第81話 「危機に揺れる二つの山」
実はこの凡凡凸山の隣に凡凡凹山という山があります。まず凡凡凸山にある神社のご神体は何だと思いますか、それは女陰即ち女性器を象った大きな岩なのです。そしてそのご神体の依代であるのが藤崎マヤです。
そして凡凡凹山にある神社のご神体は男根、すなわちペニスを象った大きな岩です。そしてこの山には依代である青年の神がいます。まるでギリシャの彫刻のような筋肉隆々で美青年であるツキヒコです。
マヤは神として就任してしばらくした頃、ツキヒコの表敬訪問を受け、一瞬にして心を奪われたといいます。彼女は一瞬の鋭いカンで、ツキヒコが最高のセックスを提供してくれる男子であると嗅ぎ取ったのです。彼女がツキヒコと交わること、それはこの神道における精神世界を滅亡させることです。
皆さんは陰陽思想を表象する太極図というのをご存知ですよね。すなわちひとつの円の中が陰と陽のふたつの部分が分かれて巴形になり併存している。そして陽の中には小さな陰の点があり、陰の中には小さな陽の点が存在している。このことによって陰と陽はお互いに引き合いひとつになり、しかもお互いに干渉せず、平衡を保つことができる。
しかし、もし陰と陽が交わってしまったらこの平行は破壊され、この精神的宇宙は崩壊してしまうのです。これについての詳しい解説は後程シュレネコからさせましょう。
マヤは生前自分が辿った不運と七百猫が話した蘇我入鹿の悲劇を同一視してしまった。そして聖徳太子一族の悲劇と笠村一族の滅亡をです。
彼女は神道を司ってきた中臣氏、後の藤原氏の作った精神的権威を破壊しようとしている。そして自らをも破壊することによって精神世界すべてを消し去ろうとしているのです。
彼女は怨念に満ちたあの世での生を引きずってこの世に来た。そして自分を貶めた情欲と霊能力をも恨み始めた。そしてそれら全てを破壊しようと最初から機会を狙っていたのです。
我々神様研修センターができることは、藤崎の陰謀を未然に防ぎ、笠村一族をこの山から追い出すことです。笠村一族はもともとこの領地において圧政を敷き暴虐を尽くして、領民を搾取していた。このような者たちの怨霊は神とはなり得ません。全て滅ぼして異世界へ追放するのみです。
そして藤崎については閻魔王法廷から、できれば彼女に対して再起のチャンスを与えてほしいと言う嘆願が来てます。彼女が持っている本来の純粋な精神と、偉大ともいえる霊能力を最大限に活用する道を模索するためだということです。ですが、これについては我々センターでよく考える必要がある。なぜなら彼女の陰謀こそ最悪のものだからです。
つづく
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