第21話 師匠、そして空手道のこころ
「空手はな、最初明の時代に沖縄に来たと伝わっておる。そしてそれは最初、唐の国からやってきた
その昔、首里にあった琉球王朝の王を守護するために、周辺警固の者たちが用いた武術が起源じゃ。だから本来は棒やヌンチャクなどの武器も使うのじゃ。その後、空手という名が示す通り、己の身体と手だけで防禦する術へと変化していったのです。
それは次第に人々に広がっていったものでな。
ヤマトでは明治、大正になって、
「今日の先生のお話はとてもためになりました、本当に。」
「ではもう一番まいるとしようかな。さぁ、私をどこからでも倒してみようとかかってきなさい。本当は寸止めして相手を打たないのじゃが、これは実戦用ということなので痛くない程度に打つからそう覚悟されよ。」
「わかりました。存分に。」
私はもう躊躇せずに師に仕掛けることにした。それは私の仕掛けに対して、どう先生が反応するかを見極めるためだった。10回、20回私は投げ飛ばされ、マットに打ち付けられ、息も絶え絶えになったが、何か心地よいものだった。
体も髪も道着も汗まみれになった頃、師は私を起き上がらせて言った。
「さぁ、私の部屋に来て休んで行きなさい。冷たい茶がよかろう。あなたは一流の料理人ということだったなぁ。私の淹れる茶では口に合わんかも知れんのお。あはははははは。」
大声で笑った。後について道場の片隅にある師匠の部屋へ行き、冷蔵庫の中にあったやかんから冷茶を茶碗に汲んでもらい、ゴクゴクと一気に飲んだ。
「どうじゃぁ、こんなものでも運動の後では極上であろう、あはははは。」
「先生?」
「あ、なんじゃ」
「先生、まだお名前を伺ってはおりませんが。」
「あはははは、そうじゃ、全く失礼でしたなぁ、私の名は
師匠は本当に豪快そうに笑う人だった。私は彼にとても親しみと尊敬を感じ、何度でも稽古をつけてもらいものたいものだと心から思った。
つづく
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