第九楽章
生まれた時から全てが決まっていたような気さえする。
私の人生は何だったのだろうか。
復讐。
結果としてはそれだけしか無かった様にも思える。
私がとても幼い頃、両親はとても険悪だった。
小学生に上がる頃には両親はもう離婚していて、私は母に引取られて育った。
その後も父とは毎週のように会い、それから何年か後に父は再婚をして子供、私の腹違いの妹が出来た。
妹とは一緒に生活していなかったもののとても仲の良い関係を築いた。
年月が経ち、妹が大学に入学して間も無い頃、私は妹から相談を受けた。
悪いサークル連中に付き纏われるという内容だったが私は気にも留めず、適当にあしらってしまった。数日後、妹は遺体となって発見された。妹に付き纏っていたサークルの男がレイプの上、殺したと言う。その後、警察は調査の上、そのサークルをレイプ集団として次々とメンバー達を逮捕していった。
私はその経過を絵空事のように眺めながら、妹を見殺しにしてしまったような罪悪感とレイプや犯罪に対する憎悪を胸の内に仕舞い込み、逃げるようにして日本を離れて留学をした。
留学し、勉強をし、その結果、私は何の因果か米国の民間企業でもある特殊な諜報機関に勤める事となった。
いろいろな事件の裏の情報やその詳細を入手する事が出来る立場となってしまった私は当然の如く、妹の事件、大学レイプサークル事件の詳細を入手した。
そのサークルはもともと別々の大学生のそれも金持ち音楽家の息子達4人が結託し、自分達の欲求を満たす道楽の為だけにつくられたレイプ斡旋組織だったのである。
警察はその4人を割り出していたのにも関わらず、主犯4人の親から警察上層部への高額の賄賂引渡しに効果があったのか主犯4人についてはお咎め無しでその件はそのまま闇に葬らされたという事であった。
私はその真相を知り憤りを感じた。
私はその主犯、4人への復讐を誓い、日本へと戻ってきた。
私は日本へ戻ってきてから緻密な計画を練り上げ一つずつ実行に移していった。
全てが順調に進み、3人を死へと導いた。
そして、今、最後の一人、4人の主犯の仲でも中心人物と目されていた男、浦沢真治を殺そうと言う段階に到った。
浦沢真治。今現在の私の亭主である。
自分の最愛の妻に殺されるとはどんな気分であろう。
自分の盟友達がこの3ヶ月の間で一人ずつ殺されていったという気分、さぞ恐ろしかったであろう。
私は全て打ち明けた上で、亭主を部屋へと閉じ込めた。
亭主、真治は中で泣き喚いている。
「お前の妹だとは知らなかったんだぁ」などと、ほざいている。
この期に及んで未だそんな事を言うようでは生きる資格は無い。
妹だけではないのだ。レイプをされた多くの女性が死ぬまで苦しみ続けるのだ。
その苦しみに対する復讐でもあるのだ。
思い知れ。
苦しめ。
喚け。
泣き叫べ。
私は部屋内のスピーカーに繋がっているミュージックプレイヤーの再生釦を押下した。
死のメロディが流れ出し、真治の喚きが止んだ。
遂に私は全ての復讐計画を貫徹した。
あとは…。
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