第10話 大好きな気持ち、伝えます。

「ハァハァ、やっぱりダメ……ダメだよ、日向……んっ、あっ……ホント、やばいって、あんなの……あんっ、んんっ……ハァ、ハァ……」

 ―私を幸せにするって、ずっと一緒に居たいって……そんな事言われたら私も、その……ハァハァ、ハァハァ……


 ―ダメ、止まんない、どうしよう……身体が熱くなって、日向の事しか考えられなくなって、頭の中が全部そう言う妄想で埋まって、幸せで日向をいっぱい感じて……ハァハァハァ……ダメ、これじゃ、私……ダメ、ダメ……ハァハァ……



 ☆


「は、話って……話って何でしょうか、おばさん? やっぱり、その……一緒に住むの、ダメですか? やっぱり高校生が、一緒に住むってのは、その……」


「あぁ、違う違うそんなんじゃない! 一緒に住むのはお義母さんも賛成だよ、亜理紗は絶対、そっちの方が嬉しいだろうし! まあまあそんな緊張しないで、日向君! いや~、お話ってのはさっきの続きだから……正直お義母さん、痺れたな。アレは予想できても、まさか日向君があそこまで……いや~、お義母さん痺れちゃった!」

 話があるといわれてビクついていた俺に、柊木のお母さんはパンパンと嬉しそうにに膝を叩きながら、そう言う。

 その表情は、聖母みたいなあの表情じゃなくて、いつもの柊木母の、陽気でハッピーな表情で……え、さっき?


「さっき? いつですか?」


「もう照れちゃって~、日向君! すごいこと言ってたよ~、日向君! さっきの言葉、大分お義母さんには響いちゃったな! 亜理紗にも絶対響いてる、すっごい情熱的で、ぼわ~って……く~、痺れたよ、日向君!!!」


「え、情熱的、痺れる……そ、そんな変なこと言ってました、俺? なんか、そんなやばいこと言ってたんですか、俺?」


「うんうん、言ってたよ! あ、もしかして無意識だったの? 無意識だったらそれはそれで凄いな~、亜理紗愛されすぎでしょ、日向君に! も~、あんな情熱的なセリフ、日向君無意識で言ってたの~? いや~、本当にプロポーズみたいで、お義母さんまでドキドキしたんだけどな~!」


「ぷ、プロ……そそそんなこと言ってたんですか、俺? そんな、プロポーズみたいな……お、俺そんな事言ってたんですか!?」


「うん、言ってたよ~! アハハ、本当に無意識なんだ! それはそれは~、お義母さんもびっくりしちゃうな~!」

 そう言って柊木のお母さんはクスクスニヤニヤ嬉しそうに笑う。

 ……本当に全然覚えてないんだけど、俺そんな事言ったの? 


 プロポーズとか、情熱的とか……そ、そんなやばいこと言ってたの、俺? そんな大胆で、やばい……で、でもこれはチャンスか。逆にチャンスだ、俺が心を固める、いいチャンスだ。


 グッと制服のネクタイを締め直し、お母さんの方を向く。

「ふふっ、本当に日向君も亜理紗もお互い事大好き……ってあれ? どうかした、日向君? そんな真剣な表情で、お義母さん照れちゃうよ~?」


「すみません、でも真剣な話ですから。亜理紗さんとの真剣な話ですから……だから、そのお母さんにもちゃんと聞いてほしくて」


「ん~、真剣……ふふっ、わかった。聞くよ、日向君。日向君の話、お義母さんに聞かせて。亜理紗と日向君の話、聞かせて欲しい」

 俺の顔を見て、からかっていたお母さんの顔がまた真剣に戻る。


 ありがとうございます、お母さん……本当に真剣に、聞いてもらいたい話ですから。

「はい、ありがとうございます。その、俺、鮫島日向は、その……今日、亜理紗さんに告白しようと思ってます。今日、亜理紗に俺の気持ち、伝えたいと思ってます」


「ふんふん、ふ~ん……え、今日? 今日伝えるの、日向君!」


「はい、今日です。一緒に住む前に、自分の気持ち、正直にしておきたくて。一緒に住んで、色々うやむやになる前に……俺の大好きな気持ち、亜理紗に伝えたくて」

 一緒に住んだら、色々大変な出来事も、そう言うのしたくなる出来事も……その逆も、絶対に起こってくる。

 だからはっきりしておきたい、俺の気持ちを伝えておきたい……俺と亜理紗が家族になってしまう前に、俺は亜理紗の恋人になりたい。


「あら、そうなの! ふふっ、そう言う事ならお義母さん応援しちゃうよ! ていうか遅すぎる感じだし~、日向君! お義母さんやきもきしてたんだよ、二人の関係に! 全然付き合わないから、逆に困ってたの! だから、日向君がそんな風に覚悟決めてくれたなら嬉しい! 頑張ってね、日向君! 亜理紗の事、幸せにしてあげてね!」

 お母さんはそう言って、ニコニコ俺を送り出してくれる……ふふっ、ありがたいな、本当に。お母さんにそう言ってもらえるの、ありがたいな。


「ありがとうございます、お母さん。もしダメ、って言われたらどうしようかちょっと考えてました」


「ダメなんていうわけないじゃん、日向君の事は応援するよ~! だって亜理紗、日向君とあってから本当に楽しそうなんだもん! 日向、日向って……本当に幸せで、楽しそうなんだもん!!! 亜理紗は日向君のおかげで、幸せに高校生活過ごせてるんだよ? だから、そんな日向君の告白、お義母さんが応援しないわけないでしょ、も~! 何言ってるんだ~、日向君は! むしろもっと早く告白してほしかった!」


「ふふっ、ありがとうございます……そんな褒められると、照れちゃいますね」


「ふふっ、本当の事だからね~! 私としても日向君と亜理紗が一緒になってくれると嬉しいんだから。日向君なら亜理紗の事、絶対に幸せにしてくれるし! 毎日楽しく過ごしてくれるし、危険な目にも合わせないだろうし、私が居なくても亜理紗は幸せに、楽しく過ごせる……だからね!」

 そう言うと、お母さんはキリッと俺の方に目をやる。

 その目はいつものようにからかっているようにも、娘の事を応援する母親の目にも見えて。


「うちの亜理紗をよろしくね、日向君! ビビッて告白しない、なんてこと許さないからね! 絶対に告白して、亜理紗の彼氏になってくれ!!! 亜理紗の事幸せにしてくれよ、日向君!!!」


「……ありがとうございます、お母さん!!! 絶対に告白します、亜理紗の事……亜理紗の事、絶対に幸せにして見せます!!!」

 お義母さんに向かってそう誓う。

 絶対に今日告白して、それで……亜理紗と一緒に、幸せになるんだ!




 ~~~

「流石柊木、相変わらず料理上手! すっごい美味しいよ、柊木の料理!!!」


「えへへ、ありがと鮫島……えへへ、嬉しいな、日向がそんなに褒めてくれて……んっ、あっ……んんっ! 嬉しいな、ホント……えへへ」


「だって本当に美味しい……って大丈夫? 大丈夫、柊木?」


「うん、大丈夫……大丈夫だよ、鮫島……あんっ……」


「……」



 ★★★

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