第88話  怨霊魔女退治、実行計画

 長い研修と会議の日程が終わり、次の日の会議で私はいよいよ凡凡凹凸山の問題を解決すべく一週間後旅立つことに決定された。私は供として七百猫とシュレネコを選択した。


 私と協議しながら、まずツキヒコの童貞卒業をさせるため七百猫が八重のところにお願いに赴く。それには賽婆の協力が必要なので、七百猫と賽婆とを会わせる。なんでも両者は見知りということだった。


 シュレネコはその前に賽婆に会い、野武士、浪人募集を止めさせる。数学A、確率の単元は教えるにあたり、「お茶の子さいさい」だということだった。


 そしてツキヒコに八重と交わらせて童貞を卒業させた後、私が凡凡凸山神社のマヤを捕らえて、センターに送致、そして閻魔王法廷内の留置場に拘置する。


 そして残りは笠村一族を斬りまくって滅亡させる。私と二匹の猫、そして高木を相談役にして以上のような計画が決定した。


 センターとのやりとりは、主に高木が行う。以前私は内耳に極小の通信装置を埋め込んだので、高木とのやりとりは容易だ。そして、高木のアシストとして黒田と浅見が控えることになった。


 また、生成AI昆虫と通信できるようにアプリをスマホにダウンロードして、腰に着けて行くこととした。


 藤崎マヤの「生捕り作戦」には浅見が依然難色を示していたが、黒田の説得が功を奏して「可能なら」という条件付きで承認された。


 私は午後、徳川家康公から拝領した鎧と刀剣とを検分しにセンターの宝物庫へ行った。一階中央奥の宝物庫は新任の職員で若々しく礼儀正しい安永くんが担当していた。


 細身の体にダークスーツ、紺白のストライプタイが似合っていていかにも厳正な管理人という雰囲気を醸し出している。


 彼は大きな鍵束の一つを手に、分厚い鋼鉄のドアを開けると私を中へ導いた。薄暗い宝物庫の中央奥に年季が入った焦茶の鎧櫃が鎮座していた。安永くんは厳かにその蓋を開けた。


 すると中に、シダの葉をあしらった黄金の前立てが施された兜とその下に黒糸で編まれた具足が目に入った。私は緊張と感動の余り、思わず息を止めた。


 そしてその呼吸が蘇ってきた時、安永くんは厳かに説明した。


「これは家康公御愛用の伊予札黒糸威胴丸具足いよざねくろいとおどしどうまるぐそくです。家康公の天下統一を賭けた「大坂冬の陣、夏の陣」、双方で用いられた徳川家吉兆の徴となる甲冑。きっと花田様に幸運をもたらしてくださるでしょう」


 私は思わず目頭が熱くなり、甲冑に向かって手を合わせて呟いた。


「家康公、何というご配慮でしょう。必ずや怨霊疫魔を退散せしめ、再びこの鎧をここに収めます。どうかお護りください」


 私は鎧の傍で家康公が微笑みながらただずんでおられるかのように感じた。次に安永くんは左横の棚から、白木のニ箱を取り出して、大きい箱から開けて内部を見せてくれた。


 「家康公秘蔵の太刀、獅子王です。平安後期、大和国で打たれた名刀にして徳川家の家宝。これを払えば、怨霊や魔も忽ちの内に魔力を失い、花田様の前に平伏すは必定。


 そしてこちらの箱は脇差、物吉貞宗にございます。こちらも家康公に数々の幸運をもたらした吉兆の名刀です。どうぞ、この二刀を装着されて戦さ場に赴かれるようお願いいたします」


 名刀二振りは家康公との会見で見せていただいたので、その日は倉庫内ということもあり、刀剣への尊崇の念から遠慮した。鎧の下に着用する直垂や折烏帽子も別に保管してあるということだった。


 私は安永くんに丁重に礼を言い、宝物庫を後にした。最後に空手の師匠、宮城恵尚先生と武道トレーニングコーチ、AIビリーに挨拶に行くだけとなった。


つづく








 















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