六日目(木)

「おはよう。」

「おはよう!」

昨日までとは違い、少しの間沈黙が広がる。


「どうしたの?」

彼女が僕の異変に気付き、声をかけてきた。

僕は聞くかどうかを直前まで迷った。

けど、聞かなければ先に進めないのは僕も分かっていた。

「君はさ、幽霊なの?」


彼女の顔色が変わった。

「...そうだよ。」

「やっぱり、そうだったんだ。」

「まぁ、さすがに気づいちゃうよね。」

と言って、彼女は指をさした。

「あそこ。去年、事故があったのは覚えてる?」

「もちろん。あの時現場を見かけたから。」

「だよね。私はあの時トラックに轢かれて死んでしまったんだ。けれど神様が少しの間、この橋の上でだけなら現世に干渉することが出来る力をくれたの。だから、この力がなくなると私はまた普通の幽霊に戻るんだ。」


何となく気づいてはいた、気づいてはいたけれど、いざ実際に幽霊です。と言われて信じることはできなかった。


何とか気持ちを落ち着かせて、僕は尋ねた。

「その力はいつまでなの?」

「明日だよ。だから私も後悔しないようにしないといけないんだ。」

彼女はいつもと変わらない、ニコッとした笑顔でこちらを向いた。

僕は、初めて彼女の笑顔を可愛いと思うことが出来なかった。


「また明日。」

と声をかけ、橋を下りた。


彼女と別れ、一人になるとより考えてしまった。


僕は彼女に告白することを決めた。

彼女は幽霊。

そんなことは分かっていた。

付き合いたいなんて考えているわけではない。

いったいどういう理由で告白しようとしているかなんて、僕自身にも分からなかった。

いろいろなことを一日で聞いて、頭の中の整理はもちろんついていなかった。

けれど、この気持ちは伝えなければいけないだろうと思った。

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