第62話 Maya &Momo, Together At Heart (1)

 入鹿同様、可哀想だったのが藤崎マヤであった。わしの猫生涯最後となるべき700回目よ。

 

 マヤは複雑な家庭に育った。生まれて暫くは会社経営をしている父親の元、裕福な環境で育っておった。ところが父親は出張先で女をこしらえ、母親もダブル不倫をし始めた。結局両親は離婚し、マヤは母親に引き取られた。


 母親は新しい男と結婚したが、マヤにとっては義父となるこの男が曲者であった。ちょうど思春期を迎えていった頃、マヤの胸や尻は膨よかになり、大人の女へと成長していったのじゃ。多情だった母親に似て、マヤも妖艶な魅力を全身から発散するようになった。


 そこに目をつけたのが義父であった。母親と床を共にするばかりか、義父はマヤの体を求め、度々性交を強制し始めたのじゃ。最初は抵抗していたものの体を鍛えていた義父の力には抗えず、とうとうマヤは義父の思うがままになっていった。

 

 思い余ってマヤは家を出て、外を遊び歩くようになった。ちょうど高校生になったマヤは、金銭を代価に見知らぬ男たちと情交を交わすようになっていったのじゃ。そして東京の路上で飲食を買い求めながら、同じような境遇と者たちと放浪する生活が始まった。


 小学校の頃より、マヤは人には見えない霊魂の影が見え、その者たちと会話を交わすことができた。そして周囲の子供たちの未来が予見できたり、身に迫る危険を察知できたりもした。最初は友人たちにそのような技を不思議がられ、人気を博していったのじゃが、次第に周囲から薄気味悪いと遠ざけられるようになった。そして、中学に上がる頃には誰もマヤと口をきく生徒はいなくなり、全く孤立状態になってしまったのじゃ。


  元の父親が支払った養育費のおかげで、経済的にはまだ余裕があった。マヤは普通科高校をドロップアウトしてから通信制高校で単位を取り、卒業資格を得た。そしてその後すぐに渡米した。何でもすぐに習得できる才能があって、ヒップホップダンスを見よう見まねで覚え、東京のクラブや路上で踊って見せていたマヤは、路上で共に暮らす仲間からニューヨークに勉強に行ってはどうかと提案されたのじゃ。


 そしてネットで数校を探し当て、どうせならと名門校のオーディションを受けることにしたのじゃ。父親から関係を求められていたマヤは、母親から学費を出してもらうことは容易にできた。何とかマヤを養父から解放させてやりたいと言う母親の強い希望もあったからじゃ。


 マヤは容易にマンハッタンにある名門のダンススクールのオーディションに合格し、単身渡米した。ブルックリンにある安アパートを見つけ、一人暮らしをしながら地下鉄で都心へ出て、日本食のレストランで夜アルバイトをしつつ、ダンスのあらゆるテクニックを身に付けていった。ブレイキン、ポッピング、ロッキング、ダンスといっても、専門分野は様々にある。  

 

 じゃが、卓越した身体能力とカンを持つマヤは、次から次へと習得していったのじゃ。そして、ついには、路上で踊っているところをスカウトされ、ニューヨークでも有名なクラブやナイトショーで金を取れるまでになっていった。


つづく



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