第2話 共に

そう…研究所に自分はいたのだ。そしてそこで倒れた。じゃあ、いま自分はどこにいる。何をしている!ふと明るい光が目に入ってくる。どうやら自分は生きているようだ。何か温かく地面が柔らかい、まるで布団に入っているようだ…。

「入ってるなぁ…布団。」

自分は瓦礫の山の手前にあったものであろうベットで寝ていた。瓦礫の山の手前からはズレていたがおそらくそうだろう。昨日の出来事は何だったんだ。そう思いながら早く帰ろうとするが、入ってきた場所は瓦礫で塞がれており出られない…。

広間をうろうろとしていると、ふと後ろか肩にてを置かれた。反射的に回し蹴りを仕掛けたが相手を見てギリギリで止めた。

「人間…?」

間違いなく昨日見た人形のヤツだった。ソレは自分もとい、俺の手を掴んである部屋まで連れてきた。壁には本棚がありソレは本棚の本の一冊を押し込む、すると。ゴゴゴ…と音がして上へ上がる階段が出てきた。ソレは何も話さず俺の手を掴んだまま暗い階段を登っていく。俺も何も言わずソレの後ろに大人しくついて行く。階段を登りきったところは地上だった。あの研究所は地下まであったらしく、自分たちは地上にガラス張りをした、そのまま階を挟まず直接地下に太陽光が入る場所にいたらしい。こいつはゾンビなのだろうか、しかし人を襲わないゾンビなど聞いたことが無い、なにより見たところどこも腐っておらずゾンビの特徴を持っていない。階段を登っているとき、その質問をしたが返事は一切なかった。

ソレは早く帰らないのか、と言うような目でこちらを見つめている。俺はため息をつき、ソレのてを掴んで言った。

「お前も来い。」

ソレは一瞬目を見開き驚いた顔をしたが従順だったため、ソレを車の助手席に乗せ俺は依頼主の元へ向かった。

ソレは色白の肌にアメジストより濃い黒に近い紫の腰までのログヘアで、日光に当たるとアメジストのような紫に見えた。目は正面から見て左がアクアマリン色で右はわかりやすく表現すると血のような赤色だった。胸部が大きいのでおそらく女だと推測する。車から顔を出したので、危ないからやめろ。と言ったら顔を引っ込めたので言葉は伝わっているのだろう。街の中に入り依頼主の家前に車をとめ、ソレには車で待つように言い依頼主のところへ行きパパッと依頼を完了したことを伝え、小型カメラで撮った内容を渡し、報酬を受け取る。そのまま車へ戻りソレと共に自分の家に向かう。コイツどうしようかなぁ…などと思ったが、自分の中ではこいつをどうするかはたぶんはじめから決まっていた。

家に着いてソレを車から下ろし手を引いて風呂へ連れて行く。

「お前、風呂の入り方わかるか?」

ソレは無言でシャワーの前まで行きレバーを引いて冷水を浴びた。そして水を出したままにしてこちらへ歩いてきて顔を見つめてきた。

「いや、出来てないからな。まず服脱げよ、体洗えないだろ。」

ソレは頷いて服を脱ぎ始めた。風呂のイスに座れと言ったら大人しく座ったので頭にシャンプーをつけて洗ってやる。自分は服を着たままで洗ってやったので昔飼ってた犬を洗う気持ちになってきた。流石に体は自分で洗わせ先に風呂から出しタオルで拭いておけと言っておいた。俺自身も昨日の返り血を少し浴びているので流しておきたいのだ。風呂を出ると洗面所でボサボサの髪の上にタオルを載せているソレと目があった。

「…ボッサボサだな。あー…服がねぇのか…。」

昔の女が置いてったやつがあった気がすると思いクローゼットを覗く、が処分したことを思い出し大きめのパーカーを着せて服を買いに行くことにした。髪梳かさないと流石に外に出せないため髪を軽く梳いて乾かしてやり車に乗せ、目的の店へ向かった。

