第13話
彼女はやらなくていいならやりたくはない、と言っていた。
だから俺はやらなくていいと肯定するために、藤宮が勇者の傀儡にならないで済むように、全力の拒絶ムーブをもってこの世界で立ち回ることにしたわけだ。
大勢の人々が藤宮イオリに手を出そうとしようが、たった一人でも藤宮依織の味方がいれば何かが変わるはずだ。
「性処理制度は勇者様が決めたことだよ。……こわくないの?」
「あぁ。少なくともこうして強がれる程度には、その勇者とやらのことは全然」
「……マジ、すごいね。信じらんないや」
そもそも勇者と名乗っている変人が誰なのかを知らないから恐れようがないのだが、そこは一旦黙っておくとして。
かなり手荒な方法を取った代償なのか、教室の外がやけに騒がしい。
おい早く変われ、藤宮とヤラせろ、等々数多のご意見が壁の向こうから飛び込んでくる。
「長い、ってみんな怒ってるよ」
「鍵閉めてるのにドアぶち破ってきそうな勢いだな……」
カッコつけてこの方法を実践したはいいが、どうやら予想以上に作戦の継続可能時間が短かったらしい。
このままではマズい。
藤宮を安心させるためにドヤ顔してたのに、さっそく狼狽し始めてしまった。
さて、どうするか。
実際にこの教室に押し入られた場合を想定すると、恐らく俺はボコボコに伸されて、藤宮は欲望が暴走した男子たちによって蹂躙されてしまう可能性が非常に高い。
その行為がこの世界で許されるかどうかではなく、事実として藤宮が襲われてしまう点を考えてまず容認できないのだ。
ゆえに彼女を別の方法で守らなければいけないわけだが、困ったことに何も思いつかない。
別の道を模索するだけの話であるとかなんとかさっき思ってたばかりなのに、ここで集団の圧力に負けてしまってはとても格好がつかない。
「仮病……はダメだな。奉仕係として活動してるって事実がないと、出席の補填にならない……ぐぬぬ」
「……ねぇ、柏城くん」
「いっそ完全なる籠城を──あっ。な、なに?」
声に反応して顔を上げると、なぜか藤宮はイタズラめいた笑みを浮かべていた。
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