかし、心の中で自身にニヤけながら次のゴミ袋を寄せようとしていた時。
『スライムをテイムしました』
ぷるんっ
何か機械的な声が聞こえると同時に、目の前に居る玩具のスライムが震えている。
待って。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます