第29話.いざ決戦の地
革命軍の基地が見つかったと知らせを受けたリュートは、さっそく騎士団宿舎に駆け込む。
「先程、革命軍の騎士が見つかったと言う知らせを受けたのだが?」
「おぉ、リュート早かったな?」
大慌てで来たリュートに対し、ロベルトかそう答える。
「で、場所は何処だったんだ?」
「お前にとっては嫌なことを思い出すかもしれないが…ハトム村跡地だ」
「なん…だって…」
ハトム村、それはリュートにとって忘れることの出来ない思い出の地であった。ヴォルグに全てを焼き払われ廃村となったその村を、まさか革命軍が拠点にするとは思いもよらなかった。
「リュート辛いのはわかるが、今落ち着いてくれ」
「ロベルトありがとう。でも大丈夫だ。多少動揺はするが、俺ももう子供じゃない」
「そうか…」
革命軍の本拠地が明らかになったので、王宮騎士団としてとる方法はただ一つ。少しでも早く革命軍を制圧し、この国の状況を一刻も早く元に戻すことだ。そうと決まれば話は早い。王宮騎士団の全てをかけ、革命軍の拠点に向かうこととなった。
「じゃあ、父さん母さん行ってくるよ」
「リュート、リュートどうか無事で帰ってくるんだよ?」
「うん、大丈夫だよ。母さん」
「リュートいいな、気配を怠るな」
「わかってるよ。父さん」
革命軍制圧という重大任務を前にストーンとロゼリアからの励ましの言葉をもらう中で、エリザ姫が姿を現す。
「リュート様、どうかご無事で、絶対に帰ってきてください」
「大丈夫です姫…必ず戻ってきます」
「リュート様のその言葉を信じ、私待ってますわ…この子と一緒に…」
その言葉を言い、エリザ姫が自分のお腹をさする
「エッエッ…姫…」
「ちょっとちょっとアンタ!リュートに子供が!!」
その言葉を聞きあからさまに動揺するリュートと満面の笑みを浮かべながらストーンの方を叩くロザリア
「はい、ですから必ず帰ってきてください」
「姫約束します。どんなことがあっても私は必ず帰ってきます」
「えぇ~!!」
「ちょっちょっロベルト声!!」
ハトム村に向かう道中、エリザ姫の妊娠の話をロベルトにするリュート。その言葉を聞き、心底驚いたかのように大声をあげるロベルト
「どうしたんですか、ロベルト隊長?」
その声を聞き、守備隊のメンバーがロベルトに近寄ってくる
「いや、どうしたもこうしたもねーよ。リュートがパパになるらしい」
「なんですと!!」
ロベルトの発言を聞き、部隊全体が盛り上がる。
「リュート団長おめでとうございます!」
「リュート団長、この勝負絶対に勝ちましょうね」
辺りから祝福の声が飛ぶ。とても戦に向かっているように思えないほのぼのとしたムードが漂う。
「みんな本当にありがとう。ただ、我々は今から命をかける戦いに向かう。私のせいでこんなテンションになってしまったのだが、みんな気をを引き締め直してくれ」
油断や過信で実を滅ぼすことを誰よりも知っているリュートは、その事を団員達に伝え気を引き締めることを促す。そのリュートの言葉を聞き、団員達ももう一度気を引き締め直す。ハトム村までの道のりは何の問題もなく住むことができた。ハトム村が近づくにつれ、リュートの中のトラウマがフラッシュバックする
「リュート、大丈夫か?」
リュートの顔色を見て、ロベルトが声をかける
「大丈夫だ。確かに辛い思い出を思い出すが、俺には母さんやお前たちがいる。」
「そうか…」
ロベルトはそう言い軽く笑った。この森を抜ければ、ハトム村の、あの崖が見えるはず。それが見える距離に近付くにつれ、リュートの心拍数は高まる。そこの森を抜ければ崖はすぐそこだ。あの土砂崩れの崖が見える。そう思った瞬間、目に入った景色は違ったものだった。土砂崩れで通れなくなっていた崖は復旧されていた。元通りとは言えないながらも普通に通るのであれば問題ないクラスに復旧されている。あれだけの崖崩れを復旧するには、どれだけの労力を要したのかが計り知れない。しかし、そのおかげでハトム村まではすんなりと到着することができた。
タカッタ、タカッタタカッタ
馬の足音と共に王宮騎士団がハトム村に飛び込んでくる
「革命軍そこまでだ!おとなしく投降するのであれば、危害は加えない」
リュートはそう言いながらハトム村に突撃した。リュートの進軍に続くように王宮騎士団がハトム村になだれ込む。
「俺は革命軍リーダーのカルマを探しに行く、ロベルト後を任せても大丈夫か?」
「いや、俺はお前についていく。俺はお前が進むための道を切り開く盾だ」
「そうか…では、共にカルマを捕らえに行こう」
「おう!」
「私とロベルトはカルマを捕らえに行く!残りの者たちは、革命軍の制圧を頼む。できるだけ素早く犠牲は最小にしてもらいたい。できるな?」
「サー!!」
「よし、では頼む!!」
リュートは部下達にそう告げロベルトとカルマを探し始める。残された王宮騎士団達は、革命軍の制圧に力を入れる。盗賊たちと違い連携も取れ手練も多い革命軍だが、いきなりの王宮騎士団の襲撃にパニックになり、本来の実力を出すことなく次々と確保されていく。その様子を見ながら、カルマを探すが一向にカルマの場所が見当たらない。
「おい、リュート。これだけ探して見つからないって、もしかしたらカルマはここにいないんじゃないか?」
「それは考えられない。この人数といい。革命軍の本拠地がここであることは間違いないだろう」
「しかし、これだけ探しても見つからないって、じゃあ一体どこにいるんだ?」
「この村はそんなに広くはない。隠れ家となるような所なんて…」
そう、口ずさみながらリュートが立ち止まった。
「おい、どうしたリュート?」
「いや、もしかして…」
「何だ?思い当たるところがあるのか?」
「あぁ…」
「よし、じゃそこに行ってみよう。どうせこのまま探してもらちがあかない」
リュートはそう言いながら馬を走らせ始めた。あの思い出の丘に…
「おい、リュート、こんな山道に入って本当に大丈夫なのか?」
「この山道の奥に丘があるんだ。そこの丘はこの村が一望できる隠れ家としてはもってこいなんだ」
「こんな山道にそんな丘に向かえる道があるなんて…」
シュッ!
ロベルトがそう言いかけた時、どこからか矢の放たれる音がした。
「そこか!」
カン!
その矢の音にロベルトがいち早く反応し盾て防ぐ。
シュッシュッ!!
カン!キンッ!!
「ロベルト、大丈夫か?」
「何の問題もない、お前は気にせず進め。」
どこからともなく飛んでくる矢をロベルトは全て弾き返す。どうやらロベルトも修行の成果が出ているらしい。飛んでくる矢はロベルトに任せリュートは丘に向かい馬を走らせる。
「さぁ~て…俺の相手はどこかな?」
ロベルトはそう言いながら馬を立ち止まらせ、相手の場所を探り始める。
シュッ!
キンッ!!
「悪いが、お前の攻撃は俺に通じねぇ…おとなしく姿を見せな」
「ほざくな!どんなに強がろうが、お前が俺の姿を追えてないことは明確。姿の見えないものに襲われる恐怖、お前に教えてやるぜ!!」
「ハハッ…上等…」
ロベルトの顔には笑顔が浮かんでいた…
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