目的の店へ着き、店の中へ入る。ここはゾンビ狩りをする人ならほとんど知っているゾンビ装備専門店だ。俺が入るとすぐに店員が出てきた。

「あーーー!ファイさんじゃない!武器入れ買いに来てくれたの??」

桜色のツインテールにそれより少し濃い目の色。

「チェリー。…静かにしてくれ、頭に響くんだよその声。あと武器入れは買わん。」

「えぇー!?響くなんて酷いなぁ!…?武器入れじゃないの?じゃあ何しに…」

チェリーが俺の後ろに着いてきていたソレに気づいて一瞬固まって叫び始めた。

「…女の子…!?ファイが!?連れて!?きた!?おばあちゃーーーーん!ファイが!」

「あらまぁ!」

来るの早。まあいい。

「コイツの下着から装備まで全部お願いしたいんだ。」

「…下着…?なんで?」

チェリーがそう言った。

「研究所で拾ったんだよコイツ。」

「ふーん…。」

チェリーが俺の後ろにいるソレに近づくソレは少しチェリーから距離を取った。チェリーは

「まぁいっか!りょうかーい!」

と言ってソレを連れて行った。ソレはチェリーに腕を捕まれ半ば強制的に店の奥へ引きずられて行った。残された俺におばあちゃんが話しかけてきた。

「チェリーったら嬉しそうねぇ…。あの紫の子、名前なんていうの?」

「名前…?考えたこともなかったです。あとで聞いてみましょうか、何も答えないので望みは薄いですが。」

「ファーーーイ!こっち来てーー!」

店の奥からチェリーの声が聞こえる。おばあちゃんは新しく来た客の相手をしていたので一礼してからチェリーの元へ向かう。

「どうし…た?」

そこにはおとぎ話のお姫様のような服を着せられたソレがいた。心なしか目が助けてくれと訴えかけてきている気がする。

「私の趣味を詰め込んてみたんだ。」

「そんなレースの付いた服でどうやって戦うんだ。スカートのレースが多すぎるだろ。」

「あー。やっぱり?そうだよねぇ。」

「本人に選ばしてやったらいいんじゃないか?」

「それもそうかぁ。じゃあれっちゃん!こっから好きなの選んでー」

ソレはコクリと頷い…俺は思わず口に出す。

「れっちゃん…?」

チェリーが答える。

「そうだよ?れっちゃん。」

「ソイツの名前…?つけたのか?」

「うん!名前レツだっていうから!」

「話したのか?」

「そうだけど。どうしたの?」

俺はソレ…いや、レツの方を見る。レツはチェリーに言われた中から服を選んでいる。

「アイツ、話せたのか。」

そんなことをチェリーと話しているとレツが選んだ服を着てこっちに来た。それを見たチェリーがレツに抱きつきながら言った。

「露出多めなのいいね。この子もらっていい?」

「やらねぇよ。ふざけんな、そしてセクハラすんな。困ってるだろ。」

これに合わせて上着作ってもらうかぁ…

「チェリー、この服に合うように上に着るもの作れるか?これから行動すること考えるとカラフルなのは嫌だから俺と似たような色合いで。」

「できるけどー。三十分くらいかかるからそこらへんでくつろいでてー。」

チェリーが店の更に奥の部屋に入っていったので俺とレツはおいてあった椅子に座った。俺は言った。

「話せたのか。」

「…すいません。沢山の質問無視していたわけではなくて、…人と話すのが久しぶりで声が出なくて…。」

「いや、謝らなくていい責めているわけではない。」

それからレツは俺のした質問に答えてくれた。自分は気づいたらあそこにいて記憶はないが、ゾンビではないらしい。食事はそこらへんの木の実などを拾って食べていたことなど。

「おまえの顔にある俺から見て右のその04って数字は何だ?」

「私もわからないんです。すいません…。そういえば貴方はなぜ私をここに連れてきたんですか?」

「昨日命を助けられたから、それに研究所なんかに住めるならそこそこの実力の持ち主だろうからな。俺とゾンビを狩らせようと思って。」

「え!許可なしに連れてきたの!?しかも勝手に一緒にゾンビを狩る前提とか!?こわーい!」

「…チェリー、人聞きの悪いこと言うな。」

いつの間にか作業を終えたチェリーがいたらしい。まぁ、チェリーの言うことも理解できないことはない。俺のしようとしていたことがグレーゾーンなことくらい俺もわかっている。俺はいった。

「喋れるなら意見は聞くさ。」

「どうせすることも無いからな構わない。」

とレツは言った。

俺の話を無視して、はい、これ。といってチェリーはレツに服を渡していた。

「どうよファイ!似合ってない!?」

チェリーが新しい服を着たレツを見せて言ってきた。俺は似合ってる似合ってる、といいあと必要なものを考えた。

「あ、コイツ武器持ってな…」

「持ってるから大丈夫だよ。」

とレツが俺の言葉を遮っていった。そしてどこかからズルッと拳銃と大きめの斧を出した。そして太腿にこれもまたどこかから出したレッグホルスターをつけて拳銃をしまった。

「なら用事は終わりだ。金は適当に引いといてくれ。ありがとな。」

そう言ってチェリーの店からでて車に乗る。今日は疲れた。早く家に帰って寝たい。

「帰るのか?」

レツが聞いてきた。俺は、あぁ。と言って車を発車させた。

家に着いて俺はベッドが一つしかないことを思い出し葛藤の末自分が床で寝ると言ったがレツも自分が床で寝ると言い出したので言い争いの末、二人でベッドを使うことになった…。


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