第40話 「閻魔王庁の腐敗」

 閻魔王が帰った後、時刻はもう4時を過ぎていたが、所長と私双方の合意で、私たちはセンターの大会議室に戻った。いつもの席につくと、所長がまず立ち上がって頭を下げた。


「花田さんとてもいいにくいことですが、これまで花田さんを欺いておりました。このとおりです。お詫び申し上げます。」


 私はだいたいの想像がついた。閻魔王庁にとってもセンターにとっても不名誉な出来事だったのだろう。話をゆっくり聞く必要があった。


 「実はこのセンターは30年前まで閻魔王庁にあったのです。それは中国様式の古い建築物でした。そこに今のメンバーが働いていたのですが、先代の閻魔王の時代にその事件が起こりました。


 先代は人格的には優れた方だったのですが、指導力がそうあるわけではありませんでした。閻魔王庁は職員30人程度、そして我々神様研修センターの職員が約30人、その下部に雑用をこなす青鬼、赤鬼などの鬼族が働いていたわけです。ところが当時、閻魔王庁は組織が腐敗し、鬼どもが専横を極めていました。鬼たちは職員はおろか、閻魔王のいうことすらきかなくなっていたのです。そして彼ら鬼たちは昼間から酒を飲み、1日中大好きな餅を王庁内において杵でついて、貪り食っていました。


 花田さん、窓の外を見てください。遥か向こうになだらかな山地が見えるでしょう。あそこが鬼達の生息地なのです。あの山々は金陵山地と呼ばれ、大きな金鉱があるのですよ。鬼たちは金を採掘し、そしてそれを市場へ秘密裏に流して大儲けしていたのです。


 それはこの世でも違法なことです。しかし鬼どもは閻魔王庁の幹部にまで賄賂を流し、金塊をプレゼントして王庁を乗っ取ってしまったのです。


 そしてついには2匹の鬼が閻魔王を暗殺しようと計画していました。その上でどちらかが次期閻魔王になろうと画策していたのです。その1匹を青鬼、須餓鬼丸すがきまる、もう1匹を赤鬼、天凱丸てんがいまるといいます。


 そんな時、この閻魔王庁で最初の幹部となった女性がいました。先ほどお会いになったブレディ・リサさんです。閻魔王の下には司録しろく司命しみょうと言う直属の書記官がいます。そのひとり、司録が彼女だったのです。ブレディさんは頭の回転が誰よりも速く、そして正義感に燃えておられました。このままではいけない、閻魔王庁を改革せねば、と先頭に立たれたのです。


 賄賂を受け取った職員は減給や停職、免職されて、有能な新人を登用するなど次々と改革を進めていかれました。そしてついに全職員の推挙もあって先代閻魔王を説得され、第290代の閻魔王に就任されたのです。職員はみんな快哉を叫びましたよ。


つづく


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第40話までお読みいただき、ありがとうございます。

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幸いです。また、★マークの評価を頂けましたら、嬉しい限りです。

これからも更に奇想天外なストーリーを作って行きたいと

考えております。引き続き、お楽しみくださいませ。


著者 山谷灘尾




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