第八楽章
昨日の帰り道の間、俊平は俺にいろいろと説明をしてくれた。
解り易いようで捉えどころの無い、そんな独特の口調で俊平は話を始めた。
「クニも知っての通り音で人は殺せるんだ。俺は数年前にその事実を知ってからこれまで色々と調べ廻って自分なりに推察し考えを纏めてみたんだ。」
数年前、起きた出来事。その時、アキオは覚醒したのだ。
アキオはある楽器を奏でる事によりその音楽によって武装した人間を薙ぎ倒したのだ。
とても信じられない事ではある。
俊平は話を続けた。
「どうも古代の人類は音を武器としていたらしい。弓矢を飛ばすってのと音を飛ばすってのは同義なんだよ。その恐ろしい武器としての音を楽しむ事に利用する為、メロディーが出来てそれが音楽と呼ばれるようになったんだよ。そして、アキオは今のこの現代に於いて音を武器とする事が出来る種族なんだよ。あの時、当然の如く政府や諜報機関や科学者達は信じられず疑問に思いそのアキオの演奏を録音、データ化した。その音源は国外にも流出しそれぞれの国でも研究をしたが未だにその謎は解明されていない。日本政府が持っていた音源は科学警察研究所にてその解析を行っていたのだがある日、そのデータが何者かの手によってに奪われたんだ。」
日本はそのアキオの奏でた曲の音源を失ったのか。
「奪ったのは何処なんだ?」すかさず俺は聞いた。
「ああ、公安の調べによると他国の民間諜報機関らしく、俺はその機関の日本支部のメンバーリストを調べたんだ。そこには、小林ナツコの名前があったんだ。」
俺は驚いた。
ナツコが諜報員だったとは…。
もしナツコがその音源を手に入れていたのであればそれを使ってのスタジオ密室内殺人が可能だと言う事だ。
俊平はその後、ナツコの調査を続けると言って昨日はそこで俺と別れたのである。
そして、俺は今、アキオと共にナツコの家、浦沢邸に向かっている最中である。
俺の手にはアキオが俊平から受け取ったと言う書類がある。
俺はその内容を一通り読み、全てを理解した。
アキオはある楽器の入った黒いケースを背中に背負っている。
アキオの横から見える表情には言い表せないような哀しそうな空気が立ち篭っていた。
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