第80話 マヤの陰謀

 マヤは最初この神社の依代として正常な働きをし、笠村の怨霊を抑え、山に起こる怪奇現象を抑制してきました。しかし、1年を過ぎた頃からまたもや怪奇現象が多発するようになったのです。


 登山をする人が鬼火を見たり、妖怪変化や亡霊と出くわしたりしたのです。また、猪などの野獣が暴れて近隣の田畑を荒らし始めたのです。


 それで私たちセンターは特殊な装置を使って山や神社に何が起こっているのかを調べました。すると恐ろしい事実を突き止めたのです。


 なんとあろうことか笠村一族が神社に戻ってきていたのです。しかも一族のうちの女人や家来たちは現在は使われなくなっている別院に移り住み、笠村本人とマヤが神社を乗っ取り、そこで夜な夜なマヤは絶倫と噂される笠村と床を共にし、快楽を貪っていたのです。


 最初笠村の正室や側室は烈火のごとく怒ったといいます。その結果別院に押し込められたことでマヤに復讐しようとすら画策しました。しかしマヤは彼らの想像を遥かに超える霊力と魔術を持っていたのです。


 正室や側室のために高価な調度や衣装、そして最新鋭の巨大な映像機器などを魔法界から調達し、一瞬にして彼らの心を奪ったのです。そしてこの神社を笠村とマヤの支配下に置き続けることを宣言したといいます。


 マヤは彼らから一族滅亡のいきさつを聞き取りました。それを七百猫が語った山背大兄皇子一族が殺害された事件と重ね合わせました。


 お話ししたようにこの事件の真犯人は藤原鎌足です。そして笠村一族を殺害した村地右京大夫の祖先は藤原南家、その縁あって彼は藤原氏の関白近衛前久の推挙を受けて官位を拝領したのです。そして村地が神社へ呼び寄せたのが藤原氏に縁のある神官と陰陽師。藤原氏のうち政治権力は北家が掌握し、神祇官は南家、色家、京家の三家が掌握していたのです。


 現世と精神界における権力の頂点に藤原氏がいて、底辺に山背大兄皇子殺害の悲劇があると考えてください。底辺を円形と仮定すると、頂点と底辺を結ぶと大きな円錐形ができます。そしてその円錐型の途中を水平に切ると小さな円形が現れる。その小さな円形こそがこの山で起こった笠村一族の悲劇だと仮定する。そしてこの円錐全体を黒く塗りつぶして行く。宗教的精神世界の滅亡です。


 笠村と藤崎マヤが狙ったのはこの図式です。すなわち藤原氏という神道の頂点を暗黒と仮定して、次に小円形から上へ円錐を真っ黒に塗りつぶしていく。次に下へ向かって円錐全体を塗りつぶす。そして全てが塗りつぶされた後、彼女が考えたのは円錐全てを破壊し去ることです。これについては笠村一族さえ知らないことです。


つづく


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

第80話までお読みいただき、誠にありがとうございました。自分でもこんな長編が書けるとは思ってもみませんでした。

これも読者の方々に私のストーリーテリングをお楽しみいただけたらと願っての上のことです。コメントや読者登録、評価などいただけましたらこの上ない幸甚に存じます。


今後もよろしくお願い致します。

著者  山谷灘尾

























  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る