ピエロ殺人事件3
「勝がこんなに優しい子なんて。俺、嬉しいわ」
抱き上げ助ける姿に感動し、和は嘘泣きしながら店員らとバックヤードへ。殺人ピエロとは出会うこともなく階段を降り、裏口から外に出るも二人の胸はモヤつく。顔合わせ消化不良なんだよな、と。
「そこの店員。コイツ頼むわ」と勝。
「え、ちょ……お客様!!」
店員の止めに入る声を無視。見かねた和が、俺らは警察なのよ、と偽装警察手帳を見せた。
閑散としたショッピングモール内。
何処からか鼻歌とバカにする声。
「ふんふんふん。あー誰か来ないかなぁ。もしもーしすみませーん。誰かいませんかぁ。警察とか来てますかぁ~アハハハハッ」
それを頼りに二つの足音が近づく。
一階から三階全体を見渡せる大広場。普段はイベントやミニライブと人がよく集う場所だが今は数体の死体が積み重なり、血溜まり広がる地獄のステージ。
ステージ上にサーカスで見かける白塗りをしたカラフルなアフロヘアーの派手な服のピエロ。全身に血を浴び照り光り、差し込む太陽の光りに顔を向け一人妄想か。拍手喝采を受けているかのように手を振りお辞儀。ありがとう、ありがとう、と目に見えない客に感謝を示すとダークかつ不気味な洋楽が鳴った。
ハーモニカ。重低音刻む奇抜なリズム。
それはピエロにピッタリな曲だった。
――笑顔でいれば何でもうまくいく
辛かったら笑えばいい――
歌詞はピエロ嫌いな勝に暗示をかけ、和も勝に魔法をかける。
――なぁ、和。あの糞ピエロ。
地獄に叩き落としていいか――
曲に合わせアタッシュケースを持ち、申し訳なさそうに殺人ピエロの前に現れる。
「これはこれは殺人ピエロさん。すみませんが俺の
シルクハットを深く被り目元を隠す和。ツバを触り、周囲に散乱する血や死体にビビるふり。妙な奴が来たな、と殺人ピエロは不思議そうに首を傾げると興味が湧いたのかステージから降りた。
「おじさん、殺されたいの?」
血濡れたナイフを構え早足で詰め寄る。それに和は逃げるように少し退く。だが、オーバーな身ぶり手振り大道芸人らしく粘る。
「いやいや、とんでもない。ほら、映画とかあるじゃない。(指曲げながら)子供を食らうピエロ、指食うピエロ、めっちゃ悪役な奴とか。
殺人に興味あり、そう匂わせる発言に殺人ピエロはニカッと笑う。
「もしかして、オレのファン?」
デレ~っと嬉しそうに近づき、和の手を取りベタな握手。和も嬉しそうに小さく跳ね喜ぶ。
「あぁ、そ~なんですよ。殺人ピエロやチェーンソーの奴とか、13日のなんちゃらとか“殺しやってみた”犯罪専門動画で観ました。ねぇ、
和の言葉に
「なぁに、可愛い顔して俺のこと誘ってる?」
裏業界に乏しそうで実は詳しい二人。このピエロのことは少し前から知っている。
報復、裏記事ネタと二人は自殺サイトやアプリをよく見ていた。それ経由で依頼を受けることもあったが、単にどんなバカがいるのか見るのが好きなだけ。
勝の“ピエロに友達を殺された”。
それがなければ本来は見逃すはずだった。
「ねぇ、グラスさん。殺す時、どんなときが一番愉しいかな。おじさんはね、『死にたくない』とか『許してくれ』とか絶望な顔して言われる時。あの顔はたまんないよ。
和は妙に明るく振る舞う姿に一歩退く。怯えた表情に、いいねぇ、と呟くと和は一歩踏み出す。すると――「殺した人間と同じことを殺した側にする。それ、都市伝説や噂じゃないのかよ」。
震えた声で投げやりな言葉。
それに和はニヤリと歯を見せる。
「へぇー、裏の人間には多少名は知られてるのか。それはそれは嬉しいねぇ。もっと知名度あげた方が借金まみれにはならなそうかな。今ね、皆に払えって催促かけられて怖いのよ」
グラスを見てハッと突然目を丸くすると驚いた表情でグラスの後ろを指差す。みーつーけた、そう和は口パクで言うとグラスの肩に手が乗った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます