第34話 魔女テロ(1) RAMPAGE
時 21世紀
場所 あの世 神様研修センター
私 花田耕平 神様研修者
その日の午前、私は空手のトレーニングを師匠である宮城恵尚から受けていた。
「空手に先手無し」の教訓どおりずっと防御の練習が続いた後、初めてその日は攻撃パターンの練習だった。彼は大きなサンドバッグを道場の端に吊るしてこういった。
「臍下丹田に力を入れるのです。精神を集中させるのじゃ。自分の前には何もない。このサンドバッグしかない。私も荷物も周囲の風景も全て忘れてしまいなさい。そして拳の力をこのサンドバッグの一点に定めるのじゃ。」
「はい。」
「そして心が定まったら、打つのです。自分には何でもできる。どんな力だって出せる。さぁ打つのです。」
「やぁー」
「もっと声を大きく出さんか、なんじゃ今のは。」
「やあー」
「そんなことでは魔物に勝てませんぞ。もう一度。」
「やああー」
「もう一度、サンドバッグを揺らすまでやめませんぞ。」
私は手が痛くなるのも忘れて、サンドバッグを打ち続けた。結局それは大きく揺れる事はなかった。しかし学んだ事は大きかった。自分の心を無にするという意味が少しわかりかけたように思った。
「それでいい、それでいいのです。少しずつ上達していきましょう。あはははは。」
いつものように快活に笑って、彼は私を控えの小部屋に案内した。そしていつもの冷茶を一緒に飲んだ。
「花田さん、よいか、まずその心を正せ。心を正せば、何でもできるはず。それはあなたが前世からご存知のことじゃな。」
私は大きくうなずいて、冷茶を先生と楽しみ、そして道場を後にした。そして、その日の午後、それは起こった。
その日の午後は黒田による仏教の講義が行われることになっていた。私は1階中央にあるいつもの大会議室の椅子に座った。浅見美香が小さなコントロールパネルを操作して壁いっぱいのスクリーンを下ろした。
その時だった。パワーボタンを押してもいないのに、スクリーンが急に明るくなり、黒いフードをかぶり、黒いマントを羽織った女性が大写しになった。
「なんだこれは!」黒田が叫んだ。
画面上の女性が嘲るような口調で話し始めた。
「あーら黒田さん、久しぶりね。所長もますますお元気そうで、何よりですわ。」
彼女はそう言い終わると、フードとマントを取った。そこに現れたのは、体も露わなフレンチメイドの衣装を着た女性だった。髪の毛を金髪に染め、頭には小さなフリル付きのホワイトブリムを載せ、両肩には短いフリルの飾り、そして黒のブラジャーとコルセット、下半身にもフリルのついた短いパレオを身に付け、黒いショーツの結び紐が両サイドから露わになっていた。
彼女は低いテーブルに網タイツを履いた長い脚を載せてこちらを向いて微笑みかけた。その時だった。ドア付近にいた浅見美香がスクリーンの前に立って叫んだ。
「消え失せろ、このケダモノ!こうしてやる。」
浅見はコントロールパネルのスイッチをオフにしようと強く押した。しかしそれは何度やっても反応せず。女は大きな声で笑い立てた。
つづく
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