第42話 青赤鬼の乱(2)
最初に警告の文字が写された。
R指定。
「警告」
この動画は史実に基づき忠実に再現されたドキュメンタリー映像である。一部に暴力的で残酷な映像や内容が含まれている。
大勢の赤鬼、青鬼たちは、毛皮の衣装を纏い、腕には太さ10センチ以上もある鉄製の棍棒を持ち、あるいは日本刀を持って襲いかかってきた。閻魔王庁は「完璧な殺し屋」と異名を持つドイツ製へケラー&コッホHK銃を持ち身構えた。閻魔王は先頭に立ち、周囲の部下に命じた。
「撃て、皆殺しじゃあ!」
一斉に銃弾が発射された。鬼たちの体中は、蜂の巣のように穴が開き、血の噴煙が上がった。血と硝煙の煙であたりが満たされ、鬼の死体がバタバタと地上に重なった。
「大王様。どうか後ろへお下がりください。危険です。」
そう叫んだのは側近の司命、
「大丈夫よ、私が守ってあげる。」
背後の鬼たちが死体を跨ぎながら、まだこちらへ襲ってくる。今度は日本刀を抜き、それを振り回しながら地響きのような雄叫びをあげて襲いかかる。
「撃て。」
再度銃口が開かれ、圧倒的な量の銃弾がまるで豪雨のように降り注いだ。鬼たちは、まるでダンスを踊るかのように血しぶきを上げながら折り重なって倒れていく。
最後に10人ほどの幹部の鬼が先頭の大王をめがけて、棍棒を振り回しながら迫ってきた。
「これ、持ってて。」
大王はそばに寄り添っていた司録の
「大王様、お止めください。」田川が叫んだ。
「何を言う、このあたしがこれまでの仇をとってやる。」
その太刀こそ、イギリス魔法省から拝領された伝説に輝くアーサー王の神剣。赤鬼と青鬼が閻魔王を取り囲んだ。彼らは棍棒を振り回して接近してくる。まず正面の赤鬼が棍棒を降りかぶる。大王は、それを下から刀身で受け、一瞬振り外すと上から刃を降りおろした。棍棒が真っ二つになり、正面の鬼はひるんだ。
スキだと見たもう1匹の赤鬼が今度は背後から襲いかかる。鬼は体を後ろから左手で寄せ付けてぴったりと体を重ねた。
「人間の女は抱き心地がいいのお、それにいい尻してやがるぜ。」
「おあいにく様、お前はこれでも喰らいな。」
大王は肘で上半身を突き飛ばし、振り向くと刀を真横に振った。鬼の首が空中に飛び、血が真上に吹き出して、大王の顔や上半身に無数の赤い斑点をつけた。
「おおっ。」
鬼たちはひるんだ。その間に大王は他の鬼たちを次々と前後から切りつけ、あるものは首を飛ばされ、あるものは両腕を切断されて、地面でのたうち回った。
「痛えええっ。」
「ほら、楽にしてあげるよ。」
大王は刀を振り下ろし、胸に突き立ててとどめを刺した。大量の血が噴水のように噴き上げて。大王の顔も体も真っ赤に染まる。
「大王様、もう我々に任せてください。」今度は王立林が腕にしがみつこうとする。
「大丈夫よ、アーサー王が守ってくれる。これは不死身の剣よ。」
最後に2匹の鬼が盾と棍棒を持って左右から現れる。体を大きな盾で守って、左右から挟み撃ちにしようとしているのだ。
「もう、もう、お願いだから、もうやめて、もうやめてえええ。」
田川が泣き叫んだ。
その瞬間、左の赤鬼が左手の盾で王の顔を押さえつけ、回り込もうとする。王はそれをすり抜け、袈裟懸けに赤鬼を斬って、胸から上下半身を真っ二つにした。
「て、天凱丸うううっ。」
青鬼が叫んだ。それは乱の首謀者、赤鬼だった。
青鬼は大きく笑った。
「あはは、大王、よくやってくださったですね。これで、あなたを倒せば、閻魔王庁はこの須餓鬼丸のものですよ。こんないい女、殺すにはもったいねぇなぁ、できれば生け捕りにして、王庁のあのでっかい机の上でゆっくりとなあ、うめえぜ、きっと、エヘヘ。」
大王は、無言でゆっくりと青鬼の円周を回り歩き、距離を徐々に詰めていく。
「うおおおおっ。」
盾を前に出して須餓鬼丸は走り寄ってきた。大王は、後にあった岩に素早く蹴り上り、頂点を蹴って大空に舞い上がった。
「おおお。」
大王は刀を逆手に持ち、鬼の頭上に向けて切っ先を突き立てた。
「ちぇすとおおおっ」
鬼の頭上に刀がつき刺さり。それを大王は思いっきり真下に突き斬った。そして今度は上から掴んでいた左手を梃子のように下へ降り下ろした。
鬼の頭が真っ二つになり、大量の血液と薄黄色の脳漿が後方へ飛散する。大王は、上半身でそれを受け止めながら、鬼の体を左足で蹴り飛ばした。
「大王様!!」司録と司命、そして彼らの配下が駆け寄った。
「よくもご無事で。」
「ああ。」
と大王はこともなげに言い放った。そして二名の側近の肩を両方から抱きしめた。
「これは私が始めた戦い、最後は私がひとりでけじめをつけないとね。これまでよく私を守ってくれましたね。ありがとう。これで閻魔王庁も、この世も平和になりました。」
エンドロールのテロップが白い文字で流れた。
「200名の青鬼、320名の赤鬼が白旗を上げ降伏した。 鬼族の代表
THE END
つづく
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