第一楽章
小学校の同窓会へ行ってから既に10年くらいの月日が流れたが、その時に教えた連絡先を頼りに同窓の友人から突然の連絡を受ける事がある。
迷惑といえば迷惑ではあるが自分自身を頼りにしてくれる友人が存在すると言う事に喜びを感じ、どんな面倒な頼まれごとでも、聞きたい性分だ。
また友人等も僕の存在がどんなものなのかを知ってか知らずか、普通の人には言えぬような相談を僕の元に持って来るのだ。
今回はというと、小学校の同窓生で幼なじみの女子、小林ナツコからの相談事の電話を受けたのだ。
相談事の内容というのがまた奇妙奇天烈で僕や親友達の暇潰しにはいい話だった。
その内容というのが電話で詳細は話せないという事ではあったのだがどうやら今現在テレビのニュースやらワイドショーなどで話題騒然中の変死事件が絡んでいるらしいのだ。
ここ数年の僕はずっと死というキーワードに踊らされて生きているよなぁと人事の様に思いながら自ら今回の事件に参加してみようとナツコの相談を受ける事に決めた。
ただ、僕が一人で行ったところで状況によっては何も出来ずに終わる場合もあると考え、とりあえずは親友の中で一番近場に住んでいる男で生まれながらの探偵を気取っている八百屋の倅に会いに行く事にした。
八百屋の倅、藤原クニオとは小学校、中学校と同じ学校に通い気心知れた仲で数年前に僕の身の廻りで起こった悪しき出来事の後でも変わる事無く付き合いを続けてくれている親友の内の一人である。
数年前の悪しき出来事。
ある事件が発端でその時、僕は僕自身の人生で知りたくなかったある事実というやつを知ってしまったのだ。
ある事件。ある事実。
今ではもう小学校の同窓生辺りには知れ渡ってしまった事柄ではあるのだが未だに僕自身でも身震いする時があるほどの事実だ。
その事実というのは、一言で言えば“僕は人間では無い”という事だ。
人間ではない。
では、何なのか?
人間のようで人間ではない存在。
限りなく人間に近く、それでいて限りなく人間からかけ離れた存在。
人間に憧れ、人間から虐げられ、人間を欺き、人間から恐れられた。
歴史の闇に潜み、伝説と共に生き、歴史の中で風化していった存在。
人々に忌み嫌われた邪悪なる怪物。
ああ、考えていると思考力が薄れて行く様だ。
僕の体には穢れた血が流れている。
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