12 ファッションショー
『皆!お待たせ!!』
一時離脱していたアーロが戻ってくると、全身を覆い隠すほどに長いローブを身を纏っていた。
『ファッションショーが何かわからない?でも大丈夫!見ていればわかるよ』
アーロに続いてルカが戻ってきたのを確認すると、バッ!とローブを脱ぎ捨てた。
『皆気になってたよね?じゃーん!僕らの制服姿〜!!どう?様になってるでしょ』
アーロは、どう!?どう!?と次々ポーズを決めてみせた。ルカもそれに合わせて動き出す。
『これを着始めてもう、一年とちょっとか……ルカホワはあまり着ないからなんだか新鮮だね』
『入学式では着てただろ』
『そうだけどさぁ……って皆聞いてよ!ルカホワってば落とし物しちゃった〜って言って、入学式が始まるギリギリまで半泣きで探し回ってたんだよ?』
『待ってたのにぜ〜んぜん来ないの!』とアーロは右手を握り拳で振った。
『ばっ!別に泣いてはないだろ。……まあ、焦りはしたけど』
恥ずかしさからか、次第に声量が小さくなっていく。コメント欄は萌えの大嵐だ。
『それで結局見つかったんだっけ?』
『あぁ、拾ってくれたやつがいてな。わざわざ探して届けてくれた』
ヒロインだ。
ルカは入学式で髪を結ぶための大切な紐を落としてしまったのだが、それに気づいたヒロインが拾って届けたのだ。大切な人からもらったのだと言って、感謝されたのを覚えている。セーラも同じように行動したのだろう。
『というか、いい加減に始めるぞ』
『そうだね。……それじゃあお待ちかねのアーロとルカのファッションショーを始めるよ〜!!』
そう言うとくるりと回り、ぱぱっと着替えて戻ってきた。
『エントリーNo.1番!……はさっきやったから2番!!教会にいる人!』
全身真っ白な神父コーデ。真ん中のスリットからスラリと長い脚が覗き、腰に巻かれたベルトと細い指を強調させる手袋がが色っぽさを演出する。肩にかけられたストールは床下近くまで伸びていて、動く度に揺れている。
『一応教会にも媚びは売っとかないとね〜』
『おれはかっこいいから着ているだけだ。お前みたいに含みはない』
『えぇ〜!ヒドイ!!僕はリスペクトの念しかないのに〜』
頭は校章と骸骨だというのに、二人のスタイルがいいせいで様になっている。細身な体と白のハーモニーがまるで天界にいるかのような気分にさせた。
『お次はエントリーNo.3番!!』
v字状に胸元がガッツリと空いているせいで中央の筋が見えてしまっている。手首に行くに連れ広がる裾は柔らかく、それを締める役割をサスペンダーが担っていた。
『僕らにはちょっと早いんじゃない?』
『そんなことないだろ』
獣のような男らしさとは無縁の二人。アーロは服に着られていると思っているが、ルカは自分の魅力をわかっていた。だからコメント欄の血の海を見て驚くアーロをわかってねぇな、という目で見ていたのだ。
(頭骸骨なのに……校章なのに…………色気が、色気があるわ、、)
なんだかいけない扉を開きそうになるリリスティアを止める者はいない。口元がにやけそうになるのを必死に手で隠し、楽しそうに見ているメリルにはバレないでと切に願った。
『じゃんじゃん行くよ〜!次はこれ!エントリーNo.4番!』
手首はかっちりと、けれど袖にはボリュームをもたせたブラウスと、ハイウエストでピッチリとしたパンツで脚を魅せる。胸元をゆったりと存在感のあるリボンが飾り、肩にかけただけのジャケットは膝下まで続いた。ロングブーツはヒールが高く、アーロはふらふらと不安定に。ルカは慣れた様子で歩き回った。
『アーロ、モデルにあるまじき姿勢の悪さだな』
『ヒールなんて初めて履いたよ!?ルカホワがイケるって言うから履いたのに!ぜんぜんイケないじゃんか!!』
今にも転びそうになるアーロをルカはさっと受け止める。そのあまりのストレートさにアーロは少し、きゅん……としたし、ファンも同じくキュンとした。
『アーロ!そこ代わって!!』『いいや!アーロと代わるのはオレだ!!!』『違うわ!私が先よ!!』
我に返ったアーロはサササと距離をとり、両手でバツ印を作った。
『僕思うんだ。そういうのはよくないって』
ハハっと小さく呟いたアーロに、リリスティアもファンと同じく頷いた。
『……次は助けてやんねーぞ』
ルカはバツが悪そうに頭を掻いた。前にも似たようなことを言われたことがあったのだ。
一つに結ばれた、白くて肩下まである髪が乱れている。
(ん?…………ってこれは!?)
白い髪と黒い服とのコントラストがとても美しい。ルカ・ホワイトは薄い牡丹色の瞳の中性的なとても美しい青年であった。
(うっ、……まつ毛つよつよだわ)
思わずお国言葉が出てしまうくらい、ルカの顔面の戦闘力は高かった。
(他の人には見えないというのに髪型もアレンジされているわ…………流石はプロのたまごね)
ゲームでのルカは髪を下ろしたままで特にアレンジはされていなかったのだが、今は一つに結ばれていた。その姿はうさぎのようで、白い肌が余計にそう思わせる。
『そしてお待ちかねのエントリーNo.5番!』
アーロの元気な声が響く。
(待って、これがアーロ・ブラウン。……初めて見たわ)
この世界では結構派手めな濃い目のピンク。配信者に相応しいその目立つ髪は左側だけ耳にかけた部分が長い。鮮やかな濃い青緑の瞳をしたアーロはルカに挑戦的な顔を向ける。
『カワイイ服だってルカホワならバッチリ着こなせるよね?』
それに応えるようにルカは不敵に笑った。
『誰に向かって言っている』
太ももが大胆に晒される短いパンツにハイソックス、そしてリボンのついたブーツを履けばカワイイ男のできあがり。短めベストからは下に着たシャツがチラリズムしていて、大きなマントで小さいと錯覚させられる。
(可愛い顔して、なんて男前なの……!?)
可愛いというよりも綺麗、と言った方が正しいのだが。
ルカはアーロのファンに向かって指を指す。
『どうだ?カッコいいだろ?』
覗く歯がとても荒々しく、男らしかった。
「これがおしゃれっすか…………それに比べて自分は……」
メリルは自分の格好を足先まで見つめるとため息をついた。確かにこだわりのない、ただあったものを着ただけ、というような格好ではあるがメリルの可愛さがそれを打ち消している。
「自分、芋野郎なんで……」
「そんなに落ち込まなくても……ほら、せめて芋乙女くらいにしておいたら?」
リリスティアのフォローは届かず、メリルの頭色は晴れない。ルカのようなスマートな対応はリリスティアにはまだ難しかった。
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