第14話  神様研修センター科学研究室の見学


 黒田はこの部屋ともう一つの隣接するデータセンターを統括しているということだった。私たちは中に入り、パソコンや大きなモニターが天井から吊るされている部屋へ入っていった。さっきの議論していた研究員4人がこちらに視線を向けた。


 「 あ、所長、室長、どうされたのですか。そうか今日メールで…、」


すると、彼ら4人は一斉に威儀を正し、直立不動で挨拶した。


「いらっしゃいませ、ようこそ、当神様研修センター科学研究室へ。」


 「朝にみんなのパソコンに回しておいたよな。」と黒田が微笑んで言った。


「あ、はい、本日は新しい神様が研修にいらっしゃると・・・」と若い研究員が言いかけると、平岩が言葉を遮って言った。


「平田研究員、ほら、最近君が導入した最新のホログラム、あれを神様にお目にかけてくれよ。」


 平田と呼ばれたその研究員が私たちを手招きした。私たちは、研究室中央にある透明のアクリル台の前に集まった。平田がアクリル台に取り付けられている小さなタブレットを取り外し、パワーをオンにすると、天井の1カ所が開いて、小型の球体が飛行してきて、アクリル台の上で静止した。平田がタブレットのアイコンを操作し始めると、球体がくるくると回転し始めた。


 「あれ、おかしいなぁ、これでよかったはずなのに。」


 すると、髪をポニーテールにした若い女性の研究員が助けを出した。

「ちょっと貸してよ。」

「南ちゃん、これ、このアイコンでどうして動かないんだろ。」

「ちょっと待ってね。」


 南と呼ばれた若い研究員が細い指でアイコンを操作すると、突然球体から光が出て、アクリル台の上に大きな青い球体が3次元で映った。


「こ、これは…」


 私は言葉を失った。それはまがうことなく私がかつて住んでいた地球だった。美しく青く輝く地球。


 「南ちゃん、さっすがあ。」 

 と平田は頭を掻きながら言った。


「もう平田くんはね、いっつもこうやってあたしを頼るんだからね。後でコーヒー淹れてくれるの、だーれだ。」


 私にはカンでわかった、この二人がデキていることを。またもや目の前で見ているものとのギャップが大きすぎて、私は思わず失笑した。


「気にしないでください、いつものことなんだから。」ともう一人の少し年配らしい女性研究員が言った。

「仕事場で私的なことを持ち込んではいけませんよ、君たち。」


「はーい、了解。」


 南ちゃんは大きな声で返事した。平田はしきりに頭を掻いていた。この研究室が雰囲気の良い場所であることがすぐにわかった。もうひとりの少し背が低く、銀縁眼鏡をかけている男性研究員が言った。


「南さん、あれ、ほら、所長がおっしゃっていた… .」そう言いかけられると南は、「あ、あ、そうだった。」


 と言いながら、その青く輝く地球の動画をどんどん拡大していった。画像がアクリル台からハミ出ようとすると、眼鏡をかけた研究員が「そこでピンポイントね。」と南に言った。南が1カ所にピンポイントしてなおも画像を大きくすると、その1カ所がだんだん広がって、航空写真のように上空の様々な様子が動画で映し出された。


 私はあまりの迫力に圧倒されて、その場所がどこなのかも見当がつかなかった。しかし地球全体から見ると赤道の近くだということが推測されたので、中東とかアフリカのどこかなのだろうかと考えていた。


つづく

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