第10話 もしかしてウチの土地って凄いのかも

 それから俺はその日の内に、土地を耕し、1回り程大きく枝豆畑を作った。因みにまた『岩塩』が出たのでKIROに保管してはあるが……



「ヤバい、止まらん」

「…っつ!!……っつ!!!」



 畑を作り終わった俺とメマは、枝豆を食べ続けていた。

 しかも手に付いた『岩塩』を舐め取る程に、その枝豆と『岩塩』の相性はバッチリだったのだ。


 早く店に行って枝豆の種を買わなければならないのに。どうしよう、枝豆を茹でる手が止まらない。



「哲平! 朗報だ!!」



 そんな中、源さんがKIROの扉を勢いよく開ける。



 げ、源さん……!! 良い所に! 早く俺達の呪いを解いてくれ!!



「ん……?」



 咄嗟に言葉に出せなかった俺は、源さんに目力で訴えた。しかし、源さんは何を思ったのか開けていた扉を少し閉める。



「す、すまん……ノックして入れば良かったな。まさか哲平にそんな趣味があったとは思わなかったぞ」



 ん? そんな趣味?

 俺は源さんが何を言っているのか理解出来ずに、源さんの視線を追った。するとそこには、いつの間にか俺の指に吸い付いているメマの姿があった。



「と、当然哲平の母さんにも黙っとくから……じ、じゃあ」

「待ってください、誤解なんです」



 幼女趣味という烙印を押される恐怖で、俺は掛かっていた呪いを自力で解き、誤解を解いた。


 因みに、誤解を解くのには20分ぐらい掛かった。孫同然だと言ってた割には信用が無さすぎる気がしたが、それを言ったら誤解が解けない気もしたので黙っていた。






「なんだ、そういう事だったのか。そういう事は先に言え!!」



 源さんは豪快に笑う。

 いや申し訳ない……でも言葉が出なかったんだ。



「よろしくな! メマちゃん!」

「よ、よろしくー……」



 源さんに頭を撫でられながらメマは言葉を返した。

 なんかいつもの元気がないな。まあ、源さんは強面だから少し緊張してるのかも。

 そんな事を思いながら源さん達を眺めていると、源さんは「あ」っと声を上げた。



「そうじゃねぇ!! 朗報なんだよ!!!」

「朗報?」



 こんな田舎で何が朗報だ。どうせ駄菓子屋の近くに自販機が出来たとかだろう? この前もそれで大喜びしたけど、結局は全部売り切れのまま補充されなくなった事を忘れたのか?



「ここの土地にあった草の塊! アレあったろ!!?」

「ん、あったね」



 此処の草刈りで出たやつね。確か源さんが店を作ってくれた後に持ってってくれたよね?



「それがどうしたの?」

「そ、それがだな……い、いや! 来て貰った方がはえー!!」



 俺達はどこか焦る源さんに無理矢理連れられ、KIROを後にするのだった。







 それから数十分、場所的には比奈の家よりも遠く、高い場所にある草原、所謂畜産を行っている高原になっている竜崎さんの家へと俺達は来ていた。


 小さい時は比奈とよく遊びに来ていた覚えがある。それと草の塊に何の関係が……あ、もしかして源さんが草の塊を持って行ったのは此処か? それで草を食べた牛が体調を崩したとか?


 そんな事を思っている内にも、源さんはズンズンと先へと進んで行く。そして飼育小屋の扉を開けると、そこには昔からお世話になっている竜崎のおばちゃんが俺達を迎え入れた。



「おばちゃん、久しぶり」

「…………」



 いつも源さん並みの返事を返してくれる竜崎のおばちゃんが、茫然として此方を見ている。挨拶を返す余裕もないという事なのだろうか。


 俺は改めて姿勢を正す。



「何があったの?」



 聞くと、竜崎のおばちゃんは開いていた口を一層開けた後に、大きく息を吸い込んだ。



「アンタから貰った草を食べてしまった牛達が、キラキラしためちゃくちゃ美味しい牛乳を出す様になったんだよ!!! どういうこったいコレは!!!?」



 え、あ、そうなんだ。取り合えず味見させて貰ってもいい?

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