暗殺1
『スリー、ツー、ワン。スタート!!』
室内専用サバゲーフィールド 市街地。
薄暗く赤や青とライトが点滅。市街地にしては何処かホラーゲームの街を思わせる。アナウンスに合わせ無数の足音。階段を掛け上がり、障害物に身を潜め。我先にと駆け出し前線を切る。
脚力に自信がある勝はスタート同時に突っ込み即被弾。手を上げ、hit~と言いながら退場。それが楽しいのか。一ゲーム目が終わり合流すると満面の笑み。どうやら和が戻ったことで上機嫌らしい。
「お~よしよし。今日はよく走るね。俺が居なくて寂しかった?」
ワシャワシャと勝の髪の毛を乱し、ギューと抱き締めると「ワン」と何故か犬になりきっている。
「そっかそっか。俺が拗ねて皆も拗ねてストレスヤバイのね。じゃあ、今日は発散しようか」
二人の変なやり取りに、なんだこれは、と少し離れた場所でスナイパーライフルを担いでいる兼二。その隣でヤンキー座りしている京一。二人は顔を合わせ、キモいな、と兼二の独り言に京一は頷く。
和が帰ってきたのは数時間前。
早朝四時頃に何もなかったように帰宅し寝ている京一をこっそり弄り和んでいたときに勝が出くわす。何処いってたんだ、と聞いても答えてはくれず。久しぶりに皆で遊ぼうか、と今に当たる。目的は不明。話も無し。
『なんで旦那。自分らをこんなところに呼んだんすかね』
スマホで打ち込み、兼二に見せる。チラリと画面を見ると兼二は京一を足で蹴り、京一はスマホをしまう。
「先程のチームでスパイ戦やります。復活は二十回まで。無くなったら殲滅戦。準備お願いします」
人数が多く障害物があり、見づらいからこそスリルがあるのではと意見多数。
スパイ戦とは、各チームに二人ずつスパイがおり、スパイ含め殲滅したチームが勝ち。
四人は同じチーム。スパイを決めます、と背を向け手出す。この時に手を触られるとスパイ確定。四人は顔を合わせるもつるむことなく開始合図――スタート。
勝はスタートの声に先手を切る。それにくっつくように京一が駆け出し、兼二も続く。角部屋に入り、しゃがんだまま周囲を警戒。振り返り様、なんでいんだよ、と銃を向けると京一と兼二は一斉に手を上げる。少し遅れて和が合流し、互いを睨むよう見つめ合う。
スパイが活動するのは三分後。
その間、動けるなら動きたいが壁で弾かれるBB弾。近場から聞こえるhitの声に駆け付けたいがそうもいかない。普通の殲滅戦ならまだしもスパイとなると――。
「カバーするから誰か撃て」
勝が時計で示すと二時辺り。しかし、誰も動かない。京一は勝の背中を突っつき、勝は兼二を銃床で。和はそんな三人を楽しそうに見て左右に揺れる。
和の普段しない行動に勝が気づき、死んでくるわ、とわざと当たりに行く。
カチッ――
数取器が八から九へ。すると、後ろから数取器に手を伸ばす見慣れた手に、ストーカーか、と振り向き様に和に声かけた。
「あらま、俺。疑われてんの」
トイガンのハンドガンを手にヘラヘラ笑う。長々と立ち話をしていると――三分経過。その言葉に一斉に銃を向け見つめ合う。
「スパイでしょ」
「ちげーよ。お前だろ」
「え、違う違う。やだなーまさるぅ」
「キモい」
「えーワンワンしてたくせにぃって。馴れ馴れしくやってさ。突然撃つ奴最低だよね」
「やっぱ、テ――」
和は突然勝の腕を掴み、勝を近くにあるドラム缶に突き飛ばす。二人の間をBB弾が通り過ぎ、フェンスに当たった跳弾を和は屈んで避けると勝の元へ。
「ほれ、無実。考えすぎだよ、勝」
ワシャワシャと髪の毛を乱され、抱きつかれ、壮年にしては目を覆いたくなる若々しいジャレつき方。
「大好き~勝」
「やめろ、勝負中に」
振りはほどこうとするも出来ず無視。
「結婚しよ」
無言。
「じゃあ、兼ちゃんと京ちゃんどっちとデートしたい?」
「(真面目な顔で)……兼二」
そっか。残念な溜め息を漏らすと勝の背中に何かが強く当たる。
「(とてつもなく低い声で)俺じゃないんだ。へぇーじゃあ死んで」
その声に“地雷踏んだ”と思うと時すでに遅し、数取りのカウントが二十になるまで殺され続け、最後に満面の笑みでバイバイ。至近距離での発砲は危険》。hit扱いになるが勝は言わなかった。
「遊びでも痛いよ。降参しな」
「撃てるなら撃ってみろよ」
「悪い子、度胸試しね。はいはい、分かったよ。(口で)バン」
「情な。(腕を上げ)hit」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます