二日目(金)

僕は昨日の罰として廊下掃除をしなければならなくなったので、昨日より50分早く橋に着いた。

会えるわけないとは思いつつも、心のどこかで期待してしまうのは仕方の無いことだった。

橋の上は昨日よりは暖かく、時間に余裕もあるのでゆっくりと漕いでいた。


「あ!おはようございます!」

と声をかけられ振り向くと、そこには昨日の彼女がいた。

「おはようございます。」

心の高まりとは表に出ないもので、なんとも無愛想な挨拶をしてしまった。

「昨日は本当にありがとうございました!時間大丈夫でしたか?」

「あ、全然大丈夫だよ。罰で今日廊下掃除になったけど、手袋を拾わなくても間に合わなかったし、ちょうどいい言い訳になったから。」

「それは、良かった?のかな。」

と申し訳なさそうにクスッと笑った。

その仕草すら可愛い、と僕は思ってしまった。


会話が止まった。何か話さなければ。

「今日は昨日よりは暖かいね。」

会話に困った時に、本当に天気の話題を出すことになるなんて思ってもなかった。

「そうだね、でも来週はまた寒くなるみたいだよ。」

「へー、そうなんだ。」

もちろん会話は続かなかった。


橋を下り始めた時、名前を聞いていないことを思い出した。

「名前はなんていうの?」

と彼女の方へ振り向いた。

しかしそこにはもう彼女はいなかった。


状況が理解できない。下りる手前で曲がったのだろうか。そうだとしても僕が全く気がつかないなんてことがあるだろうか...。


答えは出なかったが、週明けの月曜日にもう一度会えることを信じて僕は学校に向かった。

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