大量

エリー.ファー

大量

 怯えた表情で何を思う。

 ミスターウェンズデイパーティ。

 もう、幾つも死体の山ができあがっている。

 すべて、君のせいさ。

 ミスターウェンズデイパーティ。

 哀れにも、君に勝負を挑み、殺され。しかし、それでも一番になりたいと思い続けた者たちの末路が巣を作っている。

 いつか、答えにたどり着くはずだと夢を見ていた怠け者たちの地獄。

 作り出したのは、君さ。

 ミスターウェンズデイパーティ。

 血塗られた手で握った幸福に、哲学を込めるのは余りにも酷だ。

 常に、世界は残酷だ。

 君のような存在がそこかしこに現れるのだからな。

 そう。

 そのためのヒーローさ。

 ヒロインを助けて、地獄を変え、生の喜びを感じさせる。

 まるで、作り物の感動を押し付けるセールスマンの如く。

 笑ってしまうよ。

 僕はね。

 ついつい、笑ってしまうのさ。

 人間という生き物の限界と、想像の自由さと、その差に垣間見える才能の現実的な問題をね。

 酷く退屈な真夜中を、いかに美しく塗りつぶして見せるかが、すべてのはずだ。

 そうだろう。

 なぁ。

 ミスターウェンズデイパーティ。

 水曜日だけが、君を光り輝かせるわけではないんだ。

 いつだって、君と僕で作り上げた日常には光が宿っていて、地球の反対側の叫び声だって聞こえてしまう。

 頼むよ。

 これは、お願いだ。

 依頼でも、指示でもない。

 可能なら、この願いを聞き届けて欲しい。

 もしも。

 人間を愛しているなら。

 すべてを犠牲にしてはくれないだろうか。

 些末な問題だと切り捨てる前に、ドラマがあることを知って欲しいのさ。

 打ち間違いの言葉では、何も伝わらないなんて。

 中身のない言葉では、誰の心にも届かないなんて。

 穴の中で一人叫んでいた夜が、どこにも繋がっていなかったなんて。

 誰も、そうは思いたくないのさ。

 分かるだろう。

 だって。

 君がその最たる例じゃないか。

 なぁ。

 ミスターウェンズデイパーティ。

 真実に到達する前に失った命から立ち上る煙には、いつだって天使の香りがまとわりつく。死神と同じ道を辿るなら、ロマンあふれるスポーツカーを供えなければならない。

 撃ち尽くして。

 聞こえなくなってからが本番だろう。

 殺し合ってこそ見えてくる路地裏の真夜中だろう。

 違うか。

 いや、何もかも違うように見えるだけだ。

 勘違いをするな、そう言いたげな目だな。

 忘れるなよ。

 復讐から始まる物語には、揺れ動く魂が三つ必要だ。

 犠牲者を弔うために殺し屋を続けるなら諦めろ。

 君も分かっているはずだ。

 続けているだけでは、意味がない。

 意味を生み出すのは。

 魂の輝きだけだよ。

 そうだろう。

 ミスターウェンズデイパーティ。

 掴みどころのない罪に苛まれるよりも、数えた罪の重さを知るために生きていく方が救済にはなるだろう。

 悪魔の声も。

 天使の喚き声も。

 砕けた頭蓋骨によって完成するものなのだ。

 狂ってからが本番と言える。

 奏でられた数値には、私と君の間にある問が並んでいる。

 間違えてはならない。

 何もかも最初からになってしまうから。

 祈ってはならない。

 何もかも幻になってしまうから。

 抱えてはならない。

 何もかも重荷になるから。

 忘れるなよ。

 この言葉だけを胸に生きろ。

 生き抜くんだ。

 ミスターウェンズデイパーティ。




「死に美学など存在しないのだ」

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大量 エリー.ファー @eri-far-

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